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異世界ナイチンゲールの奮闘記!!  作者: ぶるどっく
第4章 見習い少女とレッドスピネル救護院。
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閑話 とある伯爵の事情。

 クラリスロ公爵が治める領地にある都市"バファロン"に、市街地から程良く離れたレンガ造りの赤い建物がある。そこは、公爵が設立・経営する救護院の一つ"レッドスピネル救護院"であった。


 その救護院の前に一台の乗合い馬車のような一般的な馬車ではなく、貴族が乗るような上等な作りの馬車が止まった。その中から、抱えられるように降りてきたのは高齢により白くなった髪を整えてはいるが、体調の悪いことがすぐに分かってしまう一人の貴婦人と家族、息子である伯爵であった。


「お待ちしていました。

 カロナーク伯爵様、カロナーク夫人様。」

「っ!

 ああ、貴殿が噂に聞く医師のクラピウス殿か。

 どうか母を、母をよろしく頼む!」

「・・・全力を尽くします。」

 出迎えたクラピウス夫妻は挨拶もそこそこに、カロナーク夫人を病室へ案内する。

 カロナーク夫人は、クラリスロ公爵の古い友人だった。今年の秋頃より、体調を崩してしまいどんどん様態は悪化していった。カロナーク伯爵は、母に元気になって貰いたい一心で自身の領内にいる医者に診せて回ったが、どの医者も治すことは出来なかった。そんな彼の最後の希望は、クラリスロ公爵領にいるという顔は恐ろしいが腕は良いと評判の医者、クラピウスのみであった。

 

 病室に通されたカロナーク夫人はすぐに、息子の伯爵が見守るなか診察を受ける。彼女は高い熱と息苦しさに苦しめられていた。その影響で、食欲もあるはずが無く身体は痩せ細っていた。


「クラピウス殿、母はどうだろうか?

 私は、一日でも早く母に元気になって貰いたいのだ!」

「・・・何とも言えませんね。

 熱が高い事に対しては、薬を飲むしかない。

 しかし、息苦しさでそれもままならず、食欲もなければ体力は下がる一方です。

 できる限りのことはさせて頂きますが、万が一の覚悟はしておいて下さい。」

「そ、そんな。

 貴殿であれば、噂に聞いた貴殿であればと思ったのに・・・。

 ああ、母上!」

 クラピウスの言葉に、伯爵は泣き崩れてしまう。クラピウス夫妻は、掛ける言葉もなく見守ることしかできなかった。



 救護院にカロナーク夫人が入って数日が経った。しかし、夫人の様態は快方に向かうこともなく次第に伯爵の態度は荒れていく。

「何なんだっ!お前のその態度は!!」

「ひいっ、申し訳ありません!」

 部屋の担当になった救護院の中でも古株だった看護師の女を叱責する伯爵の声が響き渡る。

 女は、伯爵の目のない時に話す気力すらない夫人に対し、暴言を吐いていた所を部屋の前まで戻ってきた伯爵に聞かれ叱責を受けていたのである。

「これでっ、5人目じゃないかっ!!

 公爵閣下の経営する救護院でも、看護婦の質は他の場所と変わらぬではないかっっ!!」

 そう伯爵は怒鳴り散らし、連れてきていた侍女達以外を部屋より閉め出すようになっていった。


 そんな母の側を離れたがらぬ伯爵だが、母親が身体を拭いたり、着替える時だけは側より離れている。その間は、何かあった時にすぐに駆けつけることが出来るように救護院の病室の側にある待合室で、伯爵は待つこととしていた。

 悶々と母の容体に良くならないことに苛立つ伯爵の前を通り過ぎる人影があった。


「アンダーソンさん、大丈夫ですか?

 ああ、でも、以前に比べればずっと足取りが良くなりましたね。」

「そうじゃろう、リクのおかげじゃな。」

「そんな事ありませんよ。

 アンダーソンさんが頑張って歩く練習をしていた成果なんですから。」

「おほほほ、相変わらずリクちゃんは謙虚ね。」

「あ、ローリングさん。熱が下がったんですね。」

「ええ、ええ。

 貴女のおかげよ、ありがとうねえ。」

 一人の少女が老人に肩を貸しながら廊下を歩いていると、他の救護院に入っている老人達が笑顔で近づき少女に話しかけている。

 伯爵はその姿を不思議に思い、側のイスに腰掛けた今まで少女の肩を借りていた一人の老人へ話しかける。

「申し訳ないが教えてくれないか。

 あの少女は、何故あれ程に感謝されているのか?」

「む、最近入ってこられた方のご家族か。

 そうじゃな、不思議じゃよなあ。あの子は、リクと言っての。

 儂らにとっては、命の恩人じゃよ。」

 伯爵はその言葉に驚き、あのような少女に一体何が出来るというのだろうかと疑問が湧いてくる。

「ほっほっほ、驚くのは無理もない。

 じゃがな、儂らこの救護院に入っているもの達はみんな医者よりもあの子に感謝しておる。

 儂らが治ったのは、みんなあの子のおかげじゃ、とな。」

「なっっ?!」

「儂らは皆、医者に匙を投げられたものばかりじゃった。

 看護婦どもも、儂らを要らぬ物のように扱う中であの子だけが儂らのことを人として扱い、心を込めて看病をしてくれたのじゃ。

 そのおかげで儂らはみるみる元気になっていくことが出来た。ありがたい事じゃな。」

 その話しを聞いた伯爵は、一筋の希望を再び心に灯した。もしかすると、あの少女が母親を元気にしてくれるのではないか、と!

 そう考えた伯爵はいても立ってもいられずに、クラピウス夫妻の元へ扉を壊さんばかりの勢いで急ぎ尋ねた。

 少女を、リクを母の担当にして欲しいという願いを携えて・・・。



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