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出発進行! 沼尻鉄道復活記  作者: 七日町糸
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第二十八章 森の中のダルマ

「ふう・・・・・・・・・・・随分歩いたね・・・・・・・・・」

 わたし-國分大和は額に浮かんだ汗を拭いて周りを見渡す。そして、足元を見た。

「それにしても、何なんだろう、この線路・・・・・・・・・・・・」

 そう、わたしの足元に伸びていたのは土に半分うずまり、忘れ去られようとしている線路だった。

「昔走ってた森林鉄道りんてつの跡?」

 そう呟いて、首を縦に振る。経路上はこの辺りのはずだし、林鉄というのは本線以外に末端の伐採用軌道とかもあったりするはずだから、ここにあってもおかしくはない。

「少したどってみますか・・・・・・・・・」

 わたしはぼそりとつぶやくと、線路をたどってさらに奥へと歩き出した。

















「おーい!國分―?いるなら返事しろ!この猪突猛進の馬鹿野郎が―!」

「大和―!?どこにいるのー?」

 みんなの声が森の中に響く。

 わたし―木地小屋栞奈は同じように声を上げると、隣にいる真美を見た。

「こうなったらあの子を出すしかないね・・・・・・・・・・・・」

 真美がぼそりとつぶやく。

「あの子?」

 わたしが聞くと、真美はうなずいた。

「一応連れてきておいたんだ。ピロ!来い!」

 真美が叫ぶ。

 ガサガサガサ・・・・・・パキッ

 何かが近づいてくる音がした。

 ガサガサガサ・・・・・ひょこっ

 藪が揺れて、一頭の獣が顔を出す。ピンと立った二つの耳、片方が少し欠けている。人懐っこそうな目と精悍な輪郭。

「よーしよしよし!いい子いい子」

 真美がその頭をなでる。それは、まぎれもないシェパード犬だった。

「紹介します!わたしの愛犬、ジャーマンシェパードドッグのピロです!警察犬と同じ訓練をしてるんだよ!」

 真美が誇らしげに紹介する。

「そうか!コイツに國分の足跡を追わせるんだな!完全に理解した」

 翔悟がポンと手を打って言う。

「そうだよ!カンカン。何か大和の臭いがついたものもってない?」

「え?」

 わたしは慌ててカバンとポケットの中を探る。

「あった!大和から借りたハンカチ!」

「ちょっと借りるね~」

 真美はハンカチをひょいっと取ると、ピロの鼻先に持って行って匂いをかがせる。十分にかがせると、遠くを指さした。

「ピロ!探せっ!」

「わふっ!」

 ピロが鼻先を地面につけるようにして進み始める。わたしたちはその後ろをついていった。









 ザッ、ザッ・・・・・・・・・・・・・・

 わたし-國分大和は打ち捨てられた線路の上をどこまでも歩いて行った。線路は意外に長く続いている。

「それにしても、結構歩いたね・・・・・・・・」

 そろそろ足も疲れてきたし、少し休みたいところ。

「・・・・・・あれ?」

 いったん足を止めたわたしは周りを見渡す。

「ここ、どこ?」

 いつの間にかかなりの奥山まで来てしまったらしい。打ち捨てられた線路以外は人間の痕跡が皆無だった。

 空を見上げると、まだ太陽は高いからちょうどお昼ごろみたいだ。

「それにしても、驚くほど人の気配がしないね・・・・・・」

 周りを見渡すと、線路の脇に何かが打ち捨てられているのが見えた。いや、「打ち捨てられている」というよりは「据えられている」という方がいいかもしれない。

「これは、廃車体?」

 さらに近づいてみる。どうやら客車らしい。木造の車体は一部が腐食し始めていたものの比較的良好な状態。足回りは外されて地面に直接置かれているようだった。

「よくぞ残っていたものだね。この風雪に耐えて・・・・・・・・」

 今度しっかりした装備を持ってきて引き上げなくちゃ。この山の持ち主はわたしのおじいちゃんだから何をしてもいい。

 そして、一番重要なことに気づいた。

「わたし・・・・・・・・・・・」

 今どこにいるのかわからないんだった・・・・・・・・・・

「はあ・・・・・・・・」

 どうしようかな・・・・・・・完全に自業自得なわけだけど。

「確か、山で迷子になったときは・・・・・・・・・・・」

 昔おじいちゃんに言われたことを思い出す。

「・・・・・・・・・・動かずにそこで待ってるんだったね」

 地面に座り込むと、客車の壁に背中を持たせかけた。顔を上げると、夏の青空が見える。

「いい天気だね・・・・・・」

 わたしはそのまま目をつぶると、夢の世界に落ちていった。


真美「真美と~!」

栞奈「栞奈の」

二人『鉄道ラジオ~!』


真美「今回、大和が猪突猛進な馬鹿をしでかしてレールの後を歩いて行ってしまいます」

栞奈「ほんとに大和は・・・・・・・」

真美「実際にこんな風なのがあるかといいますと、確率的には0に等しいです!」

栞奈「そもそも線路跡をたどるような人間が大和以外にいるとは思えません」

真美「でも、本文でも触れられてるように林鉄っていうのは木材搬出用の鉄道だから、木材の切り出し現場まで簡易的な軌道を敷くこともあったんだよね」

栞奈「大和が見つけたのはその簡易軌道というわけね」

真美「じゃあ、一通り説明が終わったところで大和を探しに行ってきますか・・・・・・」(「やれやれ」とでも言いたげな表情)

栞奈「いきましょう・・・・・・・・」

二人、スタジオを出ていった。

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