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急報

まずは事務方の仕事の引き継ぎ。

現地南区画親衛隊の募集と編成。

さらには既存兵力との融合。


やることは山盛りで、私ヤハラは大忙しであった。

ついでに言うならば提供者タニマチとの折衝もある。

身体がいくつあっても足りないくらいである。


「お手伝いします」


と援護を買って出てくれたのは、先程ナンブ・リュウゾウに金的を攻め抜かれた(変な意味ではない)美少年であった。

名はショウタロウというらしい。

これが地元の威勢のいいのを頭に指名し、編成をどんどんすすめてくれるのだ。


さすが地元民である。

ここいら近辺の事情には明るいようだ。


これは老役人コシダ・ゲンジロウと引き合わせ、将来の区画責任者として育てておくのも悪くないかもしれない。

このショウタロウ、実は商家への奉公も経験しており、算盤にも明るい。

ますます欲しい人材であった。


とにかく、私の仕事を少しでも減らさなければ。

一人であれもこれもと快刀乱麻の活躍もいいが、それでは私が倒れたときどうする?

健康を取り戻してみれば、城は落ち国が滅んでしまってはどうにもならないではないか。


少なくとも、一人欲しい。

可能ならば私に近い能力で、野心の無い者が望ましい。

我ながら虫のいいことを言っているとは思うが、あまり尖った人間は要らないのだ。


あれこれのおかげで滞在が長引いていたのだが、ある日男爵さまの文がナンブ・リュウゾウに届いた。


「兄上が亡くなられたそうだ」


ナンブ・リュウゾウはそう言った。

男爵邸で幽閉……とはいえ悪い待遇ではなかったそうだ……中に、急死されたそうだ。

不思議なくらいなんの感慨もなかった。


ナンブ・リュウゾウも文を傍らに置き、すぐに執務に戻っていた。


「なぁ、ヤハラどの」


筆をはしらせながら、ナンブ・リュウゾウは言う。


「次兄どのはいかがするおつもりかな?」


「領地を少しばかり与えて地主になれと言えば、爵位は捨ててくれると思いますが……」


「問題は取り巻き連中かね」


「伏魔殿ですからな、あそこは……」


「伏魔殿の妖怪どもで、男爵さまの意志に逆らう者は、一人一人退場してもらおうか?」


「殿、それは間違っております!」


私は強く主張した。


「一人一人ではありません。あれは妖怪ですから一匹一匹と呼ぶのが正しいです!」


「人間相手と考えていては、足元をすくわれるか……」


「左様」


「じゃあ一匹見せしめに退場していただいたら、どうなるかな?」


「連中の既得損益……いわゆる賄賂をどれだけ認めてやるか? 次第でしょうなぁ」


「それは俺に皆殺しにしろと言っているのと同じではないか」


「そう取られましたか? 殿も最近は巡りがよろしう御座る」


「ヤハラ君、キミ俺のことまったく褒めとらんだろ?」


「察しのよろしいことで。さて、私の仕事は終わりました。殿の方はいかがですかな?」


「ヤハラそのがいるおかげでな、なにも考えずに印鑑えお押捺するするだけの仕事よ。とっくに終わってるわい」


「では殿、北区画へ帰りますか」


「そうだな、ヤハラどのの休息所の件を早く解決せんとな」


チッまだ覚えてやがったか。

これは早急に手を打たなければ、自由の身を奪われてしまうぞ。

私は仕事がしたいのだ。


ナンブ・リュウゾウという友を押しも押されぬ存在にしたいのだ。

それなのに空気ひとつすら読まない阿呆は、私の嫁とりに腐心してやがる。

まだ嫁も持っていないのに、「嫁は良いもんだぞ、ヤハラどの」と言わんばかりに。


いや、私は嫁を取ることが嫌なのだろうか?

そんなことは無い。

ただ、吟味もせずに嫁を取ったところで、私の場合不幸にしかならない気がするだけだ。

尖っていない人材を要望していながら、私自身が尖っているという矛盾が、この事態を招いているのだが。


あれこれ思いを巡らせていると、小遣いが入ってきた。


「区画長さま、お手紙が届いております」


なにごとか?

私の中に緊張が走った。

ナンブ・リュウゾウは今、南区画にいる。


それを知る者は、拠点である北区画にいる者だけだとしよう。

つまり北区画に届いた文を南区画まで運んできたということになる。

火急の要件か?


私が緊張するのは当然である。

ナンブ・リュウゾウは文を解いて読み始めた。


「なんだ、キョウカどのからの文だ。どれどれ、どんな愛の言葉が綴られているやら……」


ナンブ・リュウゾウは文に目を落とした。

そして大変に真面目な顔になり、私に文を渡してきた。


「ヤハラどの、これをどう見る?」


文には、「隣国ドルボンドが、税金を大幅に上げ、国債を大量発行しております」


なんじゃこりゃ?

まるで戦時態勢ではないか。

その場でかんじたのは、それであった。


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