プロローグ
「よし……あと十連だけ。これで本当に最後! 本当だから!」
俺ーー神崎悠斗、高校3年生。
大学受験を控えた男であり、スマホ経歴だけは長いだけの他に取り柄のない男でもある。普通だったら大学受験対策なり勉学なり励んでるであろう時期を迎えているはずなのに、俺はいつものスマホゲームに勤しんでいた。
最初のうちは両親も必死に勉強するように促そうとしていた。だが最近では息子の将来を諦めたのか何も言わなくなった。今更勉強したところでプラスにならないってことに気付いたのだろう…。
「頼む! 虹! 虹が来てくれなきゃ俺のここ三週間の努力が無駄になる!」
画面をタップする。銀。銀。銀。銀…。おい、女神様よ。俺の努力は無駄なゴミでしたってか。何回タップを繰り返しても銀のパレードである。ちょっと確率どうなってんの?操作でもしてるのか!
「待て待て待て! さっきから銀ばかりじゃねーか。金ですら出ないっておかしいって!」
最後の一枚。画面が七色に輝く。俺が待ち望んでいた虹色という確定演出だ。
「キタキタキタキタああああああ!」
興奮気味にも最後の演出を見届けている間に、何かの物音だったり親からの着信が来たりしていたものの、それすらも当たり前のように無視して、どんな当たりキャラが仲間になってくれるのだろうかと子供のようにワクワクしていた。
身体中の熱が胸の中に集まっていくかのような感覚にすら陥っていく。
SSR。最高レアリティーの文字が出てきた瞬間にガッツポーズを決めていた。それにしても熱い。俺の心がそれほどまでに踊っているのだろうか。
だが文字は一瞬でとある文字に変わっていた。
『あなたは世界を救えますか?』
「はへ?」
これは新たな演出だろうか。ゲーム歴は長いはずなのに、こんな演出は初めて目にする。大当たりは大当たりでもピックアップキャラが当たるのか?それだったら裸で踊れる自信がある。
画面はYESかNOの選択肢しかない。このゲームの世界は勇者という主人公が色々な人々やモンスター達を仲間にして世界を救うスタイルのゲームだ。このゲームのことを指しているのであれば、主人公として選択肢は一つしかないはずだ!
「YESだろ!」
俺は迷いなくYESを選択する。
その刹那……俺の周りにいつの間にか火力の強い炎が迫っていた。
さっきから感じていた熱って俺の情熱じゃなかったのかよ! 誰かに連絡しようとスマホの画面を見る。
『通信エラーが発生しました』
「あああああああ!! 俺の三週間がああああああああ!」
ゴォン! という音と同時に俺の頭に何か大きな物が当たったかのような衝撃が襲う。
俺の意識はそのまま真っ白になった。




