あなたはいい人です
後ろにあるナミの目にはぼくはどう映るのか?今、このナミにとってはぼくが唯一の守り神かも知らない。
ぼくはまた「命の重さ」を感じている。ハスタがなぜこんな地獄図にまた戻って来たのか薄々分かる気がした。
ぼくを含めて罪深い人たちがお互い殺し合って、くそったれのゲームを続けばいいじゃん!ここでアイディを奪うためには命をかけるアホは外でも山ほどいるはずだ!
何故、子供をここに入るのかよ。これもゲームの一部なのかよ!
この建物には罪ない白い羊の血も流れている。ぼくもそろそろその事実が堪らなくなった。しかし、主催側にどんなに憎悪を持っていても無駄だ。酒呑童子に殺されないのも偉い「ゴール」になるほどだ。
酒呑童子。
酒呑童子を思い出したら、また憎悪より恐怖がぼくを支配した。さっき酒呑童子を見た瞬間、全身の血が凍っているような感覚だった。あんな物に・・・。
あ、懐中電灯と熱カメラさえ消したまま道を歩いているせいが、余計に周辺の音がよく聞こえる。これ人の足音だ。ぼくは銃を狙って、静かに無線機のキーを押して静かに言った。
「森、森。」
返事はない。後ろからはナミがぼくの後ろに付いた。おい、このままじゃ戦えないんだよ。そんな話が喉まで出たが言わなかった。ここでは確認すぐ方法は一つ敷かない。
ぼくは向うに大声で叫ぶながら熱カメラのスイッチに手を上げた。
「トマトォ!」
今度の返事はすぐ戻った。
「お茶ァ!」
こんなバカな。熱カメラには森と女子高生の形態が現れた。ぼくは銃をそこに向けてため息をつい
た。
「ナミを探した。」
「ほ、本当か!」
「しっ、静かにしろ。また、別の敵がいるかも知らない。」
「何人が分からないか、一人は俺たちが殺した。」
「俺たち?」
ちらと見たら、森もぼくように全身に血だらけだった。あのキャンピング斧で激戦をしたようだ。
「森、無線機はなぜ消したのか?」
「それが・・・・。やつは無線機の音と画面の光を見て襲ってきて・・・。」
ぼくはやっと森の後ろには女子高生だけいないと気づいた。
「あの方は?まさか。おばさんは殺されたのか?」
「申し訳ない。それが、やつが上から襲ってきて一撃に。」
「・・・・・。」
「もちろん、復讐はした。俺がすぐやつを殺した。」
まさか、あの通信で襲われたのか?やつらは上から襲って来るって無線で位置を確認して陽動作戦を使ったのかよ。やつらのヘッドに見えるやつも微かな熱カメラの光を見て襲撃をかけたから間違いないだろう。
なんかハスタ組が一人ずつ中隊に殺される光景が爆発するように頭に思い出した。こんなの!いやだ!二度とはやだよ!
「あの人は今どこにいる?」
「森田。もう死んだよ。刃物に首を切られて。俺を信じてないのか?」
「当たり前だ。」
女子高生が起った顔でぼくに文句を言う気勢だったか、森が彼女をやめさせた。
「森、彼女のアイディを回収したのか?」
森はすぐ死んだ人のアイディを見せた。そこにはぼくを手伝って死んだ中国人と同じく、息子に見える子と一緒に撮った写真があった。
ぼくは満ちている涙をやっと我慢した。この人も死ぬ瞬間、写真の息子を思ったのか?
