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九十八告目 後藤柚姫 11
その日、西木千輝の母親に請われ後藤柚姫は彼女の家を訪ねた。校門の前で声をかけられ「娘を助けてほしい」と頭を下げられた。初対面の母親は部屋に飾られていた写真を頼りに後藤柚姫を探していたのだと言った。
後藤柚姫が西木千輝の家に行くのはこれがはじめてだった。彼女がかたくなに家や家族の話をしなかったせいもある。
家の寒々とした雰囲気も気になったが、何より部屋を訪ねたときの西木千輝の様子に後藤柚姫は愕然となった。後藤柚姫が彼女の名前を呼んでも、一瞥をくれただけであとはただうつろな目で虚空を見つめ続けていた。
一言でいうならばそのときの西木千輝はぬけがらだった。父親に殴られても抵抗する気もなく、母親がすがって泣くから死なないだけ、生きてそこにいるだけの存在だった。暴力を振るう父親も娘の盾になろうとしない母親も許せなかったが、それよりも西木千輝を救うほうが先だ。そして彼女の盾になれるのは自分しかいないと後藤柚姫は思った。




