プロローグ
ユーラスの森の奥深くに一軒家があった。そんな静かに佇む家の中から、女性の大きな泣き声混じりの否定の言葉が木霊した。
家の中を覗くと、リビングに有る机を囲む四人の人影が見えた。
赤銅色の髪を持つ女性が大きな泣き声の主なのか涙を流している。その横に寄り添うくすんだ小麦色の髪の男が赤銅色の髪の女を慰めている。そんな彼らに困惑した様子で眺めている銀色の髪の獣人と、この事態を作り出してしまった黒髪の少女がいた。
「リクは、あたしを捨てていくの?」
「違います、お師匠様。
私は、ちゃんとお師匠様が納得してくださるまで待ち続けます。」
赤銅色の髪の女の言葉を黒髪の少女は悲しそうな顔で必死に否定する。
「だったら、納得なんてしないわ。
どうして、あたしの可愛い貴女を救護院なんかで働かせなきゃいけないの?
あんな場所で働きたがる人なんて、本当はいないわ!」
「お師匠様…。」
「リク、お前は本当にわかっているのか?
救護院という場所で働くということは、一般的に恥でしかないんだ。
貧しい未亡人や、元孤児の奴がする仕事なんだよ。
それをお前がする必要はない。」
黒髪の少女を思っている二人の言葉に、少女の瞳が迷いに揺れ動く。だが、黒髪の少女の決意は固かった。
「…私は知っています。
私自身が何故捨てられたのかを…。」
『!!』
黒髪の少女は静かに語り出します。
「私は身体が弱く熱が出やすかった。
だから、きっと“病弱認定”されたんです。」
「リク!」
「大丈夫です、お師匠様。
私は捨てられたことは悲しいけど、お師匠様達に出会えたことは感謝しているんです。」
思わず名前を読んだ赤銅色の髪の女に対し、黒髪の少女は微笑みを向ける。
「・・・ですが、教会の語る“病魔”とは何なんですか?
物事には、原因が有るから結果が有るんです。
彼らは、その原因と向き合う事もしない。
そして、“病魔”という言葉を免罪符に、罪もない命を弄ぶ彼等が許せません。
・・・でも、それ以上に“病魔”なんて言葉に惑わされて、大切な人を失う悲劇を少しでも減らしたいんです。」
改めて、黒髪の少女は紫水晶のように 強い輝きを放つ瞳を三人へ向けて、決して挫けはしないのだという覚悟を乗せて言葉にする。
「私が、この世界の"病魔"という考えを、そして看護を変えて見せます。
そのために、私はきっとこの世界に生まれたんです!」
力強い黒髪の少女の宣言が三人の心に響き渡った。
いつも読んでくださり有難う御座います。
これより、第4章の開始となります。
どうぞ温かい目で見守って頂けると幸いです。




