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 大輔が女の子と歩いている。長く綺麗な琥珀色の髪で、スカートからのぞく太ももは白くて細い。彼女は白百合のような手で大輔の手を取り、やがて二人は歩きながら手を繋ぎあった。

 ぼくは呼吸を止めて、そんな二人の後ろ姿をじっと見ていた。

 大輔が横を向いて、彼女に話しかける。その横顔は心底楽しそうに笑っていた。クセのある髪に、見知った服装。

 ああ、ぼくの大輔だ。

 彼女もまた陽気に答える。声は聞こえないし顔も見えないけれど、明るくて幸せそうな光景だった。


 じくりと胸が疼く。


 大事な部分を貫かれたような気がした。その疵口きずぐちから湧き上がるのは、嫉妬というより、氷のように冷たい諦めの感情だった。


『子供、産まれそう?』

『うん、順調だよ。ねぇ、この子の名前、どうしようか?』

『そうだなぁ。俺と×××××の名前を取るってのはどうかな』

『あっ、そういうの素敵だよね。うーん……女の子だったら×××××って名前がいいかな』

『へぇ、いいじゃん』


 脳内で勝手に生み出される声。聞きたくない聞きたくないと思っていても、それらはぼくに残酷な仕打ちを施していく。

 理想的な二人は、同じ方を向いて光の道を歩いていく。ぼくは置き去りにされたまま、スカスカの風船みたいな感情を持て余していた。

 そのようにすべきだと怒鳴ったのはぼくなのに。

 いや……はなから、運命は決まっていたのかもしれない。

 大輔にはきっと、こんなかわいい子が隣にいて、そしてその子と結ばれるのが理想だったのだ。

 ひとつになりたいとは思っていた。もちろんそうなれるとも。いざとなれば駆け落ちくらい、容易たやすいと思っていたのだ。

 けれど今日のあの一瞬で、ぼくの理想は瓦解した。


 結局大輔は、普通の男だった。


 だとしたら、カフェでの記憶に残る大輔の言葉は?


『俺とまだ付き合っててくれる?』


 縋りたくなるような声音。記憶から引っ張りだされた声は、ぼくがたまらなく愛おしい人のものである。

 普通の女の子の方が好きなんじゃないのか?

 だから酒を飲んだ勢いで、その子と寝てしまったのでは?

 様々な憶測が飛び交う。夢の中、自由に思考を泳ぐ言葉を止める者は誰もいない。


 ねぇ、大輔。

 ぼくが本当に好きなら、なんでそんなことをしたんだ?


 目が覚めるまで、ぼくはその言葉に延々と悩まされることになった。

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