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家事壊滅な7人姉妹のお世話係になりました  作者: 三日月
第一部④:聖夜の旋律と、届いた想い
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第39話:輝く夜景と、溢れ出す胸騒ぎ

水族館を出た頃には、冬の日は完全に落ち、ベイエリアの街は光の海へと変貌を遂げていた。


頭上には澄み切った群青色の夜空が広がり、手振りの風が頬を優しく撫でていく。港に停泊する大型客船の灯りと、赤レンガ倉庫を彩る数万球のシャンパンゴールドのイルミネーションが、まるで世界中の星々を地上に敷き詰め直したかのように輝いていた。


「うわぁ……! 夜になると、昼間とは全然違う街に見えるわね……っ!」


月菜は目を輝かせ、パステルブルーのマフラーに顔を少し埋めながら、息を白く弾ませた。


水族館を出てからというもの、彼女は一瞬たりとも湊の手を離そうとはしなかった。繋がれた指先からは、冬の冷気を吹き飛ばすほどの温かな熱が、互いの体温を通じて絶え間なく伝わってきている。


「綺麗だね。……あそこが、目的地だよ」


湊が指し示したのは、港町全体を見下ろす小さな高台――『海風の丘公園』だった。


港の喧騒から少し離れたその公園は、知る人ぞ知る夜景の名所であり、緩やかな坂道を登りきった先には、大海原と街の全景を一望できるロマンチックな展望デッキが広がっているのだ。


「坂道、少し急だけど……大丈夫? 月菜」


「ふふ、バカ言わないでよ。私を誰だと思ってるの? これくらい、なんともないわ!」


月菜は強がりながら胸を張り、湊の手をキュッと引っ張って坂道を登り始めた。


けれど、その指先がかすかに小刻みに震えているのを、湊は見逃さなかった。

それは寒さのせいではない。これから二人で迎える「その瞬間」への、抑えきれない緊張と期待が、彼女の可憐な全身を包み込んでいたからだ。


坂道を一歩登るごとに、二人の距離が、そして二人の心が、これまでにないほど深く重なり合っていく。


---


十五分ほど坂道を登り詰めると、視界が一気に開けた。


「……っ!!」


月菜の口から、感嘆の吐息が漏れ出た。


展望デッキの柵越しに広がっていたのは、言葉を失うほどに幻想的な夜景だった。


眼下には、宝石箱をひっくり返したかのような港町の明かり。波間に揺れる船の灯りと、ベイブリッジの幾何学的な光のアーチ。そして、遠くの街並みが織りなす光の地平線。空に浮かぶ満月と無数の星々が、まるで二人を祝福するかのように優しい光を注ぎ込んでいた。


公園内には人影もなく、聞こえてくるのは遠い波の音と、冬の風が樹木を揺らす静かな羽音だけ。


完璧な――二人だけの秘境(パラダイス)が、そこに完成していた。


「……すごい……っ。湊、こんなに素晴らしい場所……知ってたの?」


月菜は吸い寄せられるように展望デッキの木製の手すりへと歩み寄り、光の海を見下ろした。


「うん。……前回のデートが途中で終わっちゃった時から、ずっと調べてたんだ。もし、また月菜と二人でお出かけできるなら……絶対に、世界で一番綺麗な景色をプレゼントしたいって」


湊が隣に並び立ち、静かに語りかけると、月菜はハッと息を呑んで湊を見つめた。


「……私のために……? ずっと、考えてくれてたの……?」


「当たり前だよ。俺にとって、月菜の笑顔を見られるのが……何よりのご褒美なんだから」


湊のまっすぐな瞳と、偽りのない言葉。

それを正面から受け止めた月菜の頬が、夜景の光を受けてポッと紅潮した。彼女は胸元に手を当て、深く呼吸を整えると、そっと湊に向かって体を向け直した。


「……湊」


甘く、どこか切ない響きを含んだ声。


「……なぁに? 月菜」


月菜はそっと自分の両手を伸ばし、湊のコートのラペル(襟)をぎゅっと掴んだ。

息がかかるほどの至近距離。月菜の潤んだ瞳には、街のイルミネーションの光と、何より湊の姿だけが鮮明に映り込んでいた。


「私ね……今日、湊と過ごせて……心の底から幸せだった」


月菜の胸の奥から、溢れ出る想いが言葉となって溢れ出していく。


「期末テストの勉強を一緒にしてくれた時も、二人でお買い物に行った時も……今日、水族館で手を繋いで歩いた時も。……私、ずっと胸が苦しいくらい……温かくて、甘い気持ちでいっぱいだったの」


