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閑話 7歳の誕生日と贈り物

「えっと・・・?お師匠様?」


 最近、なんだかお師匠様の様子が可笑しいです。黙ったまま私を離しません。おそらくキースさんがらみだとは思いますが・・・・・。キースさんとお師匠様が恋人?になって、もうすぐ1年でしょうか・・・・・。時が経つのは早いですね。


「・・・リク。」

 結構な頻度で暴走するお師匠様では有りますが、こんなショボンとした様子で可笑しい理由は分かりませんが、一応抵抗はせずにお師匠様の腕の中で過ごします。

「お師匠様、悩み事ですか?」

「・・・・・うぅ、りくぅ。リクはどんなことがあってもあたしから離れない?」

「・・・?お師匠様が嫌でなければそうしたいと思っていますが・・・。」

「そっか。・・・なら、いいわ。」

 私には、お師匠様が何に悩んでいたのかは分かりませんでした。とりあえずは、お師匠様の気が済むまで抱き枕になって過ごしました。



 昼食を三人でとったあと、修行に行こうとする私を二人が呼び止めます。疑問符を浮かべる私の前に並べられたのは、可愛らしくリボンを着けた小さな二つの箱でした。

「お師匠様?キースさん?」

 戸惑った声を上げる私に二人は微笑みます。

「7歳の誕生日おめでとう、リク。」

「誕生日?・・・・・忘れてました。」

 そう、今日はすっかりと忘れていましたが私の誕生日でした。

「おめでとう、リク。開けて見ろ、俺達からのプレゼントだ。」

 キースさんに促されて二つの小さな箱を開けます。中には、キラキラと輝く緑と濃い黄色の宝石が入っていました。

「綺麗…。」

 キラキラと輝く2つの宝石は大人の拳ほどの大きさが有ります。

「これはね、精霊石よ。」

「精霊石?」

 精霊石は、宝石の原石が鉱脈に埋まっているときに自然界に存在する精霊の力が宿った石のことです。

「リクはまだ十分な身を守る方法がないでしょう?

 だから、この精霊石を"核"にゴーレムを作って守護者としてはどうかと思ったの。」

「守護者・・・・・。お師匠様が作ってくれるんですか?」

 私は魔法の修行を続けていますが、キースさんを助けるために使った治癒魔法を含めて、あれから一度も成功することは有りませんでした・・・・・・。本当に自分が治癒魔法使いなのか疑問ですけど、未だに諦めてはいません。・・・・・時々才能のなさに現実逃避してしまいますが。


「大丈夫よ。リクは、想像するだけでいいの。」

「その精霊石には、俺とメリッサの魔力がすでに宿ってる。

 あとは、リクが自分の守護者を考えりゃあいい。」

 二人の言葉を信じて私は、守護者を作るべく一緒に庭へ出るのでした。



「いいか、リク。大切なのは想像力だ。」

「リクなら大丈夫だと思うけど、出来るだけ細部まで想像することが大切よ。」

「分かりました。」

 二人の言葉を受けて私は眼を瞑ります。お師匠様に渡された2つ精霊石を両手でしっかりと握り、想像力を働かせます。緑の精霊石の属性は"風"、濃い黄色の精霊石の属性は"地"です。"風"と"地"の守護者を想像します。


 "翡翠のように輝く瞳 真っ黒でしなやかな身体 ぴんっと尖った耳 長くて気まぐれそうな尻尾"


 "琥珀のように輝く瞳 重心が低く幅の広い胴体 発達した筋肉と骨 ぴょこんっと短い尻尾 "


 想像を膨らませていくうちに、淡い緑と黄色の光に辺りは包まれ始め、光が消えたとき私の手の中には精霊石は有りませんでした。その代わりに、私の目の前には想像したとおりの翡翠色の瞳を持った"黒猫"と琥珀色の瞳を持った"犬フレンチブルドック"がいました。


「お師匠様、キースさん!やりました!!成功しましたっ!!!」

「黒猫と・・・犬?か?

 あぁー、良かったな。リク。(あれは犬か?)」

「良かったわねっ、さすがあたしのリク!(・・・・・あれは犬よね?)」

「はいっ!!」

 想像通りに成功したことに私は喜びを隠せません。笑顔で2匹へ近づきます。

「えっと、初めまして。私はリクです、よろしくね。」

「わふっ!」「みゃあー!」

 嬉しくてしょうがありません。私は、動物が大好きでした。前世の実家ではこの子達にそっくりなフレンチブルドックと黒猫を飼っていたんです。ですから、2匹の守護者と言われたときに頭に浮かんだのはこの子達の姿でした。しかし、思った以上にそっくりな子達に嬉しくて、懐かしくて、どうしようもありません。

「・・・・・リク、この子達に名前をつけないと。」

「はい。黒猫の方がジェダイド、犬の方がアンバーです。」

 2匹との出会いは私にとって、とても大切な物となりました。本当に、嬉しい誕生日プレゼントを貰いました。


 その夜、夕食の席でお師匠様より驚きのニュースが有りました。

 なんと、キースさんとの赤ちゃんが出来たそうです。私も、驚きましたがキースさんも私以上に驚いていました。・・・・・お師匠様は、私だけでなくキースさんにも言ってなかったみたいです。どうやら、最近悩んでいた理由はそれだったみたいです。お師匠様の衝撃の告白に、固まっていたキースさんが復活してお師匠様を抱きしめ始めました。

 ・・・・・・・ここから先は、二人きりの方が良いでしょう。私を視線を向けるお師匠様に手を振って、ジェダイドとアンバーを連れて部屋で休むことにします。


 お師匠様、キースさん、本当に素敵な贈り物をありがとうございました!

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