戦闘開始と勝利の確信
使者のため、わざわざ巨大な門壁を上げ下げしたりはしない。衛兵が勝手口のような場所から出国させる。
使者はドルボンドへ続く橋を渡った。
こころなしかその後ろ姿は、踊っているように見える。
そしてドルボンドの城壁に使者が姿を消して、しばし。
投石機から打ち出されたものだろう、巨大な岩石が飛んできた。
私もワイマールの投石機に射出を命じる。
ドルボンドの岩石が城壁に着弾すると同時、こちらの油瓶も射出された。
ドルボンドは岩石で城壁の破壊に出たが、こちらは市街地に油瓶を落とし火を着ける算段だ。
これは戦争目的の差によるものである。
ドルボンドはできるだけ無傷でワイマールを取り押さえたいのだろう。
その方が金になるからだ。
しかし私たちワイマールは、いきなりケンカを吹っ掛けてくるドルボンドの経済など、ほぼお構いなしなのだ。
早い話、ドルボンドなどという国、その民族と文化。
すべてが世界から消失しても、まったく構わないのである。
そんな訳で容赦することなく、油瓶の射出二回目。
投射物の重量の差か、思わぬ反撃にドルボンドが動揺したか、第二射はワイマールが先だった。
今度も油瓶である。
丸い瓶なので、転がせば簡単に投石機にセットできる。
そして第三射は、油とカンカンにおこった炭火とがセットになった瓶である。
ワイマール軍、三機の投石機が火種を含んだ油瓶を次々と射出した。
着弾…………いま!
ドルボンドの碁盤の目になった市街地に、火の手があがるのが見えた。
しかも燃え広がっている。
ドンピシャ、立ち上がりの作戦は成功である。
思いがけない反撃、そして火災発生というデバフ。
いまドルボンド軍は果てしなく動揺しているに違いない。
いや、むしろ恐慌状態かもしれぬ。
ならばここは突撃であろう。
私は開門を命じ、弓兵を先行させた。
弓兵たちは楯を担っている。
それは単なる手持ちの楯ではなく、立て掛けるための脚のついたものだった。
だから反撃の矢が降り注いでくるまで駆けて、城壁の上から攻撃されるやその場にとどまり、楯に隠れて反撃するのである。
応援が到着すれば、また楯を担いで走り、前進するという塩梅だった。
だが前進しない弓兵もいる。
工作兵を守る弓兵たちである。
工作兵たちは橋の上に柱を立て、板をうちつけ橋全体を矢から守る工作をしていた。
城壁からの敵の弓弓矢は不活発と言えた。
動揺、混乱、あるいは指揮系統の乱れを感じさせる。
そしてわが弓兵が城門間近まで迫ったとき、ようやくドルボンドの固い門壁が持ち上がった。
こちらも鉄砲隊が整列する。
飛び出してきた弓兵に対し、ワイマール鉄砲隊が火を吹いた。
しかしドルボンド鉄砲隊も楯に隠れていた。
数名が倒れただけで反撃の火の矢を射掛けてくる。それに対して弓兵が応戦した。
そこで直接対決の第一幕は終了。
ドルボンドは門壁をおろしてしまった。
そのとき工作兵の防御壁が完成。
橋全体が板張りにされ、敵の矢はまったく通らない。
橋の出口には大量のワイマール弓兵。
これが城壁上の弓兵に大量の矢を射掛けている。
当然のように、鋭利に尖らせた丸太を提げて、力士隊が安全な橋を駆けて渡った。
そして必死必殺の一撃を門壁に叩き込む。
城壁の留金が鳴いた。
しかし打ち砕くにはいま一度。
どすこいの掛け声も勇ましく、ドルボンドの城壁に二発目の打撃!
少しだけ門壁は傾いた。
その隙間から、弓兵が矢を射掛ける。
こちらは隙間から射掛ける。
ドルボンドは隙間へ射掛ける
命中率の程は察して知るべし。
ドルボンドは無駄に兵を散らした。
そこへまたもや丸太の一撃!
門壁はさらに傾いた。
そこへ弾込めを終えた鉄砲隊が門壁の隙間に殺到。
近づこうとするドルボンド兵を追い払った。
その上でワイマール弓兵が次々と突入。
敵領地に侵入して楯を立て掛け、矢を放っていた。
私が勝負あり、と見たのは槍兵が突入したのを見てからだ。
弓兵が敵を圧倒した証拠だからである。
やはり初撃の火炎瓶が効いたのだ。そして力士隊も次々突入する。
さらにはナンブ・リュウゾウを含む抜刀隊が侵入していった。
私は胸を張って、学友アーサー王子に告げる。
「王子、初戦は我が軍の大勝となります」
「ほう、してそのココロは?」
「我が主君、ナンブ・リュウゾウが突入しました。敵は将兵問わずことごとく物言わぬ屍となりましょう」
というか、この時代の戦争といえば、抜刀隊の突入は勝利を格したときに決められている。
その中にナンブ・リュウゾウがふくまれていたら、これはもう勝利確定である。
しかしそれでは、読者諸兄も欲求不満というもの。
本来ならば三人称神の視点で語られるべきところを、三人称ヤハラの視点で語らせていただく。