分からない。死んだ人に問う方法なんかないから。
ただ、死んだ人の悲しみだけがぼくのこころに積っているようだ。
ぼくはそのアイディをやつの手から引ったくって、片手で合掌をした。ぼくの仲間ではないし、話さえろくにやったかったのに、ぼくは彼女の悲しみを感じている。
悔しかっただろう。こんだどころで息子の顔さえ見る事が出来なくて。そして、ぼくは戦術ベルトのアイディの束にこの人のアイディまで合わせた。
「も、森田、まさか君もアイディを稼いでいるのか!」
森もアイディの正体について分かっているのか?あ、中隊の残党と戦ったと言ったよな。女子高生も森もアイディを隠してぼくからうろうろしながら逃げようとした。
「バカ。所詮、てめえはこの建物で死ぬんだよ。誰よりぼくの方が出る確率が高いんだ。」
「そ、それがどうしたのよ。」
女子高生が石を握ってぼくに言った。太田の「マイダス」アイディは目が眩むほどの数字が書いている。多分、森のアイディも二つじゃなかったら同じにすごい額数だろう。やつも建設企業の息子で二男だったよな?
そういえば、そんな偉い家門じゃなかったらD4の一員に入れる訳がない。
「へえ、恐ろしいのか?森秀二さん?てめえを殺して、そのちっぽけなアイディを奪われる事を?」
「も、森田。」
もう銃口はやつに向けていた。
「ぷははははははは。バカみたい。」
ぼくは笑ったあと、アイディが入っているポケットを軽く叩いて森を睨んだ。
「遺族に伝えるつもりだ。故人がどうやって生きて、どうやって殺されたのか。」
「そ、それは。」
「黒い羊と一緒にするな。ぼくにはこんなアイディなんか一つもいらない。ただ、人たちが生きていた証拠として持っているだけだ。」
それはちょっとだけウソだ。ぼくのポケットには猟師のアイディも入っている。もちろん、そのアイディはいざとなったら囮として使う用度だからちょっと意味は違うけど。
「とにかく、ナミ、君の仲間に一緒にいるのよ。」
しかし、ナミはぼくの背でゼミ見たいに付いている。
「おい、森に戻れよ。やつなら君をよく守るはずだ。」
そして、女子高生と森が手を伸ばしてナミを呼んだ。
「ナミ、こっちにおいで。」
「そう、やつより私たちと一緒にいる方がいいよ。」
ナミは首を横に振るだけで動かなかった。よほどの意地っ張りだな。
「ぼくはいつか分かれる人だ。森とあのマリアと一緒にいる方がいい。」
すごく矛盾している話だ。ぼくはいつかは森を殺すつもりで結局マリア一人残るはずだ。
「あなたは、わ、悪い人じゃないです。いい人ですよ。」
「何?」
ハスタが言ってくれた言葉だった。いい人。ぼくが?
「なぜ、ぼくがいい人だ。ぼくはあの森を殺すつもりだ。そして、人もたくさん殺した。」
「そんなのわからないよ。私を探してくれただから。」
悪い。
いい。
それをそんなに簡単に判断する事が出来るのかな?以前、「長」の両面性について考えた時も同じだ。長はぼくにはいい人だったけど、長が殺した人には当たり前に悪人だ。
同じく、ぼくが命を奪った人たちの家族はぼくをどう思うのかな?仕方はなかったけど、その人たちの中でも「いい人」はいなかったのか?
エビスの殺しをはじめとして19層の戦闘まで、ぼくは立派な人殺しになった。そんな人殺しもいい人になれるのかな?今のぼくは人を殺して罪悪感さえ感じていない。
分からない。
本当に分からない。
この建物ではぼくは考える葦に過ぎない。状況によってこっちに揺れたりそっちに揺れたりする軟弱な葦。
ぼくはナミの頭を撫でた後ため息をついた。よりによって殺したい森と一緒にいる人何で、ぼくの計画はどんどん手はずが狂って行く。
計画?
