暁月騎士団
とある街の詩謡いの青年、ロウは困っていた。
あるバーでギターを弾き語っていた彼は、その才能を見限られて店主にクビを言い渡されてしまったからだ。
明日からの食い扶持がない彼は、街の噴水前で途方に暮れていた。
このまま身を投げてしまった方が楽なのでは。と思った時、突然声を掛けられた。
「青年よ、何を途方に暮れている」
「……ロウランド騎士隊長?」
「ああ。……確か君はそこのバーで詩を謡っていた青年だったな。何かあったのか」
「実は、クビになりまして……行く宛がないのです」
「成程、それなら君にとっておきでぴったりな職があるんだが、やってみないだろうか?」
次の日、彼はロウランドの勧めで赤いブーツを履いていた。
ロウランドは国を荒らすとある泥棒を捕まえるため奔走していたが、ついに突き止めたその居住区はとても遠く、常に国を守らねばならないロウランドは街を離れる事が出来なかった。
そこで彼に泥棒捕獲を頼んだのだ。
「本当に僕でいいんですか、ロウランド騎士隊長……」
「なあに、君一人で行かせるつもりは元からないさ。君の仲間を集い、捕獲の旅を指揮して欲しい。君はリーダーだ」
「僕が、リーダー……」
「そうだなあ……よし、君と出会った日はとても赤い月だったから、君の率いる隊は『暁月騎士団』だ。」
とある街の靴磨きの少年、イットは困っていた。
お得意さんで仕事をよく斡旋してもらっていたとある富豪の靴に廃油を塗ってしまったのだ。
明日からの食い扶持がない彼は、街の教会前で途方に暮れていた。
このまま首を吊った方が楽なのでは。と思った時、突然声を掛けられた。
「少年よ、何を途方に暮れている」
「はっ、騎士隊長が俺に何の用だ?」
「……確か君はそこの門で靴を磨いていた少年だったな。何かあったのか」
「……ヘマをやらかしたんだよ。お陰で明日の希望もねえ」
「成程、それなら君にとっておきでぴったりな職があるんだが、やってみないだろうか?」
次の日、彼はロウランドの勧めで赤いブーツを履いていた。
ロウランドは国を荒らすとある泥棒を捕まえるため奔走していたが、ついに突き止めたその居住区はとても遠く、常に国を守らねばならないロウランドは街を離れる事が出来なかった。
そこで彼に泥棒捕獲を頼んだのだ。
「仕事をくれたお前さんの為だ!仕方ねえから行ってやるよ」
「だがしかし、君一人ではないぞ。君の仲間を集い、捕獲の為にリーダーを支えて欲しいのだ」
「俺が、誰かを支える……」
「そうだなあ……よし、君と出会った日はとても赤い月だったから、君の属する隊は『暁月騎士団』だ。」
とある街の屋敷で働くメイド、ニーナは困っていた。
屋敷で余りにも鈍臭いが故に、遂に御主人に辞めさせられてしまったのだ。
明日からの食い扶持がない彼女は、街の病院で途方に暮れていた。
このまま毒薬を飲んだ方が楽なのでは。と思った時、突然声を掛けられた。
「お嬢さんよ、何を途方に暮れている」
「えっ、あわ……ロウランド騎士隊長!?」
「……確か君はそこの屋敷で働くメイドだったな。何かあったのか」
「あう…わ、私、失敗し続けて……み、見限られてしまって……」
「成程、それなら君にとっておきでぴったりな職があるんだが、やってみないだろうか?」
次の日、彼女はロウランドの勧めで赤いブーツを履いていた。
ロウランドは国を荒らすとある泥棒を捕まえるため奔走していたが、ついに突き止めたその居住区はとても遠く、常に国を守らねばならないロウランドは街を離れる事が出来なかった。
そこで彼女に泥棒捕獲を頼んだのだ。
「あ、あの、私、立派にやり遂げて見せます!」
「ああ、期待しているぞ。君の仲間を集い、捕獲の為に仲間の皆を癒し、助けて欲しいのだ。」
「私が、誰かの癒しになって、助ける……」
「そうだなあ……よし、君と出会った日はとても赤い月だったから、君の属する隊は『暁月騎士団』だ。」
とある街の店で働く店員、ネルは困っていた。
別の同僚が夜中のうちに店の有り金を全て盗み、何故か自分に嫌疑が降りかかった故に警察に追われているからだ。
明日からの生活がない彼は、街の学校前で途方に暮れていた。
このまま首を掻き切った方が楽なのでは。と思った時、突然声を掛けられた。
「君よ、何を途方に暮れている」
「っ……!?」
「ああ、心配しなくていい。彼等には連絡をしないから。本当は何かあったのだ?」
「……お、俺は、盗んでなんかねえんだ。彼奴が一人で勝手に……」
「成程、君のその嫌疑が晴れ、尚且つ英雄になれる話があるんだが、やってみないだろうか?」
次の日、彼はロウランドの勧めで赤いブーツを履いていた。
ロウランドは国を荒らすとある泥棒を捕まえるため奔走していたが、ついに突き止めたその居住区はとても遠く、常に国を守らねばならないロウランドは街を離れる事が出来なかった。
そこで彼に泥棒捕獲を頼んだのだ。
「……本当に俺の嫌疑は晴れるのか?」
「勿論。きちんと泥棒を捕獲したならば、君の嫌疑は晴れ、この国を脅かしていた泥棒を捕まえた隊として英雄になれる」
「俺が、英雄……」
「そうだなあ……よし、君と出会った日はとても赤い月だったから、君の率いる隊は『暁月騎士団』だ。」
四人はそれぞれお揃いの赤いブーツを履き、国を出発した。
時には泥棒の仲間に追われ、時にはお互いの仲を違え、それでも四人で数多の苦悩を乗り越えて、遂に泥棒を捕まえる事が出来たのだ。
しかし、彼等は国の為、そして助けてくれたロウランド騎士隊長の為に、更に旅を続ける事にした。
そうして、何年の時が経っただろうか。
「それではこれより、ロウ、イット、ニーナ、ネルの四人『暁月騎士団』の死刑を執行する! 死刑人に鉄靴を履かせよ!」
「……本当に凄惨な事件だったわねえ」
「本人達は未だに自分達は悪いことしてねえなんで思ってるんだろ?」
「あの四人は可笑しいのよ! そんな奴らのせいで、私の息子は……」
「……ねえおかあさん、あの人達彼処で踊ってるよ! どうして?」
「違うわ……あれは踊ってるんじゃないのよ、熱くて、苦しくて、もがき暴れているの……」
「どうして? おかあさん、どうしてなの?」
「それがね、あの人達の罰だからよ」
「……悪いこと、したの?」
「ええ。何よりも、悪い事をね。」
「……ああ、すまない。私の過ちで、私の間違いで、君達を罪人としてしまった。下手な希望を持たせ、君達を選んだせいで、君達は死刑になってしまったのだ。……どうか赦してくれ。私も、誰かを救えると思いたかったのだ。あの時、君達は彼処で死ねていたら、その方が幸せだったかもしれないのに。」




