23
巡り巡って、ぼくは何度でも同じ夢を見る。
今日もまた、大輔は夢の中で女の子と歩いていた。幸せそうに笑う二人のあいだに、ぼくが入り込む隙間はない。
いい加減にしてくれと泣き叫んだが、その声は道を歩く二人には届かなかった。諦めて、また、ぼくの視線は二人に吸い込まれていく。
ぼくが本当に女の子だったら、傷付かずに済んだだろうか。もちろん彼が他の子と寝てしまったことは悲しい。けれどもそれならば自分に非はないと割り切って、他の男を探すことができる。こんな風に悩むことなしで。
ぼくの心が男だったのがいけなかったかもしれない。
自分が女の子ならば、大輔との行為をすんなりと受け入れてやれる。最初から、大輔が他の女の子に手を出す隙を与えずにいられる。でもぼくにはそれができなかった。自分は男だって認識しているから。
とどのつまり、今この状況に置かれているのは、彼との深い関係を拒んだぼくのせい。
上手く息ができない。
泣くことすらも。
眩しい光に、視界が霞んだ。
ぼくが手に入れることが出来なかった未来。創造不可能だった関係。
夢の中、ぼくはひたすら大輔に謝り続ける。
大輔の姿は記憶からだんだんと薄れ、思い出せなくなりつつある。そんな彼がぼくの方を振り返ることは、ただの一度もなかった。
不鮮明な影が遠ざかっていく。かわいらしい彼女と一緒に、手を繋ぎながら。
ぼくはきみのいない世界に、堕ちていく。
はっとなって目が覚めた。驚きに心臓がバクバクと跳ねている。
夢……。
泣きたくなるような残像が、脳裏にフラッシュバックする。その痛みにぼくは体を起こして、濡れた頬を拭いた。
真夜中だった。
外ではセミが鳴いている。月の柔らかい光が降り注ぐ下、生を訴えるようにただ声を上げている。こんなにも暑いのに必死に泣き叫ぶ彼らをうるさいとは思ったが、文句を言っても仕方がなかった。
ぼくはもう一度眠りに就こうと目を閉じて布団に潜り込むが、夏のしつこい暑さには敵わない。クーラーをつけていない部屋の中では、寝苦しいのも当然か。
体が火照り、ひどく喉が乾く。なにか飲み物が欲しいと思い、ベッドから出て冷蔵庫の中を探すが、生憎なにもなかった。
ため息をついて、近くにあるコンビニに行こうと思い至る。ここから歩いて五分とかからない。夜風に当たって気分を変えるのもいいかも知れない。ついでに、飲み物だけでなくアイスでも買ってこよう。
そう考えて財布を確認すると、ぼくはTシャツに短パンという軽装で部屋を出た。
ドアを開けると、生ぬるい風が頬を撫でた。空に泳ぐ雲は少なく、月の光は柔らかに地表を照らしている。影に食われた上弦の月は遠く、その輪郭は夏の大気でほんのりとぼけて見える。星は街の光彩に呑まれてしまっていて、肉眼ではほとんど確認できなかった。見渡す途中で一つ明るく輝くものを見つけたが、それは星ではなく飛行機だった。
清らかな光に満ちた夜に向かい、ぼくは歩き出す。胸にまとわりつく悪夢の残影を振り払うような月光は、期待していたほど強くはなかった。
そよぐ風が髪を弄ぶ。
誘われるように、ぼくは気だるい体で前へと進んだ。




