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慈善事業じゃねぇんだよ――それでも来る  作者: ZERO POINT
第1章 他人の重力

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第4話 橋本流SNS防御術

 今日も通知が鳴る。


「広重、通知来てるよ」


 橋本が言った。


「無視しよう」


 広重は関わりたくないとばかりに答えた。


「なんで?」


 そんなもの簡単だ。


 どうせろくでもないことしか来ない。


 昨日来たのは、


 SNSで男の子? 女の子?


 は?


 意味がわからない。


 どこ住んでるの?


 意味がわからない。


 そんな話、載せてないだろう。


 俺のSNSは、


 今日の空。


 きれいだった。


 今日の空。


 雨降ってた。


 そういうやつだ。


 ひたすら空。


 何故それが……こうなる?


 わからない。


 空の写真しか上げてないだろう。


 待て待て待て。


 どこからそうなるんだ。


 しかも、どーん。


 写真。


 何故?


 俺はどうすればいいんだ。


 普通に、


 空綺麗でした。


 ならわかる。


 どこに住んでるんですか。


 空ネタならまだわかる。


 だが何故写真なんだ。


 この写真送信がまた謎写真だった。


 何故。


 何故俺はこんなものを見せられている。


 待て待て待て。


 この人、大丈夫か?


 知らない人にこんなの送っちゃ駄目だろう。


 危険だって。


 悪い人ならどうするんだよ。


 困る。


 さらに空の写真に感想が来た。


 この角度は違うと思います。


 え?


 何故そうなる?


 適当に撮って俺が満足した写真なのだが?


 好きで撮ってるんだからいいじゃないか。


 でもさ。


 コメントの人も違う角度の方が良いと思ったから言ってくれたんだよな。


 わかる。


 わかるぞ。


 違う角度から撮ったら最高かもしれない。


 編集も確かにその方が良い。


 ありがとう。


 でも受け取った瞬間は衝撃だったぞ?


 びっくりした。


 俺はそれを求めてない。


 ただ平和に空の写真を見てもらって満足してるんだ。


 ハートくれたら、


 やった。


 そう思うだけで。


 ごめん。


 俺、そこまで受け取れる広い器じゃないんだ。


「橋本、俺小さい人間かもしれん」


「いや、今に始まってないだろ?」


 橋本が即答した。


「お前そんな感じじゃん?」


「だよな」


 広重は頷いた。


「通知来ると見るじゃん」


「まあな」


「だんだん怖くなってきてさ」


「今度は何言ってくるんだろうって思っちゃうんだよ」


「この前も助けてーみたいなの来たし」


「最近ちょっと風邪ひいて体調不良だったし」


 広重が言った。


「ああ、それな」


 橋本が頷く。


「天気おかしいもんな」


「それ」


「俺もやられた」


 橋本は真顔だった。


「でもさ、通知って結構ダメージ来ない?」


「来る」


「切っとけよ」


「そうしようかな」


「皆に悪意があるとは思わないんだけどさ」


 広重は少し考えた。


「全部はお腹いっぱいなんだよ」


「わかる」


 橋本は即答した。


「俺もお腹いっぱいになったからムカついてSNSやめた」


「さすが橋本」


「切り方わからないなら教えてやるよ」


「俺プロだから」


「すぐ切るぞ」


「さすが橋本! できる男だ!」


「しょっちゅうやめてるよな」


 広重は感動していた。


「まあな」


 橋本は誇らしげだった。


「どれ見せてみろ」


「よろしくー」


「感想も見てみたい」


「いいぞ。これだ」


 橋本はしばらく黙った。


 絶句。


「お前……」


「何だ」


「よくここまで耐えたな」


 橋本は遠い目をした。


「俺なら三秒でアウトだ」


「そんなにか」


「そんなにだ」


 橋本は真顔だった。


「早く切ろうぜ」


「だから俺もアウトー!!ってなったわ」


 橋本は勢いよく立ち上がった。


「よし」


「橋本流SNS防御術を教えてやる」


「何だそれ」


 橋本流SNS防御術


 第一式


 光ミュートON


「まず気配を消す」


「忍者か」


 通知ピコン。


 広重の顔色が変わった。


「来た」


「何がだ」


「通知だ」


「光ミュートON」


 橋本が即座に言った。


「早い」


「先手必勝だ」


「まだ見てないぞ」


「だからだ」


 橋本は胸を張った。


「通知は見る前が一番危険なんだ」


「そんな危険生物みたいに言うな」


「油断するな」


 橋本は真顔だった。


「通知は増殖する」


「しない」


「する」


「しない」


 第二式


 絶断非表示


「視界に入れない」


「だんだん物騒になってきたな」


 第三式


 鉄壁ブロック


「ここからが本番だ」


「お前の本番早くないか?」


 秘儀


 光アカウント休眠


「眠れ……」


「何と戦ってるんだ」


「SNSだ」


「怖いな」


 最大秘儀


 光アカウント完全滅亡


 広重が固まった。


「待て」


「何だ」


「完全滅亡って何だ」


「消滅だ」


「聞けばわかる」


「全てを断つ」


 橋本は静かに目を閉じた。


「SNSよ……さらばだ」


「いや、お前来週には戻るだろ」


「……」


「戻るだろ」


「戻る」


「戻るんかい」


 橋本は遠い目をした。


「人は弱い」


「お前だけだ」


「違う」


 橋本は首を振る。


「皆、一度は光アカウント完全滅亡に憧れる」


「そんなことはない」


「ある」


「ない」


「ある」


「ない」


「で、今どこなんだ?」


 広重が聞いた。


 橋本は胸を張った。


「第二式」


「絶断非表示か」


「うむ」


「お前、最大秘儀まで言っておいて第二式なのか」


「技は多い方が格好いいだろ」


「さすが橋本」


 広重は諦めた。


「橋本」


「何だ」


「お前、全部逃げてるだけじゃないか?」


 橋本は腕を組んだ。


「違う」


「防御だ」


「守りの技術だ」


「同じだろ」


「違う」


 橋本は遠くを見る。


「生存戦略だ」


「言い方だけ格好いいな」


 設定完了。


 さすが、できる男だ。


「まあさ」


 橋本が言った。


「相手も悪気があるわけじゃないんだろ」


「それそれ」


「きっと良い人なんだよ」


「俺らには合わないだけだ」


「だな」


 二人は頷いた。


「では」


 橋本が手を掲げる。


「光ブロックで」


「「光ブローック!!」」


 ファミレスで二人の男が謎の儀式をしていた。


 ああ、すっきりした。


読んでいただきありがとうございます。


今回は広重と橋本のSNS防御回でした。


気付いたら橋本が流派を作っていました。


なお、最大秘儀までありますが、本人は第二式を使っているそうです。


「光ブロック」


便利な言葉ですね。


それでは、また次回お会いしましょう。


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