第1話
「緊急ニュースです。ゼマガ大銀河帝国を名乗る異星人が、突如地球に対し宣戦を布告しました。」
突然テレビから、異星人が地球を侵略しに来たというニュースが流れた。そのニュースは地球人だけでなく、ゼマガ大銀河帝国を名乗る異星人たちも見ていた。
ゼマガ大銀河帝国の技術の粋を結集して建造された戦艦モイロの艦橋で、総司令のコーザ提督が、慌てて避難をしている市民たちを見て笑っていた。
「今度こそ、この惑星を我らのものにしてくれる……」
地球人たちは知らないが、過去にゼマガ大銀河帝國は地球に進攻しようとして失敗していた。スペースガーディアンを名乗る異星人の集団に横槍を入れられ、艦隊の半数以上を失い撤退を余儀なくされたのだ。
しかし今回スペースガーディアンはたったの一人しか地球にいない。守るべき星が増えすぎたせいで、各惑星に人員が分散されていたのだ。
「これより我が艦隊は地球に降下し、地球人を根絶やしにする! 全艦降下開始!」
コーザ提督の命令とともに、ゼマガ大銀河帝国の大艦隊が地球に降下を始めた。
降下途中に地球の軍隊がミサイルを放ってきたが、各艦の装備しているバリアがすべての攻撃を無効かしていった。
「ふむ、ジオーゴ砲を使用する必要はなさそうだな……」
無力化されていく地球のミサイル攻撃を見てコーザ提督は呟いた。ジオーゴ砲とは旗艦モイロに装備されている最強の破壊兵器で、この兵器は破壊力が強すぎて、地球の環境を変えてしまう恐れがあったため、コーザ提督はできれば使いたくないと考えていた。
「提督! 町が見えます!」
艦橋のオペレーターがコーザに報告した。そして町の様子を見てコーザは眉をひそめた。建物が密集した町がコーザには、ひどく醜く見えたのだ。
「これが地球なのか……何と醜い。ん? 何だあの建物は!?」
突然一つの建物が浮かび始めた。それに続くかのように、次々と建物が宙に浮かんでいく。
「提督、あれは建物ではありません! 戦闘艦です! 全て武装した戦闘艦です!」
「ま、待ち伏せか!?」
無数の戦闘艦がゼマガの艦隊に向かってくる。
「全艦、前方の地球軍の戦闘艦に――な、何だ!?」
突然、各艦が地上から攻撃を受けた。地上にいた車だと思っていたものは、実は戦闘車両だったのだ。地上の戦闘車両から放たれるミサイルやレーザー砲が艦隊を襲う。
「提督! 地球軍の戦闘艦が攻撃を始めました!」
地球の戦闘艦も主砲やミサイルでゼマガの艦隊を襲った。各艦に攻撃が命中していき、ゼマガの戦闘艦が次々落とされていった。
「くっ、止むを得ん! ジオーゴ砲発射用意!」
旗艦モイロに装備された巨大な大砲が、エネルギーを溜めはじめた。それを見た地球の戦闘艦たちは、モイロを警戒して距離を取り始めた。
「無駄だ! いくら距離を取ろうとも! ジオーゴ砲撃てぇーーーー!!」
ジオーゴ砲から巨大な黄色い光線が発射された。
ゴーザは、このまま地球の戦闘艦たちは全滅すると思った。しかし――
「あ、あれは! スペースガードか!」
突然現れた覆面をかぶった謎の巨人が、バリアを張ってジオーゴ砲を防いだのだ。しかしバリアだけではジオーゴ砲の威力に耐えることができず、巨人はンボォッ! とエコーがかった声を上げ、吹き飛ばされた。
「見たかスペースガード! これがジオーゴ砲の威力だ!」
憎きスペースガードに一矢報いたことに、ゴーザは歓喜した。
「提督! 戦闘艦が一隻突っ込んできます!」
「何!? まさか特攻か!?」
地球の戦闘艦がたったの一隻で、旗艦モイロに全速力で突撃した。突撃してきた地球の戦闘艦より何倍も大きな戦艦モイロは沈まず、地球の戦闘艦はモイロに突き刺さる形になった。そして、そのまま地球の戦闘艦は、モイロに主砲や機関砲で砲塔を潰していった。
「なんて野蛮な連中だ!」
