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二度目の転生は上手く生きていきたい  作者: 江藤乱世
第一章 ~誕生~
3/79

とりあえず鍛えようと思います

まだまだ日常は続く

 アルヴァが家に帰ってくると、畑で作業しているのが見えた。とりあえず獲ってきた鳥三羽を家の中に置き、それから母さんのもとに向かう。


「ただいま、母さん」


「あ、おかえりなさい。大丈夫だった?」


 どうやら母さんは畑の草取りをしていたようだ。帽子をかぶり、汗を拭きながらアルヴァの方に顔を向けた。


「鳥を三匹狩ってきたよ。一羽は練習で処理しちゃったけど」


「処理もしたの? やり方はお父さんに教わった?」


「そうだよ」


 実際は違うのだがそういうことにしようと決めていたので、アルヴァはスムーズに受け答えすることに成功する。


「それより母さん、俺に手伝うことある?」


 そういいながらアルヴァは既に草を抜き始めていた。抜いてはだめなものといいものの区別ぐらいなら今のアルヴァでもつく。


「ありがとう、アルヴァ。今日はそれだけだから、他の人のところにも手伝いに行ってあげて」


 そういえばとアルヴァは今世の記憶から情報を引き出す。

 アルヴァはあまり複雑なことができない代わりに、言うことはよく聞くので村の人にいろいろ手伝いを頼まれるのだ。昔のアルヴァは嫌がっていたようだが、今のアルヴァにとってはステータスアップのために願ってもないものだった。これで筋力のステータスの強化は問題ないと打算的に考える。


「それじゃあ、草取り頑張らないとね」


 アルヴァは魔法と魔力による強化を封印し、純粋な筋力のみで草取りを始めた。

 しばらく黙々と作業していたアルヴァだったが、一通り終えたのか母さんがアルヴァに声をかけた。


「そろそろご飯にしましょ」


「お昼は僕の獲ってきた鳥を焼く?」


「そうね。さばいたものは速く食べないと悪くなっちゃうから」


 アルヴァならばいくら傷んでいようと【状態異常耐性Lv8】があるためお腹を壊すことはないが、母さんはそういうわけにはいかない。昔はよくお腹を壊したなぁと懐かしみながら、母さんと家の中に入る。


「それじゃあ、今から作っちゃうからそれまで待っててね」


「わかった」


 アルヴァはその言葉に甘え、一度自分の部屋に戻る。

 とりあえず現在出来ることは少ない。時間もあまりないので、アルヴァは床に座り、自分の魔力を意図的に操作し、魔力操作の強化を図ることにした。これならば誰かにばれる心配もないので、アルヴァは呼ばれるまでの間、のんびりと魔力操作を行うことにした。

 魔力操作をしていると、アルヴァは自分の魔力操作がいかに稚拙かを思い知ることになった。とにかく遅いく、調整も前世のアルヴァとは比べるまでもない。そもそもアルヴァは今まで魔法を使ったことがないのだから、今世のアルヴァの魔力操作がつたないのは仕方がないことなのだが。


(これは相当にひどい。今日の魔法で事故がなかったのが不思議なレベルだ。しばらく魔力操作をしていれば、簡単な魔法くらいは大丈夫だろうけど、高度なものは何年も使えないだろうな)


 そんなことを考えながら、アルヴァは魔力操作にいそしむ。

 それからしばらくして母さんからの声にアルヴァは部屋を出る。既に母さんは椅子に座っており、アルヴァは向かいに置かれている椅子に座った。


「それじゃあ、食べましょう」


 その言葉を合図に母さんもアルヴァも食事を開始する。今日のメニューはアルヴァのとってきた鳥を焼いたものに野菜を添えたものと、パンと牛乳という質素なものだった。本来はここに鳥の肉はないはずなので、日ごろの食事はまぁ質素としか言いようがない。


「アルヴァ、今日はどこに手伝いに行くの?」


 食事の軽い会話としてなのか、それとも息子であるアルヴァの居所は把握しておこうとしているのか、母さんは牛乳を飲んでから問いかける。


「えっと……」


 何も決めていなかったアルヴァは今までのアルヴァの行動から瞬時にこの後の行動を決定する。


「今日も村長さんのところに行こうかな。また腰を痛めたみたいだし」


 最近はどうも村長のところに行っていたようなので、アルヴァはとりあえずそう決める。


「ダウさんはまだ治らないの?」


 腰を痛めたのはもう二週間以上も前の話で、本来なら治っていてもおかしくない。しかし、


「シルビィおばさんが、『治る前に動くから!』って怒ってたよ」


 そのアルヴァの言葉に母さんは曖昧に微笑んだ。なんとなくその状況が理解できたのだろう。


「それじゃあ、行ってくるね」


 母さんはまだ半分ほどしか食べていなかったが、アルヴァは全てを食べ終わり、休む間も無く席を立った。


「気をつけてね」


 その声に応えながら、アルヴァは家を出る。

 向かうのは村長の家だ。村長はまだ五十歳を少しこえた程度の少し厳ついおじさんだ。二週間ほど前に腰を痛めて以来、村長の手伝いをするのが最近のアルヴァの日課になっていたようだ。その仕事もほとんどが肉体労働なのが、今のアルヴァには都合が良かった。

