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49ersの恋愛ばなし  作者: 由起
13/13

聡子の場合~5 そしてその後のはなし

49歳をまもなく迎える同期入社2人。

恋愛なんて縁遠いと思われた2人の出会いを全13話で描きます。

※その後の話を追記しました。(2019.5.12)

京助と付き合いだしてまた日が過ぎていった。


クリスマスに小さな石が小さくいくつも埋め込まれているプラチナの指輪を京助はプレゼントした。


「俺…こんな仕事だから贅沢させてあげられないけど…結婚してください」


聡子は涙が出た。

止まらなかった。


勿論即答ではいと答えた。

しかし…高齢の両親はうんとは言わなかった。


高校中退で肉体労働をしている。

バツイチである。

収入も大学を出て皆が知ってる会社に勤め、主任になっている聡子の方がかなりいい。


京助は社会の洗礼をこれまでもかなり受けて来たが、また聡子の家で手厳しく受けた。


覚悟をしていたが、やはり痛烈に言われると辛い。


「ご両親のお考えは尤もです。籍は入れませんからせめて聡子さんと一緒に住むことを許して貰えませんでしょうか」


両親は結婚適齢期を完全に逃した娘なので、そこは渋々だったが了承した。


2人は同棲することになった。


京助のアパートよりは聡子のマンションの方がお風呂もあり、広さもある。だから聡子のマンションに京助が引っ越し、元のアパート分の家賃を聡子に払うことになった。


がっちりとした体型でいかつい感じの京助だったが、収入格差は理解していたので、率先して家事をした。会社員の聡子の方が朝も遅いが帰りも遅い。


晩御飯は簡単ながらも出来ており、京助も聡子の為に…と栄養を考えて作ってくれた。洗濯も済ませてあり、聡子がすることは京助が朝持っていくお弁当のおかずの仕込みをしておくことくらいだった。


京助の朝は早い。

現場が遠いと5時半には出る。

近い現場でも6時半までには出掛けるので、聡子は4時に起きてお弁当を詰め、もう一度寝る。寝ている間に京助がお弁当箱に蓋をして持って出掛ける…という生活スタイルにした。


京助は肉体労働だから半端なく食べる。

だから昔から食費を抑えるべく自炊してきた京助のご飯は美味しかった。


「聡子はもうこれ以上痩せない方がいいな」

京助が聡子をベッドで抱き締めながら呟いた。


「え?私40kg台になりたいんだけど…」

「今くらいの方が抱き心地が良くてさ…」

「抱き…もう!」


聡子は京助のご飯で微増して52kgだったが、この体重を維持していこうと思った。


一緒に生活して楽しいことを分かち合える人がいることの幸せ。


両親も京助の聡子へのサポートがだんだんわかり、態度が軟化してきた。


そんな時に母が倒れた。

幸い発見が早く、右半身の軽い麻痺だけで済んだ。


実家は元の家からは1時間程のところだった。

京助は浪費し色々やらかす両親と成人するかしないかの時から疎遠になっており、真面目な聡子の両親に憧れのようなものも持っていた。


「同居しよう」


突然言い出した。


「はあ?」

「お前のおかあさんがあんな状態なんだぞ?おとうさんは家事が出来ないし、お前が実家にしょっちゅう通って疲れ果てるのを見るのは俺は嫌だ」


聡子の両親もいかつい京助がちょっと苦手だったが、京助がそんなことを言ってくれたので嬉しくて嬉しくて彼を少し見直した。


同居がスタートした。


京助のお弁当作りは聡子自身がするといって絶対譲らなかったので、娘がそんな早起きをするのが両親は嫌だったが、聡子が二度寝するからまぁ…と諦めた。


京助は朝早いが帰宅も早い。


買い物を済ませ、晩御飯を手早く作る。聡子の帰りは早いときもあるが8時位が多いので、両親と京助で先にご飯を済ませる。聡子が帰ると温めて出し、京助はちょっと残しておいたおかずをつまみながら聡子と食卓を囲んだ。


焼き鳥屋に通えない分、木曜日は高いビールを2本飲むことにした。


自分の洗い物が多いからと晩御飯の支度をしながら洗濯もした。両親は翌朝外干しの為にハンガーごとベランダに干す・取り込むのが日課になった。

居室の掃除は両親がしたが、風呂掃除等は京助がやった。


京助の献身的な気持ちと行動が両親は嬉しかった。


「式を挙げたらどうか」


両親が日曜日の晩御飯の時に2人に言った。


「こんな親孝行な息子はいないよ。俺らの自慢の息子だよ」と父に言われて京助は男泣きに泣いた。


そして年齢も年齢だから…と家族4人だけの式にした。

ウェディングドレスを着て、ちょっと年取ってはいたが聡子は綺麗だった。



そしてある日のこと。

社員食堂で大久保恭子、仁科聡子、大崎久美子、26歳で彼女達の娘のような年齢の後輩の4人がご飯を食べていた。


「あなた達さ、『奇跡の49ers』って言われてるわよ」

「え?奇跡のフォーティナイナーズ?」

「49歳で2人が結婚したから!」

「…ゴールドラッシュじゃあるまいし~」

「いや、仁科さん、金鉱当てたみたいなものですよー!」

「亜衣ちゃんっ」

「えー…でもみんな羨ましがってますよ~。私もこうして一緒にご飯食べてたら彼氏出来ましたし~。うふふ」


そういえば2人立て続けに結婚したら、ちらちらとこちらを見る人が増えたなぁ…と久美子は苦笑した。


「最近さぁ…お父さんが京助誘って飲みに行くんだよねぇ、私置いて。息子が欲しかったんだって。で、京助も親で苦労してたし、普通のお父さんが欲しかったから喜んでついて行っちゃって」

「仲良くていいじゃない」

「まぁそうだけど…」

「お父さん、京助さんが仁科になったから本当の息子みたいに思っておられるんじゃない?」

「まぁ…そうですけど…」

「あ、もうこんな時間!そろそろ戻ろっか」


4人は弁当箱を片付けたり、食器を返したりした。

家庭が平和で幸せなら仕事も安定する。

さて、午後も頑張ろう、と4人は元気に職場へ戻った。

変わろうとすればいつでも変われる。

いくつになっても素敵な出会いはある。


そう思って書いた作品です。


これを読んでくださった皆さまに素敵な出会いが訪れますように…。

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