5歳児とお師匠様と魔銃使いその3。
どうやら彼の中で厄介になることは決定してしまっているようです。
おそらく私を抱きしめているお師匠様は、こちらの話はまったく耳に入っていないのでしょう。とても、幸せそうな顔をされています。
「おじょーちゃん。ちょっと聞きてーんだが、おじょーちゃんはこいつの魔法の弟子でいいんだよな?」
キースさんに聞かれてちょっと困ってしまいます。私はお師匠様と呼んでいますけど、魔法を習っている訳ではありません。私が彼女をお師匠様と呼んでいるのは、若い身空の彼女を"母"と呼ぶのに抵抗があるからです。
「弟子ですか・・・。
私はお師匠様と一緒に暮らしていますが魔法を習ったことは無いです。
ですが、見ての通り私はまだ幼いです。ですから、将来的なことはまだわかりません。
もし、お師匠様がご迷惑でなければいずれ習ってみたいとは思っていますけれど・・・。」
「あのよぉ、おじょーちゃん。本当に幼子か?
いや、こいつと一緒に住んでりゃあ大人びるのもしょうがねーか。」
本当にお師匠様はキースさんにどんな態度を取っていたのでしょう?聞くのは恐ろしい気がしますので、あえて聞きませんが。
「ふんっ、あたしのリクが可愛くて、賢くて、優しくて、可愛くて、可愛いのは当然よ。」
あ、お師匠様が幸せな思考から戻ってきたみたいです。
・・・言っておきますが、お師匠様の言葉には突っ込みませんよ。
「・・・あー、そーかよ。」
キースさんもなんだか疲れた顔をしています。きっと、同じ気持ちなのでしょうね。
この会話の後、キースさんが厄介になることをお師匠様に伝えて一騒ぎ、食事の準備を私がしている事を知ったキースさんがお師匠様に詰め寄って一騒ぎ、さらにキースさんがどこで寝るかで一騒ぎ、5歳児の私はいつも以上に疲れてしまい途中から眠気に負けて夢の世界に旅立ってしまいました。
次に目が覚めたとき家が無くなってないといいなと祈りながら・・・。
《お師匠様 メリッサ・エキザルト》
今日は、リクと出会ってからの5年間の中で一番最悪な日と言えると思うわ。
リクと出会う数ヶ月前まで、これでも結構名の知られた有名なパーティーで冒険者として活動してたのよ。お金も貯まったし、暫く研究に専念しようと思ってパーティーから離脱したわ。別に喧嘩別れした訳では無かったから、再び冒険者として活動を再開するときは加入するかは別として様子だけは見るつもりだったし・・・。
今、あたしの目の前で一緒にお酒を飲んでいるこの男は、そのパーティーの一員で一緒に何度も死線をかいくぐった仲間よ。ただし、この男の女癖の悪さだけは辟易けど。
あたしは元は孤児だった。運良く孤児院に入れて、魔法に触れて、この類い希なる才能を開花させたわ。そのおかげで孤児院の中でも優遇されたし、冒険者としても成功できたわ。でもね、いいことばかりじゃないわ。色んな悪意が私を利用し、絡め取ろうとした。彼らと会ったときの私はそんな悪意にさらされ続けて、今以上に攻撃的で過激な性格だったと自覚してる。きっと、あの頃は悪意を感じすぎて人間不信になってた。だからこそ、彼らと出会って、一緒に冒険して、彼らを少しは信じることができて、その結果として成功できたんだってわかってる。まあ、あたしのような天才美魔女がいたからこそとも言えるけど。
要するに、少しは目の前のこの男のことは認めていると言うことよ。だから、あたしの家に泊まることは許してあげる。
ただし、女関係は信じないわ。だから、リクには近づかないで欲しいわね。