 道中、時折働いている村の人たちと挨拶を交わしながら、村長の家に到着する。そして扉をノックしてその場で声をかけた。


「どうぞ」


 ゆったりとした女性の声を聴いて、アルヴァは扉を開けて中に入る。中に入ると、待っていたのか入口に一人の女性が立っていた。


「お邪魔します、シルビィおばさん。手伝いに来ました」


「今日も手伝いに来てくれたの? ありがとうね、アルヴァ君」


「それより、ダウおじさんはどうですか?」


「俺がどうしたって?」


 シルビィとアルヴァが会話していると、横から渋く低い声がかかる。


「ダウおじさん、元気そうですね」


「おう、もちろんだ。まだ重いものは持てないが、無理しなきゃ問題ない」


 問題ないことをアピールするかのように右肩を回して見せる。痛めたのは腰のはずだけどと思いながら、アルヴァは「よかったです」と完全な社交辞令を口にする。


「そんなこと言って、昨日樽を動かそうとして腰を痛めたの忘れたんですか?」


「今日は大丈夫だ」


 「わはは!」と笑うダウの様子を見て、シルビィは呆れたようにため息をついた。ちなみにダウはこんな感じで中途半端に治っては痛めるをここ数日繰り返しているようで、昨日も同様にやっていた。


(魔法を使えば治るだろうけど、さすがにまずいよなぁ)


 アルヴァとしては心苦しくはあるが隠している以上仕方がないと割り切り、仕事をいつも以上に頑張ることで返そうと心の中で決意する。


「それで、今日は何をすればいいですか?」


「お? あぁ、そうだったな。今日はとりあえず薪割りを頼む」


「了解」


「道具の場所はわかるよな?」


「うん、問題ないよ」


 必要なことは聞いたと判断したのかアルヴァは軽く挨拶をすると、仕事をするために納屋に向かう。


「そういえばアルヴァ君」


 しかし移動をしようとしてすぐにシルビィから声がかかり、アルヴァは足を止める。


「今日も本読んでくの?」


 そう言われてアルヴァは村長の家に来るとやっていることを思い出した。

 以前のアルヴァは村長の家に来ると必ず本を読んでいたようだった。そういうところはさすが自分だなぁと思いながら、まだ読む意味があるのかどうかを思案する。

 そもそも村長の家にある本のほとんどは童話などの物語ばかりではあるが、数少ないとはいえ、なぜか魔法書がある。魔法書に関しては読む意味が全くないほど初心者向けのものしかない。よって、アルヴァが読む意味があるのは今のアルヴァにはこの家にはない。


(ん? 待てよ……)


 しかしそこでアルヴァは考え方を変える。ここには初心者用の魔法書がある。つまり、読めば魔法を使えても問題ないのではないか、と。


(読んでいきなりとはいかないけど、少なくとも練習する大義名分は作れる)


「うん。今日は魔法書を読もうかなって思ってる」


「魔法書? アルヴァは魔法を使いたいのか?」


 アルヴァの言葉にダウが何処か驚いた反応を見せる。隣にいるシルビィは眉を寄せてアルヴァを見ている。


(あれ? 唐突すぎたかな?)


 今までアルヴァは童話しか読んでこなかった。魔法書には目もくれず、同じ童話を読み返していたほどだ。根本的な部分では変わらないとはいえ、転生が完了する前のアルヴァと転生完了後のアルヴァでは経験したことが違うため、考え方が同じになることはない。それのせいで何か怪しまれてのではないかと極わずかな可能性とはいえ、警戒してしまう。


「何か変?」


「いや、変ではないが…… まぁ、何事も挑戦だ」


「そうね。挑戦は大事だわ」


 ダウとシルビィの反応はどこか煮え切らないが、どうやら自分が怪しい行動をとったわけではないと感じたアルヴァは、断りを入れて改めて納屋に向かった。

 納屋は本当に小さな建物で、外には突き出すような屋根があり、その下には薪が積まれている。これを今から使いやすい大きさに切っていくのがアルヴァの仕事である。アルヴァは納屋に到着すると、中に入り得物である斧を探す。探すとはいっても場所は分かっているため、すぐに探し当て、持って外に向かう。


(この斧は今の筋力だと魔法なしでギリギリな感じだ。鍛えるには最適だな)


 そう考えながらアルヴァは納屋の外に積まれている中から一本手に取ると、台の上に置いた。


(さて、うまくいくかな?)