「月菜……」


「最初はお世話係として家に来てくれた湊だけど……今ではね、私にとって……誰よりも大切で、誰よりも特別な存在なの」


月菜の指先が、湊のコートを掴む力を強める。

その声はかすかに震えていたけれど、彼女の瞳には一切の迷いは存在しなかった。


「お世話係としてじゃない……『一人の男の子』としての湊が……私は――」


その時だった。


空気を切り裂くような、ヒュゥゥゥゥ……という甲高い音が、夜空に響き渡った。


「「――え?」」


二人が同時に見上げた瞬間。


ドンッ……!!


漆黒の冬空に、極彩色の光の花輪が大きく花開いた。


「「わぁ……っ!!」」


それは、テーマパークや港のクリスマスイベントが打ち上げた、聖夜限定の『クリスマス特別大花火』だった。


真冬の澄み渡る夜空に、赤、緑、金、そして銀色の光の結晶が、次々と打ち上げられていく。ドカン、ドカンと腹に響く重低音とともに、光の粒子が夜空から降り注ぎ、二人を色鮮やかな光の渦へと巻き込んでいく。


「すごい……! クリスマスに……花火が見られるなんて……っ!」


月菜は驚きに目を丸くしながらも、打ち上がる光の花火を見上げた。


その横顔は、夜空に咲く花火の光を受けて、まるで物語のヒロインのように可憐で、神秘的だった。


湊は息を呑み、言葉を忘れてその横顔を見つめた。


(……ああ、俺は……)


胸の奥で、熱い塊が爆発するように広がっていく。


お世話係として絢咲家に来てから、彼女のツンとした強がりも、妹たちを想う優しさも、自分に向けられる甘い照れ顔も、そのすべてを見つめてきた。


傷つけたくない、守りたい、ずっと隣で笑わせていたい――。

その想いが、もはや「お世話係」という枠組みを完全に踏み越えていることを、湊は確信していた。


花火の光が黄金色に弾け、二人のシルエットを鮮やかに浮かび上がらせる。


「……湊」


花火の音に消されないよう、月菜が少し背伸びをして、湊の耳元へと顔を近づけた。


「花火……すごく綺麗ね」


「……うん。本当に綺麗だ」


「でもね……私にとって、この花火よりも……夜景よりも……」


月菜は顔を離し、湊の瞳をまっすぐに見つめた。

その唇が、小さな吐息とともに、言葉を紡ぐ。


「……湊のほうが、ずっと……ずっと綺麗で、愛おしいわ」


「……っ!?」


不意打ちの甘い言葉に、今度は湊の心臓が跳ね上がった。


月菜は照れくさそうにフッと微笑むと、自分の額を、湊の胸元へとそっと押し当てた。


「……花火が終わったら……私、ちゃんと伝えるから」


湊の胸板越しに伝わる、月菜の小さな頭の重みと、規則正しい鼓動。


「私の……本当の気持ち。逃げずに……聞いてね?」


「……うん。絶対に……逃げないよ」


湊はそっと手を伸ばし、月菜の細い背中を、優しく包み込むように抱きしめた。


ドカン、と夜空で弾ける最高潮の花火。

光の雨が降り注ぐ中、二人はただお互いの体温を感じ合いながら、刻一刻と迫る「その時」を静かに待っていた。


告白の瞬間まで、あとわずか――。


聖なる夜の魔法が、二人の運命を今、最高の結末へと導こうとしていた。


---


【本日のお世話係メモ:家庭で役立つ豆知識 #39】

『冬の屋外デートの必需品!「使い捨てカイロ」の効果を10倍高める貼り場所』

冬の夜景観賞やイルミネーションデートで身体が冷え切ってしまう時は、カイロを貼る「ツボ(位置)」が運命を分けます!

① 一番効くのは「首の後ろ(大椎)」と「腰(命門)」!:首の根っこにある太い血管が通る場所と、腰の中央に貼ることで、温められた血液が全身を巡り、手足の先までポカポカになります。

② 足先が冷える時は「足の甲」に!:足裏よりも「足の甲」に貼る方が、血管が集中しているため靴の中全体の冷えを効率よく防ぐことができますよ!デートの前に仕込んでおきましょう!

最後までお読みいただきありがとうございました!


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