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異世界ナイチンゲールの奮闘記!!  作者: ぶるどっく
第4章 見習い少女とレッドスピネル救護院。
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見習い少女と救護院の実情。

「本日よりお世話になります、リク・アズノルクと申します。」


 公爵閣下とお会いしてから数日が経ちました。

 本日より私は、公爵閣下が設立、経営を行っている救護院の一つであるレッドスピネル救護院で見習いとして働く事と成りました。

 そのため、すでにお師匠様とは号泣しながらもキースさんとリオが待つ自宅へと帰っていきました。ただし、その代わりとばかりに私の守護者であるジェダとあーやんを連れてきましたけど・・・。

 そして、シオンさんはできればお師匠様と森に戻って欲しかったのですが、本人の強い希望もあり救護院の警備員の一人として雇われる事となりました。


「・・・閣下より、話は聞いている。

 俺は、レオナルド・クラピウス、医者だ。

 先に言っておくが、子どもだからと甘い顔をするつもりは無い。」

 ・・・鬼がいます。

 幼い子どもが見れば泣いてしまいそうな程の強面に体格の良い大きな身体、一筋だけ前髪を残し撫で上げた薄い青の髪、深い藍色の眼、左側の額から左目の上を通り頬へ達する刀傷。

 ・・・一見すると、医者には見えない方です。

「こーら、レオったら。しょうがない人ねえ、もう。

 初めまして。私は、フレア・クラピウスよ。

 一応、この救護院の看護師を纏めている立場にあります。

 それと先に言っておきますが、この朴念仁は私のダーリンよ。」

「ダーリンって言うんじゃねえっ!」

 鬼のような顔で睨まれても何処吹く風でにこにこと笑う金髪碧眼の美女。金髪とお尻の辺りからふさふさの狐耳と尻尾が生えています。

「はい、よろしくお願いします。」

「はい、よろしくお願いされました。

 それでね、子どもにも出来る仕事を考えていたんですが、とりあえず掃除ですね。

 子どもの貴女なんかに出来る仕事なんてそれくらいですよね。うふふっ。

 ・・・遊び場所じゃないんだからしっかりと仕事してくださいね。」

 早速、洗礼でしょうか?

 最初は、優しそうな印象だった笑顔のクラピウス夫人は言葉を続けているうちに徐々に私を嘲笑うような口調となっていき、最後は迷惑そうな冷たい顔に変わりました。

「はいっ!」

 このような迷惑がられる対応をされる事は十分に予想していました。それに、おそらくこれは序の口です。この程度の事で傷ついているようではやっていけません。

「子どもだから、返事だけは良いのね。

 今日から働いて貰うから、さっさと付いてきて。

 それと、一度説明した事は二度と聞かないでね。迷惑ですから。」

「分かりました。」

「・・・・。」

 怖い顔をしていますが、心配そうな眼差しを向けてくれるクラピウス先生は優しい方なのかもしれませんね。クラピウス夫人の方は、まだ私に冷たくする真意がわからないので何とも言えませんけど。




 救護院で働き出してからの私の毎日は掃除等の雑務一色に染まっていました。毎日森の家では修行をすることが習慣となっていた私は、朝日が昇り始める頃には目が覚めます。

 私の部屋として割り当てられた屋根裏部屋の中で身支度をします。ランプは私には貰えなかったので、クラピウス夫人に見せて許可を貰った小さな蝋燭の明かりだけが頼りです。

 ジェダとあーやんも一緒にはいますが、私の休みの時以外は外に出してあげる事が出来ません。ですが、それはあんまりにも可哀想なので最近は朝になると同時に窓を開け、シオンさんの側に行って貰うようにしています。

 すぐに食堂へと私は移動して、朝食用のパンと果物を少し分けて貰います。救護院の食事を一手に担う未亡人のアンおばさんはとても良い方でしたので、食事の下ごしらえを手伝ううちに仲良くなる事が出来ました。

 私が朝食の時間より早く来て、食べ物を貰うのには訳があります。働き始めてすぐの頃は、朝食の時間帯に食堂へ来ていたのですが人が多く、食事を貰うのにも、座る場所を探すのにも時間がかかり仕事に遅れそうになってしまいました。ですから、夫人にも許可を取り早めに来るようにしています。・・・もっとも、許可を取る時に夫人には呆れられてお小言を頂いてしまいましたが。

 そうして私の長くも、短い一日は始まるのです。

 



「見習いっ!ここの掃除が出来て無いじゃないっ!!何してんのよっっ!!」

「すみませんっ!すぐに行きますっ!!」


「ちょっとっ!シーツの洗濯にいつまで時間掛けてんのよっ、この愚図っ!!」

「すみませんっ!もうすぐ終わりますっ!」


「まったく、見習いの癖に気もきかない・・・。」

「ほんとよねえ、あたし達の仕事を増やさないで欲しいわあ。」



 ・・・何時、何処で、私があんたらの仕事を増やしましたか?

 思わず怒りを込めて、手に握っている雑巾を顔面へぶん投げてやりたくなります。・・・ですが、我慢ですっ!社会に出るとはこういうことです。自分たちの仕事を押しつけてくる能なし・・・コホン、ええっと、あんまり戦力にならない人でも一応は同僚です。まあ、枯れた木も山の賑わいと言いますし、我慢の時でしょう。


 ですが、掃除をしてきた中で思ったのですが、この20人程しか入院していない救護院に対して私を含めて15人程の看護師がいます。・・・見習いは私一人ですし、食事担当の方は覗いての人数ですが。

 そして、夜勤などはなく日勤として常に10人程は働いています。それにしては、彼女たちは何をするでもなく、患者さんの身の回りの雑務を多少するだけです。雑務と言っても水をついだり、食事を配ったりするだけのこと。その他は掃除や洗濯を多少するくらいでしょうか?

 ですが、その洗濯をしたはずのシーツは汚れが残り、よれっとしています。掃除も十分に行き届いていなくて、トイレなど最悪です。最近魔道具の発明で水洗トイレがこの世界でもせっかく普及され始めたというのに、便器は汚れ、床には水たまりが出来ています。

 こんな劣悪なのは衛生環境だけでなく、この場所で働く彼女たちもそうです。彼女たちの働き方を見ていると、"どうでもいい"、"面倒くさい"と言う感情がとても伝わってきます。

 これでは、治る病気も治りはしないでしょう。


 少しでもこの環境を改善していく必要があると理解した私は、環境を変えるための小さな一歩を踏み出す事にしました。



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