褒美
さて、強硬な手段に打って出ようとも、異国からの侵略を予期して富国強兵を目指すオラが大将は執務室で言った。
「諸君、この度の働き存分であった」
シロガネ・カグヤを筆頭に全員頭を下げる。
もちろん私も遅れてそうした。
大将は革袋の金貨を確認して親衛隊に与えた。
「遊んで来い。ただし、刻限は守れよ」
そして親衛隊長に向き直る。
「カグヤ、すまんが酒をたのむ」
「御意」
「行水を済ませてくるか?」
「お恥ずかしいので……」
そのやりとりで、二人が今夜どうするのかが理解できた。
「ヤハラ」
急に声をかけられる。
「君のところにも女中をつかわせる。寛いでくれ」
「ありがとうございます」
頭を下げたが、どういうことかわからない。
よもや女を世話してくれるというのか?
「それではみな佳きように!」
大将の声がひとつ。
親衛隊は散っていった。
「ヤハラ、君も部屋にさがりなさい」
「はっ!」
さがる私のそばに、エプロンドレスの女中が付き添ってくれた。
美系の娘である。
そして部屋に戻ると、すでに酒を準備した女中たちが待っていた。
三人だ。
一人は肉感的な童顔。
可愛い女。
一人はフラットな身体つきの娘、美系である。
そして童顔の丸顔の娘。
どことなく田舎臭い。
さらには美系で肉感的な娘。
「ヤハラさま、殿からの褒美にございます。誰か一人、もしくは全員お選びください」
褒美を受けるほど働いただろうか?
いや、俺は求められているのかもしれない。
ならば褒美を受けて、明日から存分に働くのもいいだろう。
ということで、田舎臭い娘を選んだ。
他の娘たちはしずしずと去ってゆく。
そして田舎臭い娘、カエデは私に酌をしてくれた。
飲む。
琥珀色の液体、ウイスキーだ。
一口でアルコールが血管を駆けるのがわかる。
飲んでいると、絹ずれの音。
いつの間にかのぼった月を背に、カエデの細い肩が映えた。
そこからは、男と女。
私は満足するほどに褒美を味わった。