5歳児とお師匠様と魔銃使いその2。
お師匠様に抱き潰されそうになったあのあと、私の発案で家の中に場所を移しました。
相変わらずお師匠様はアズノルクさんを威嚇しています。その姿は、なんだか毛を逆立てた猫みたいです。アズノルクさんは、飄々とした態度で私を観察しています。
沈黙に耐えきれなくなった私はとりあえず疑問を口に出してみることにしました。
「あのアズノルクさんが探されていたのはお師匠様で良かったんですよね?」
「うん?あー、そうだな。間違いなくこいつだ。
あと、おじょーちゃん。俺のことはキースでいいぜ。」
「わかりました、キースさんと呼ばせて貰いますね?私の方も名前でおねが・・・」
「ダメっ、絶対ダメっ!!あたしの可愛いリクが汚れるじゃないっ!!!」
私の声を遮ってお師匠様が叫びます。
「おい、こら。名前で呼ぶだけだろ-が。
名前で呼ぶだけで汚れるとか、お前は俺のこと何だと思ってやがる?」
さすがにお師匠様の言葉を聞いたキースさんは顔を引きつらせています。
「歩くふぬけた猥褻物よ。」
「よし、よく言った。表に出やがれ。」
答えを聞いたキースさんは額に青筋を浮かべて席を立とうとします。
・・・はぁ、2人に任せていればいつまで経っても本題に入れません。
「いい加減にして下さい、お師匠様。
お二人の関係がどんな物かは知りませんが、せっかく訪ねて来てくれたのでしょう?」
私の言葉にお師匠様は大げさなまでにショックを受けていますと言わんばかりに顔を歪めました。
「リク、リク、まさか一緒にいるあたしよりあのふぬけ野郎の方がいいの?」
「どうしてそんな話になるんですか?
ただ単にキースさんがお師匠様に会いに来た理由が気になっただけです。」
キースさんは、お師匠様の様子を見て"え?誰こいつ?気持ち悪いんだけど。"と思っていそうな顔をしています。
「ほんとうに?あたしのこと嫌いになってない?」
・・・・・詳しい年齢は知りませんが、まるで大きな子どもですね。身体と精神年齢が合ってない私が言うのもおかしい話ですけれど。
「嫌いになってません、お師匠様が大好きですよ。
ですから、話を進めさせて下さい。」
ぱあっと、まるで花が咲くように笑顔を浮かべ、私の身体を抱き上げてぎゅうっと抱きしめてきます。私は答えるように軽く腕を叩きます。そして、抱っこされたまま目の前に座っているキースさんと眼を合わせます。キースさんはこの世の終わりとばかりの顔をされていました。
「こんな格好で失礼します。宜しければキースさんの訪問理由を伺っても宜しいですか?」
「いやいやいや、ちょっと待て。何この突っ込みどころ満載な展開?
おにーさん、もうどこから突っ込んでいいかわかんねーよ。
つーか、夢だよな?・・・うん、夢だな。
そうじゃなけりゃあ、考えられねー。あの歩く破壊魔がなにその反応?
夢じゃ無けりゃあ幻覚か?めちゃくちゃ凶悪な幻覚だな。
おにーさん、気持ち悪くて死んじゃいそう。」
・・・ひどい言いようですね。外でのお師匠様の態度を知らないので何とも言えませんけど。幸いなことにお師匠様の耳には全く届いていないようです。
「キースさん、眼をそらしちゃダメです。これは現実です。
私には、キースさん達へお師匠様がいままでどんな風に接していたかはわかりません。
ですが、私への態度はいつもこんな感じですよ?」
「・・・しんっじらんねー。たちのわりぃ冗談みたいだな。あの破壊魔がねぇ。
あぁ、目的だったか?別に。近くに来たついでに死んでね-か確認しに来ただけだぜ。
だが・・・、そうだな、おじょーちゃんのことも気になるしな。
暫く厄介になるぜ。よろしくな、おじょーちゃん。」
・・・・・え?本気ですか??
私は、予想外の言葉にぽかんとした表情を浮かべてしまいました。