 前世も同じことをやっていた経験のあるアルヴァは、少し懐かしく感じながら、狙いを定めて斧を振り下ろした。真っ二つとはいかなかったが、アルヴァの望んでいる形に切ることはできた。

 それからアルヴァは黙々と薪を割り続けた。消耗品なので、いくらあっても困るものではない。なので遠慮なくアルヴァは薪を割る。魔法を使えば楽になるという誘惑に抗いながら、使えそうな薪は全て割ることができた。

 薪割りを終え、アルヴァはダウに報告に戻った。


「終わりました」


 家の中に入ると村長のダウはおらず、シルビィがかまどで料理をしていた。


「もう終わったの? お疲れ様」


 シルビィは顔だけアルヴァの方を向き、声を掛けたらすぐに顔を戻し、料理を再開した。


「まだやることありますか?」


「もう大丈夫よ。あとは私がやるから」


 つまり、アルヴァに任せられるものはないのかと心の中で思いながら、それは表に出さず別の話に切り替える。


「それじゃあ、本を読んでていい?」


「いいわよ」


 今度は振り返らずに答えたシルビィに「お借りします」と声をかけてから、アルヴァは本棚を物色する。どうも見る限り初級の魔法書が揃っているようだ。とりあえず回復魔法の魔法書を手に取ると、近くにあった椅子に座った。文字は知らないものだったが、スキル【多言語理解】のおかげで読むことだけはできる。さすがに書くことはできないのだが、今のアルヴァには必要なかった。

 知っている魔法とはいえ、アルヴァにはまだ見たことのない魔法書である。それだけでアルヴァは楽しめる。どう解釈してどう解説しているのか、人によって違うためそれを見ることが楽しいのだ。

 しかし、時間をかけて読み進めていくうちに、アルヴァの眉が歪んでいく。


(この魔法書はひどい出来だ。この構築方式で魔法を制作した場合、魔力消費量が多すぎる。これじゃあ生まれ持ってかなりの魔力量がないと使えないじゃないか。よくこんなレベルで本を出そうなんて思ったな。こういう人がいるから魔法が一般に浸透しないんだよね)


 むっとしたような表情をしたまま、本をぱらぱらとめくっていくアルヴァ。もうすでに後半まで読み進めていたのだが、そこまで来てもまともな魔法書とはアルヴァには思えなかった。


「やっぱり難しいだろ?」


 そんなアルヴァの様子を内容がわからずにふてくされていると思ったのか、いつの間にか現れていた村長のダウがなぜか少し嬉しそうにアルヴァに声をかける。


「あ、うん」


(そういえば、村長はどこに行ってたんだろう。本を読み始めるまでは家にいない様子だったのに)


 そんなことを考えながら、村長の言葉に曖昧に答える。さすがに簡単でしたとは言えない。


「そうだろうな。俺も昔それなりに勉強したが、結局使えなかった」


 「わはは!」と笑っていることを見ると、本人はさして気にしていなさそうに見える。ダウの家には魔法書なんてあるのかとアルヴァは納得する。それにこの魔法書ならば使えなくて当然だなと思いながら、アルヴァは魔法書を閉じた。


「読んでるだけじゃどうしようもないから、帰って練習してみるよ」


 少なくともこれで布石ができたので、アルヴァとしてはここでただ無為に時間を過ごしていても仕方がない。帰って魔力操作の練習をした方が有意義だった。それほどに読んでいた魔法書はひどいものだった。


「そうか。じゃあもしも使えるようになったら俺の腰を治してくれ」


 その言葉には答えず、聞かなかったことにしてアルヴァは軽く挨拶をして、村長の家を後にする。

 この村はよく見ると不思議なところだった。魔物用に防御壁を作成しているわけではないのにも関わらず、魔物におびえている様子はない。それに、畑は確かにそれなりの大きさだが、商売をするにしては小さすぎる。そして、アルヴァの記憶によれば、ときどきいなくなる村長のダウ。


(一日でわかることなんでたかが知れてるよな。まぁ、平和そうだし、ゆったり生きてはいけそうだ)


 そんなことを思いながら、アルヴァは挨拶を返しながら家に着くまで思考をめぐらせるのだった。

こいつ、絶対元魔王じゃない

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