「て、提督、敵戦闘艦から人が出てきました!」
戦闘艦から武器を持った戦闘員が出てきた。装備はバラバラで、まるで暴徒のように雄叫びを上げながら、モイロの艦内に侵入していく。
「敵が艦内に侵入したぞ! 警備部隊は対処に当たれ!」
モイロに配属されていた警備部隊たちは困惑していた。敵の装備はバラバラで、レーザー光線銃を使うものもいれば、原始的な銃や弓矢を使うものすらいた。さらに侵入者たちの中には、ロボットやあきらかに地球外の異星人のような者までいたのだ。
「何なんだコイツら!」
装備はバラバラで連携が取れているとはとても思えないが、練度は高くゼマガの兵士たちは次々と倒れて行った。
「このままでは完全に制圧されてしまいます!」
「おのれ地球人度もめ! こうなれば自爆を……」
コーザは自爆ボタンを押し周りを巻き込むことを考えた。
「そうはさせぬ……」
甲冑を着た男がコーザの首元に日本刀を当てて、それを止めた。
「馬鹿な……このモイロが、このゼガマがこんな辺境の星の軍隊に敗北するだと!?」
「軍隊? それは違うな。我々は軍人ではない」
「何だと? それでは貴様らは一体……」
「我々は……一般市民だ」
「貴様らのような一般市民がいるものか!」
「いるんですよ。ここに」
後から入ってきたエプロン姿の若い女が、そう言って近づいてきた。
「どうもアサルト荘の大家、大野愛望です」
「大家……?」
「あの機動アパートの大家なんです」
愛望はそう言って、モイロに突撃してきた戦闘艦を指さした。
「アパート……?」
「この艦は我々が戦利品として物資と共に接収させていただきます」
コーザは愛望の言っていることが理解できず、ただただ唖然としていた。
「いやー、今回は大漁だったわね!」
愛望は運び込まれる物資を見て、両手を腰に当てながら満足そうに言った。現在の法律では、鹵獲した侵略者の兵器や物資は拾得した者の所有物となる。余剰になった鹵獲品は国や業者に売ることができるようになっていた。
侵略者や怪獣による被害を頻繁に受けていた地球の各国(特に日本)は、防衛に割かれる予算に悩まされていた。そして、それらの災害に悩まされていたのは政府だけではない。侵略者や怪獣が暴れるたびに家が破壊され、安心して生活を送れないという悩みを抱えていたのだ。
そんな悩みを解決した方法が、戦闘艦を賃貸として活用する方法だ。退役した軍の戦闘艦を改修したり、民間用の戦闘艦が開発され、災害の度に家ごと避難でき、場合によっては自衛戦闘もできる機動賃貸は瞬く間に広まっていった。
政府も、そんな機動賃貸に防衛の一部を担ってもらうために、戦闘に加わった賃貸には報奨金を払い、鹵獲したものは自分のものにしてもよいということにして、機動賃貸に防衛に協力してもらうようにしたのだ。
愛望の運営する機動アパート、アサルトは報奨金目当てで活動する、傭兵のようなアパートだった。
「それにしても、ジャイアントマンが現れるなんて珍しかったわね」
ジオーゴ砲を防いだ巨人は、地球人からはジャイアントマンを呼ばれていて、昔は侵略者や怪獣が現れるたびに現れる謎のヒーローだったが、機動賃貸の登場により地球人だけで防衛できるようになってからジャイアントマンの出る幕はなくなり、ジャイアントマンもめったに姿を現さなくなっていた。
「マナミサン、新シイ入居者ガ来マシタヨ」
マナミが山奥で不法投棄されたいたのを見つけて直した、旧式の家政婦ロボが新しい入居者の到着を伝えた。
「あら、そういえば今日だったわね……え?」
愛望の前にボロボロの服を着たボロボロの男が立っていた。
「初めまして、今日からお世話になります。馬場大樹です……うっ」
「ちょっと! 何で死にかけてるのよ!」
大樹は気を失い倒れた。
読んでいただき、ありがとうございました。