第15話:改ざんされた巻物と、液状化血呪の初披露
内部システムのサボタージュ(破壊工作)こそが、国家の利権を最も低コストで崩壊させる手法である。
王立魔術学院のプライベート実験室において、アストリッドはアレハンドロへの狂信的な服従フラグの元で駆動していた。主の支援によって確保した最高級の安定剤を使い、ランクSの狐人の少女は禁忌粉末の改良型である『ゴーストロット02』を精製した。この物質は物理威力を極大増幅させるが、その汚染された魔力を「偽りの光のオーラ」でカモフラージュするため、聖堂教会の検知魔術を完全に無効化する特性を持っていた。
同時刻、冒険者ギルドの地下室では、禁断症状に縛られた三人の新米スパイたちがアレハンドロの冷徹な命令を遂行していた。
低ランクのアーカイブへのアクセス権を悪用し、ジャンキーとなった剣士は聖遺物護送の公式任務の巻物を改ざんした。これにより、聖堂教会の『聖騎士』の精鋭部隊の巡回ルートは、裏社会が支配する北区画の行き止まりの路地裏へと直接書き換えられたのだ。
真夜中、濡れた石畳に馬蹄の音が重々しく響き渡った。
その部隊は、エリートの隊長率いる四人の聖堂教会の聖騎士たちだった。彼らは教会の祝福を受けた純銀のプレートアーマーに身を包み、傲慢な足取りで進軍していた。
【ターゲット鑑定:収穫される聖なる肉壁】:
・リーダー:聖騎士隊長。レベル35。傲慢、高い神聖耐性。
・部下:教会の衛兵×3。レベル31。反発純銀アーマー。
・状態:パッシブなルート改ざん状態(行き止まりへの侵入に気づいていない)。
「この区画は家畜と異教徒のクソの臭いが漂っていおるな」聖騎士隊長は吐き捨て、閉ざされた路地裏の暗がりに馬を止めた。「ギルドの巻物にはここが修道院への安全な補給路だと記されていたが。受付の役人どもが財務計算のミスでも犯したか。反転しろ」
馬が向きを変えるよりも早く、路地裏のすべての出口が闇のマナによるソニックウォールで完全に封鎖された。
最奥の影から、 anatomical な瞳孔を持ちながらも底なしの漆黒を湛えた瞳を持つアレハンドロが、灰色のチュニックを纏って悠然と姿を現した。彼の両脇には、レベル50の武器を構えたリラとエレナが実体化し、天井からはレンが影の爪を研ぎ澄ませて見下ろしている。
「我が情報ネットワークに計算ミスなどは存在せんよ、人間ども」アレハンドロは犯罪CEOの平坦な声で告げた。「お前たちの純銀アーマーと聖なるマナコアは、たった今、我が地下シンジケートの没収資産として登録された。リラ、エレナ、防衛ラインをパージしろ。トドメの処理は俺が行う」
「異端の尖り耳のゴミめ! 聖職者の行く手を阻むかッ!」隊長が激昂し、レベル35の神聖魔術を纏った大剣を引き抜いた。
その大虐殺は、工業的な怪力の証明だった。
リラが泥の中から鋼鉄の旋風のごとく跳躍した。レベル50の槍の一撃によるソニックブームで三人の下級聖騎士の神聖障壁を一瞬で粉砕し、純銀の胸当てをへこませて石壁へと叩きつけた。骨の砕ける音が響く。同時にエレナがロボットのような正確さで滑り込み、戦術的な瞬きの間に馬の腱を切り裂き、聖騎士たちの右腕をまとめて切断した。部隊全体のHPバーは一瞬で二十パーセント以下へとクラッシュした。
アーマーを破壊され、口から血を流した聖騎士隊長はその場に崩れ落ち、必死に神聖治癒の奇跡を詠唱しようと杖を光らせた。
「ひ、光が……我らを、守る……異端者め……」
「光の維持コストは、我が収益グラフに対して高すぎるのだ」アレハンドロは完全な静けさの中で一歩前へ出た。
彼は四肢を破壊された四人の聖騎士へと右手をかざし、前回のレベリングで解放したアクティブ魔術──中級『液状化の血呪』を発動した。
その死霊魔術のプロセスは、凄惨でありながら完璧に統制されていた。聖騎士たちの皮膚の下で血管が異常に膨れ上がり、昏い紫色に変色して腐食していく。純銀のアーマーの隙間から、聖職者どもの祝福された血が激しく沸騰し、彼らの内臓を生きたまま内側から液状化して溶かしていった。
聖騎士たちは、口から液状化した黒い血の奔流を吹き出しながら絶叫し、化学的壊死によって心臓が爆発する前に、一秒で全ステータスを30%低下させられた。
アレハンドロの網膜の中で、システムが黄金の脳汁ログを大爆発させた。
【システム通知:中堅ボスの圧倒的蹂躙完了】
・呪殺対象:聖騎士隊長【レベル35】、聖騎士【レベル31】×3
・スキル発動:『代償の魂喰らい(ソウルデヴァスター) - ランクEX』(聖なる陣営を破砕したことによる経験値ボーナス:+300%)
・レベルアップ!:レベル42 ➔ レベル44(筋肉質量およびマナ密度の極大増幅を検知)
・死霊魔術出力:+50(永続加算)
・燃料獲得:インベントリ内ストック魂:+4 (特級魂)
紫と漆黒の colosal(巨万)なマナの柱が路地裏を包み込み、アレハンドロの衣服を激しく揺らした。レベル44となった彼の圧力は、周囲の空間を歪めるほどの重力を放っていた。聖堂教会の精鋭部隊を相手に、ノーダメージでの完全パージを完了したのだ。
レンが天井から音もなく舞い降り、アレハンドロの革靴の前に跪いた。死体から引きちぎってきた教会の紋章指輪を、戦利品として両手で掲げている。
「よくやった、レン」アレハンドロは金の宝飾品をインベントリに収めた。「エレナ、この汚染された聖職者の肉体を馬車に積み込め。地下室へ運ぶんだ。アストリッドがゴーストロット02のテストを行うための高ランクの原材料が必要だからな。リラ、石畳の血を掃除しろ」
アレハンドロは、聖堂教会の尖塔が夜空に輝く王都の中央区画を見つめた。第三フェーズの破壊工作は百パーセントの大成功だった。
「冒険者ギルドと教会は、明日になれば消えた部隊を捜索し始めるだろうな」アレハンドロはバーサーカーの牙を覗かせて容赦なく笑んだ。「奴らは森の魔物を疑うだろう……。我が黒座の迷宮の元ボスが、奴らの聖騎士を燃料に変え、己の王都の地下室から魔術学院を崩壊させる資金にしているとも知らずにな。明日の朝、アストリッドが学院に我が新しい毒を流す。……聖堂教会には、次の監査の代償をその命で支払わせてやるさ」