太田を殺して、森も殺す。まあ、ここに森がいるのにこれでいいのか?森はいつでも殺す事ができる。森の方はそれをちょっと忘れた感じだが、ぼくにはやつを殺したいという憎悪がまた猛烈に燃えている。
「ナミ、ならちょっとだけここで待ってろ。ロッカーの上で偵察した後下に降りるから。」
「・・・・。」
「心配しなくてもいい。一緒に出るんだ。約束するから。」
ナミはやむことなくぼくの服を放した。ぼくは開いているロッカーを梯子として上に簡単に上った。ロッカーの上ではへっぴり腰で動く事が出来る空間があった。パルクールやつよくもこんな空間であんなに動いたな。
ぼくはロッカーの迷路が終わる時点を熱カメラで映った。最初ではカメラが壊れたないかと思った。熱カメラで見たら出口の方がまるで地獄ように赤く見える。
確かにこのカメラで「赤」で表示されている物は熱い物だろう。扉の枠も赤いだし、地獄門ように赤い空気が火山のように手口から出てくる。
「サウナかよ。」
ぼくが言って自分がビックリした。あ、確かに銭湯を存在を忘れてた。このロッカーも大きいな温泉施設や銭湯で使う物だったよな。
肉眼で見たら、銭湯の入り口が薄々と見えた。高さ3メートルのガラスの扉とその周辺には、ギリシャ風のビーナスの彫刻と無駄に派手な彫刻品が装飾されている。
なんか、銭湯じゃなくて神殿の前だったとしても信じるほどだ。余計に装飾されていてむしろ下品に見える。
「銭湯か。ロッカーがこんな規模なら、銭湯の中も油断は出来ない。」
ぼくは一旦ロッカーの上から降りて森たちがいる場所に戻った。
「森田。どうだ?ま、また敵がいるのか?」
「分からない。」
森は銃に付けている熱カメラをじっと見つめた。ぼくはやつの視線を無視して話を続いた。
「前は銭湯だ。」
「銭湯だと?」
マリアが口を挟んでぼくに問った。彼女もあっちこっち血が飛び散って酷い有り様だ。
「マリア、シャワーとかする時間はない。」
「だ、だって。」
「酒呑童子。鬼がここまで来た。ここでウロウロしたら、全部殺されて食われる。」
鬼に食われるって言葉で森までギクリとした。
「なら、決まったんだろう。なるべく早く下におりるんだ。」
ぼくはまたロッカーの上に上ろうとした。今度はマリアも慌ててぼくを見上げて放した。
「おい、あんたどこに行く気だよ。」
「心配するな。上で援護するから。やなら、てめえが上で道を案内する気が?」
「べ、別に。」
「ナミをじゃんとかばえ。」
「そ、そんなの言わなくても分かっている。」
マリアはナミと手を繋いでぼくを見上げた。森は彼女らの前に立ってぼくの指示を待っていた。
その後は退屈な迷路の道探しゲームだった。遊園地でこのようなゲームがあったけ?時間内に各所に
あるスタンプを押してもらって出発点で戻ったら商品とか貰うゲーム。もちろん、このロッカーの迷路の終わりでは賞品なんか何もないけれど。
ぼくはビーナスの彫刻の下で銭湯の中を見つめた。中には滝ように大きなライオンの彫刻でお湯が落ちていて音さえよく聞こえない。多分、この滝が防音装置になるのかも知らない。
ならば、銃声はこの仲間では聞こえなかったのか?うむ、確信は出来ない。風呂で銃を撃つ経験はないから。
しかし、本当の問題はやかましい滝の音じゃなかった。
「くっそ!水蒸気で何も見えない!」
森はぼくの話がよく聞こえないのでボンヤリしてぼくを見つめていた。ぼくはやつらに話すのを諦めて銭湯のなかを見つめた。
熱カメラで見たらうすうす形態は見えるけど、肉眼で見る事とそんなに差異はない。ぼくはコンビにで持ってきたビニル袋で熱カメラと無線機を入れた。
「森田なにをしている!」
「見れば分からないのか!こんな湿気なら電子機器には致命的だ!」
ぼくはビニル袋を森にを渡せてやつが持っている無線機を指さした。森はぼくの話を分かってきて、ぼくが言う通りにした。
「いざという時があるかも知らないから。」
森は首を振って無線機をビニル袋に入れた。中に一歩入っても湿気でまつげまで露ガ結ぶほどだ。瞬きをしたら泣くように露が落ちた。視界はだった1メートルもよく見えない。




