5歳児魔銃使いに出会う。
その男性は、肩より少し長いくらいのくすんだ小麦色の髪を無造作にくくり、戸惑ったような焦げ茶色の瞳で私を見つめています。30歳代前後でしょうか?無精髭が生え、どこか影を落としたその顔は造形的にも悪くありません。冒険者か傭兵でしょうか?武器や防具に関して詳しい知識を持っていないためよくわかりませんが、動物の皮?のような物でできた防具に長年愛用している雰囲気のコートを羽織り、腰には2丁の拳銃のような物を装備しています。
「あー、えっとな、おじょーちゃん。
ちょっと尋ねてーんだが、ここは魔女のメリッサの家じゃねーよな?」
お師匠様のお知り合いでしょうか?私は生まれてから今まで、5年間の間に3歳くらいまでしか街で暮らしていた経験はなく、4歳を過ぎた頃にこの森に帰ってきました。それ以降は、お師匠様以外の人たちと関わる機会は全く有りませんでした。そのため、武器を持った冒険者のような男性は初めて見たと言っても過言では有りませんでした。だからでしょう、突然現れたお師匠様以外の人間に対し私は驚き固まってしまい彼の質問にすぐに答えることはできずに黙り込んでしまいました。
「・・・いや、やっぱありえねーわ。
わりぃな、おじょーちゃん。変なこと聞いちまって。
あいつがおじょーちゃんみたいな子どもと住んでる訳がねーからな。」
黙っている間に彼の心の中で結論が出てしまったようです。私が怯えていると思ったのでしょう、無理に距離を詰めることなくへらりと笑いかけてくれました。
「・・・いえ、私の方こそすみません。
お師匠様以外の方と会うのは初めてでびっくりしただけなんです。
お師匠様のお知り合いですか?お師匠様は家の中で魔法の研究をしていると思います。」
私の言葉に彼は眼を丸くしています。おそらく私がお師匠様以外と会ったことが無いと言ったからでしょうね。ある意味立派な引きこもりですから・・・。
「はぁっ?!
あの傲岸不遜、歩く破壊の魔女が"お師匠様"っ?!
おいおい、それはなんの冗談だよ?おにーさん笑えないよ?」
驚いた理由はそっちですか。彼の中のお師匠様のイメージは何なんでしょう?
私から見ればただの子ども好きですよ?ただし変態・・・コホン、少し大げさなところがありますが。
「・・・あの冗談ではありませんよ?
確かに私が一緒に住んでいるのはメリッサ・エキザルトです。
お師匠様は確かに魔女ですけれど、お探しの破壊の魔女かどうかはわかりませんが・・・。」
「そうだな、おじょーちゃん。絶対に人違いだ。
あいつが子育てするとは思えねーし、おじょーちゃんみたいな子どもをが育つとは思えねーよ。
邪魔して悪かったな、俺はキース・アズノルク。しがない冒険者家業をしてんだ。」
"キース・アズノルク"は飄々とした表情で出会ったばかりの幼い少女を見て、痛みを堪えるようなその瞳を歪め、口元にニヒルな笑みを浮かべたのであった。
いつも呼んで頂きありがとうございます。
本日2度目の更新でやっと新しい登場人物を出せました。
物語はなかなか進みませんが、永い目で見て頂けると幸いです。