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依頼

私たち北領の農産物は一度中央、男爵さまの取り仕切るナンブ市に集められる。

その上でさらに大きな領地、イズモ伯爵領や王都へと輸出される。

つまりナンブ市からの評判がすぐ耳に入るのだ。


曰く、荷を積み上げられるので、倉庫の整理がしやすい。

曰く、倉庫の容積を最大にまで利用できる。

曰く、分量がハッキリしているので購入しやすい。etcetc……。


ということで、かなり評判が良かった。

この時代の農産物集積は、イモならイモ、タマネギならタマネギ。

ただゴロリと山積みにするだけ。


それを荷馬車で一杯いくらというどんぶり勘定でしかなかったのだ。

それを定量、きっちりと計ってからの輸出である。

大量に仕入れる貴族階級というか、金持ち連中の評判となるのは当然と言えた。


ナンブ市から、すぐに現金となって、成果が現れた。

その金、親分ナンブリュウゾウは「どう使う?」と持ちかけてきた。

私は答える。


「道や橋を直すための公共事業に使いましょう。税を賃金の中からあらかじめ天引きしておくのです」


そうすれば確実に戻ってくる金ができる。

そして公共事業は物流にも影響する。

いざとなったとき、良い道路や良い橋は兵隊の通り道となる。

それを整えておくのは、軍事の基本と私は考えていた。


あれこれ精を出して働いていたら、男爵さまから書簡が届いたそうだ。

親分の執務室へ呼び出される。


「オヤジどのからだ」


そう言われて文を見せられる。


曰く、南領へおもむき、山賊退治をしてもらいたいとのこと。

しかし南領は実の兄上、長兄どのが任されていたはず。

そこへ三男坊がおもむき、山賊退治とはこれいかに?


「簡単に言うとよ、兄上が山賊討伐の兵を出し渋っているのよ。褒美の金が無いとか、家臣の命を危険にさらせぬとか言い訳をしてな」


「それ故に番長へ声がかかったと?」


「そういうことだ、のうヤハラ。これは行くべきか行かざるべきか?」


「男爵さまがお困りとあらば、行かざるを得ないでしょうな」


「言葉を変えよう。利益が出るか? 損をするか?」


この男、他人に相談のできる男だ。

家臣相手にも、恥じることなく。

その背後に『ナンブ男爵家』という文字が見えた。


ナンブリュウゾウという男は、男爵家のために働く男だ。

ひいては王室のために忠義を尽くそうと考えている。

だから家臣に相談ができるのだ。

己の恥など、王国への忠義に比べれば小さいことと笑いながら。


そういう男に私は、相談相手と見込まれたようである。

ならば「利益がでるか?」ではない。

利益を出してご覧にいれよう!


「行きましょう、殿! 山賊どもに北領男の屈強なるところ、存分に見せつけてやりましょう!」


「よし、山賊どもは二十ほどしかおらぬ! すみやかに参るか!」


「そこはひとつ、物見を立ててからにござります。とりあえずお父上には承諾の意志を見せて、さらに兄上には現地の状況確認などをされてからです」


「ヤハラ、俺にはシノビがいるが、使うか?」


「願ってもない、是非に」


ナンブ・リュウゾウは手を打った。


「誰やある!」


やはりこのセリフが出てこなくては締まらない。

するとクローゼットの扉が開いて、娘が現れた。

丸顔にドングリのような瞳。


「アヤコがこれに」


「今この時より、そなたをヤハラ専属のシノビに任ずる。イズミには俺から言っておくので、そのように」


「御意、ヤハラさま。何なりと御命令を」


「うむ、それでは山賊どもの寝グラを探って参れ。可能な限り克明にな」


「かしこまりました」


それだけで姿を消した。

つまり二人の会話は筒抜けであったということだ。

そしてそれを咎めるナンブ・リュウゾウではなかった。


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