手紙
歩美の祖母は、病院を無断で抜け出してきたらしい。
親戚と名乗るものが来て、すぐさま戻ることになっていた。
澪は、泣くだけ泣いてから立ち上がる。
立ち上がって、アパート戻った。
受け取った手紙。
これを、見るのが怖い。
恐い――だけど、見なきゃならない。
読まなきゃ、ダメだ。
澪は、封を開ける。
* * *
Dear 澪
私も変わってるところがあるから、こんな手紙を残してみます。
もし私が死んじゃって、バイクが残ってたら使ってくれてもいいし、売っちゃってもいいよ。
それが、君にできる私なりの恩返し。
ありがとうって気持ち。
私達の場合、引き寄せてくれたのは赤い糸じゃなくて、赤いバイクだったよね。
今思い出しても笑っちゃう。
友達に話したらさ、嘘でしょばっかみたーいって笑われちゃったんだよ?
ねぇ、ひどくなーい?
ひどいでしょー!?
ひどいよねー!
ひどいって言ってよ!!
――なんてね テヘペロ (・ω<)
死んじゃってからも、私が貴方に望むことは変わらないよ。
澪が笑顔でいてくれること
澪が優しくいてくれること
澪が生きていてくれること
大丈夫っ!
澪は、沢山の人達を救える力があるの!!
私が保証します!
自信をもって!!
考え事してるときにのムスーッとした顔とか、ちょー似合わないんだから。
あーそうそう、悲しそうにしてるとき、本当に辛そうにしてるときに思ったんだけどね?
何で、誰も助けてあげようっって。
こんなに優しい人なのにって。
いっぱいいっぱい傷付いてるから、優しくできるのにって。
どうして誰も気づかないのよって、本当に、本当にそう思ったよ?
私の大好きな人は、こんなにも優しくって、力強い人なのに、なんで困った時だけ縋るのよ!
なんで澪が辛い時には手を差し伸べないのよっ!!
って、何度も、何度も思った。
世界って、なんだか切ないよね。
でもね、だからかな
私達は自然と、惹かれあったのかもね。
――――大好き。
だからね、澪。
私のこと、しっかり忘れてね!
ちゃんと、私以外の女の子、見つけてね!!
そうじゃないと私、怒っちゃうからね!!
化けて出ちゃうんだから!!
うーらーめーしーや~とかやっちゃうんだから!
さっさと彼女つくれ~とか、言っちゃうんだから(笑)
こんな私だからさ、こういう風にしかいえないけどさ。
私達みたいな出会い。
人はそれを『運命』って呼ぶんだね
ありがとう。
私、強くなれた気がする。
それにね、とっても、とーっても幸せだったよ♪
P.S.
澪の幸せを、本当に、心から願っています。
* * *
「こんなの、ずるいだろ。歩美……」
澪はまた泣いた。
手紙を歩美の残した思いだと受け入れたい一心で、泣きながら、胸が苦しくなりながら、叫びそうになりながら、暗い暗い部屋の中で一人泣いたのだった。