結末6【静】
私は静。
両親は街の基幹病院を経営している。一人娘。
将来の夢は両親の後を継ぐのは勿論だけど……私の興味は再生医療分野。その専門家を目指しているわ。
私が目指す事となったきっかけは一人の女の子との出会い。出会った当初、彼女は蒼白い顔をして震えていたわ。
重い病気で心臓の手術が必要で、彼女は怖くて震えていたの。
私は病院の関係者。そして、彼女は患者さん。
ほっとけないと思った私は震える彼女に声をかけたわ。
確か……お母さん達が話していた『カウンセリング?』は私がやる。お父さんとお母さんのお手伝い。
私は毎日。彼女に会って沢山お話をしたわ。
日に日に笑う様になっていく女の子に彼女のお父さんとお母さんは嬉しそうに私にお礼を言ってくれた。すごく嬉しかった。
そして、女の子の手術が翌日に控えたある日。彼女は病院から逃げ出してしまったの。
みんな慌てて付近を探してまわったけれども見付からなかった。
「なっちゃん……」
彼女が逃げ出すきっかけとなった出来事は、入院していた同室のお婆さんが昨日亡くなってしまったこと……だろう。
半日後。なっちゃんは自分で病院に帰ってきた。
まだ少し震えてはいたけれどその表情は明るく変わり、何がなんでも生きるという強い意志が感じられた。
その変化には大人達も驚き安堵する程のものであった。
「…………」
私はこの時、なっちゃんをここまで変えたであろう存在に尊敬と小さな嫉妬を覚えたのだった。
手術前日の逃亡劇の影響で、手術の為に再検査が必要となり手術日程がズレてしまったが、手術自体は成功となった。
それから時は流れていき、私は高校生となった。女の子とは今も親交があり、私達は同じ学校に通っいる。
高校に入学して、私は直ぐに悟った。
なっちゃんの行動――しぐさや視線の熱量からあの日、手術に怯え死と言うワードに絶望していた彼女を変えたであろう存在が誰であるかを……
それはひと学年上の少年であった。
調べると彼には幼馴染みの綺麗な彼女がいた。
なっちゃんが楽しそうに彼と話をする度に親友の秘めた叶わぬ恋に切なくなる私。
そんな思いを抱きながら過ごすこと一年半。ソレは起こった。
なっちゃんの憧れの人――優太さんが彼女と別れたのだ。それも彼女の裏切りにより……
私はこのチャンスになっちゃんと優太さんをくっつけようと動いたわ。
そして、紆余曲折の末、二人は晴れて恋人同士となった。
本当にいろいろとあった高校生活だったわね。
特になっちゃんが【KOYO-】だったと知った時は気絶しそうになったことはいい思い出よね。
幼稚園から高校まで同じ道を歩いて来た私達だったけど大学からは別の道を歩いて行く事となった。
私は両親の後を継ぐ為に……そして夢の為に医大へと進んだ。
私の夢……それは親友であるなっちゃんが幼い頃からずっと手術痕に苦しんでいる事を目の当たりにしてきていつの日かその苦しみから解放してあげたいそう思う様になったからだ。
そんな私が出会ったものが再生医療である。
医大に進み私は運命的な出会う。将来のパートナーとなる人。
彼も再生医療について学んでいた。
そして、性格も趣味も何から何まで共感出来ると言うか私ととにかく馬があったわ。
彼が再生医療を学ぶ理由は私と同じで、事故で片腕を失った友達の為、研究者の道を目指していた。
なんと彼も【KOYO-】時代からのファンであった。私達はなっちゃんの事で盛り上がり意気投合したわ。
話をする中で私を驚かせた事は、初めての【KOYO-】の生放送トークイベントで彼のコメントがなっちゃんの目に止まり読まれた事。読まれた事がモチベーションとなり絶望的な偏差値を覆して医大に居ると彼は本当に嬉しそうに私に語ったのだった。
私達は今日も大学のキャンパスで【スノーフレーク】の話題で盛り上がる。
「レポート終わったら、一緒にスノーフレークのライブに行きたいわね」
楽しそうに笑う彼の横顔を見つめ、私は彼をライブに誘った。
〖結末5 【静】〗を最後までお読みいただきありがとうございます。
さて、次はいよいよ【すず】とプラスαの話となります。
昨年、聖女の婚約者という新作短編を公開しました。
これは何も始まらないお話となっています。元々は全く違う話を考えていたのですが力尽きて何も始まらずに終わりました。




