通常業務
翌日。
本来の執務につく。
私の仕事は基本的に領地内の予算、つまり年貢が正しく集められ、正しく使われているかを見るものだ。
帳面や綴りを相手に算盤を弾いていると、大将からお呼びがかかった。
なにごとかと執務室へおもむくと、ナンブ・リュウゾウは喜色を浮かべている。
文がいくつも届いているようだった。
「各市町村長からだよ、ヤハラ」
読んでみろと言われたので目を通す。
どの文も役人の不正があったことを詫びるものだった。
そして不正者を更迭し、根拠の年貢はこれこれの石高で正常に納められそうだ。と記してある。
私としては、誰が悪事をはたらいたか、などに興味は無い。
今年の年貢が、これまで以上に納められることの方が重要である。
それは『殿』ナンブ・リュウゾウも同じようであった。
「これは、昨夜の一件に効果があったということでしょうか?」
「あぁ、そしてどいつもこいつも不正に手を染めてやがったってことさ」
「ですがこれでもう、殿を舐める者はおりますまい」
「そうだろうか?」
「いま、北領の主導権はこちらが握っておりますので。即座にということは申しませんが、そのうち減税も考慮してみてはいかがでしょうか?」
「それが君の言う飴というやつかね?」
「然り。そうすれば殿の人気はあがり、領民一致で『オラが大将』と担ぎ上げてくれることでしょう」
「そうすると、どうなる?」
「兵を集めやすくなり、団結が強くなります。無敵北領軍も夢ではありません」
かなり端折ってはいるが、強い軍などというものはそういうものである。
そして調子のいい今のうちに、やるべきことがある。
出荷する農作物を梱包することであった。
「殿、北領から輸出する農作物、数量と目方にて区分し梱包の上荷出しすることをお許し頂きとう御座います」
「それはヤハラ一流の策かね?」
「左様」
荷を目方に合わせて出荷する。
これまでは荷馬車一台いくらで商いをしていたが、こうすることで輸出先の手間が省ける。
そうなれば北領の農作物は話題となる。
主に、輸出先で。
「そうなると木箱や麻布の職人を雇うのか?」
「左様、それが出資というものに御座る」
下々の者にも仕事を与えるのは領長の務めである。
そしてここが出資のしどころだ。
「ここで儲けましたらいよいよ減税に御座る」
「儲かるのかね?」
「間違いなく」




