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閑話 春祭りと深紅の少年騎士 その2。


「待ってくれっ!俺はただ、そのお嬢ちゃんを保護しようとしただけなんだっっ!!」

 深紅の髪の少年騎士さんを筆頭に、周囲には数人の騎士団員が集まって来ています。

「何を言っている?そのお嬢さんがあんなにも助けを求めていたではないか?」

 隊長格らしい口ひげがダンディーな壮年の騎士さんが問いただします。

「そのお嬢ちゃんの誤解だっ!」

 その言葉に周囲の騎士団員もいぶかしげな視線を私と誘拐犯の男の両方へ投げかけます。

 ・・・・・騎士を名乗るならばもう少し感情を隠して頂きたいです。私の中の騎士への評価はきっと厳しいのかもしれません。比較対象はシオンさんですからね。

「俺はそのお嬢ちゃんを探すのを頼まれたから、声を掛けたんだっっ!」

 誘拐犯の男は一見親切そうな相貌をしています。その事もあり、騎士の方々も困惑したのでしょう。

「お嬢さん、はぐれたのは本当なんだね?」

「はい、家族とはぐれてしまいました。」

 私の肯定の言葉に、誘拐犯は我が意を得たりとばかりに叫び声を激しくします。

「ほらみろっ!俺は何もしちゃいないんだっ!!その子の父親に頼まれたんだからなっ!!!」

「・・・・・。」

 隊長格さんが、悩み始めています。その様子を見て、往生際が悪いと思いながら喚く男へ近づき私は、話しかけます。

「本当に、貴方は私の父親にあったんですか?」

「そうだって要ってるだろうっ!人の親切を仇で返しやがってっ!!」

 喚きながら私を忌々しそうに睨んでくる男へ、私は自分でも分かるほどに冷たい声音で返します。

「・・・・・そうですか。貴方は、私の父親にあったことがあるんですね?

 でも不思議ですね。今日この場に一緒に来たのは、私が兄のように慕っている方です。」

 私の言葉に喚いていた男が一瞬固まり、騎士団員の方々も私の言葉の続きに注目します。

「そ、それは・・・。」

「さらに言いますが、私の家はユーラスの森の近くに有ります。

 そんな遠く離れた場所にある家にいる父と貴男は会ったんですね?」

 私が言葉を締め括れば、騎士団の方々は厳しい視線を男に向けます。これで、決着は付きましたね。

「後の話しは騎士団の詰め所で聞いてやる。」

 騎士団の隊長格さんの一声に男は未だに喚きながらも、4人ほどの騎士団員の方々に拘束され連行されます。

「さて、お嬢さん。次は貴女の家族を見つける必要が有りそうですな。」

 私に不器用な笑顔を浮かべた隊長格さんが話しかけてきました。隊長格さんは、側に残った数名の団員達を見渡し、誰に頼んだ者かと考えている様子です。

「隊長殿、私が探します。」

「アスランか…。そうだな。」

 一番始めにあの男を拘束した深紅の少年が片手を上げ、立候補しました。私を置いてきぼりにして話しは進み、彼に預けられることになりました。しかし、この彼の一見柔和とも、優しげとも言えるこの笑顔、女性から見れば黄色い声が上がるような代物です。けれど、向けられる私には背中がゾワゾワする物でしか有りませんでした。


「初めまして、お嬢さん。私は、アスラン・フォン・クラリスロ。貴女の名前をお聞かせください。」

 そう言いながら、まるで物語の中の貴公子のような仕草で跪き完璧な笑顔を浮かべる深紅の少年。そんな少年を見て、私が心から思ったのは"胡散くさっ"だけでした。


「・・・すみません。知らない方に名前は教えてはいけないと言われています。」

「親御さんの言うことをちゃんと守るのは良いことですね。

 ですが、このような状況であれば親御さんも許して下さいますよ。

 それにお嬢さん、私も名乗りましたから知らない人では有りませんよね?」

 輝くような世の女性が喜びそうな笑顔を向けてきます。

 ・・・・・女に笑顔を向ければ良いと思っていないか、この野郎。

「いいえ、まったく知らない赤の他人です。」

 気が付くと、少年の言葉を思いっきり否定していました。・・・・・だって、イラッとしちゃったんですもん。その所為で、ちょこっと言葉が崩れてしまいました。平常心を心がけ、反省せねばなりませんね。

 私の言葉を受けて、少年の笑顔がピキリと音を立てて固まります。・・・・・この程度の事で固まるとはまだまだですね。

「そ、そうですか。

 では、もっと知って頂ければ問題ないと言うことですね。

 私はこのエリューシオン王国の5大公爵家が一つクラリスロ家の跡取りであり、栄えあるダンフィールド騎士学園に席をおいています。

 未来の騎士団長、将軍候補であると自負しております。」

 さらに笑顔に圧力を掛けて、私に凄いだろ、驚けとばかりに言葉を重ねる少年。ああ、でも、笑顔が少し引き攣っていますね。

「そうですか。」

 長ったらしい説明へ私は真顔で短く返します。

 何故でしょう?初めてあったはずのこの少年、私の女の感が告げています。関わるな、と。

「・・・・・お嬢さんには、まだ難しい内容だったのかな?」

 子ども扱いされることは慣れています。しかし、さっきの話の内容は9歳にもなる子どもであれば理解できる内容ですよ。少年の中で私が子どもだから理解できなかったのだと勝手に決められ、納得され掛けていることにむっとします。

「先に言っておきますが、貴男が公爵家の跡取りで、未来の騎士団長か将軍候補であるという話しであれば理解しています。」

 唐突に喋り始めた私に、多少驚きの顔を見せたことに少しだけ溜飲を下げます。

「ですが、貴男は今この場所に公爵家の跡取りとして立っている訳ではないのでしょう?

 まして、今はまだ騎士団長でも無ければ将軍でもない。

 ただの騎士学院に通っている少年でしょう?」

 私の言葉に侮られたと怒り出すかと思いましたが、まだ私の言葉に理解が追いついていないのか目を見開いているだけで怒り出す様子はありません。その姿を見て、こうなれば自棄だとばかりに言葉を続けることにしました。

「私の知る騎士とは、謙虚さと誠実さを知り、弱き者と慈しむべき民を護る盾となる者の事です。

 貴男のように子どもへ偽りの笑顔を向け、己の肩書きを持って己の立場を分からせようとする者ではありません。」

 ・・・・・・ここまで言い切りましたがさすがに、怒るでしょうね。

 うぅ、シオンさんごめんなさい。厄介ごとを起こしてしまいました・・・。




 いつも読んで頂きありがとうございます。

 最近、もう一つの連載を始めたせいかしょうがないとはいえ、更新速度がゆっくりになってしまいました。

 全然違う性格の主人公を描くというのも楽しいですね。

 これからも温かい眼で見守っていただけると幸いです。

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