19 「究極限界巨大戦闘」
果てしなき巨大バトル
ルビィはやってのけた。
俺の要求以上に、遥か上手くタイタンを驚かせた。
俺はてっきりロンガロンガを狙うと思っていたが、
考えてみればどちらでも良かったのだ。
しかも竜言語という究極レベルの自己暗示を駆使して、
相手を遥かに凌ぐ大きさまで到達してのけた。
「小さいわね… あんた達。」
ルビィがとことん見下して、やや声色を低めて言い放つ。
完璧な役者だ。
大仰に息を吸い込んでルビードラゴンが炎のブレスをタイタンに向ける。
意図的に無造作に、そして適当に。
避けたくば避けろ、弱虫め。
そう行動で示しているのだ。
タイタンは慌てて炎の射線上から逃げ出す。
精霊魔王ロンガロンガがタイタンを叱責してるようだが、
体全体が炎に巻かれるような所に立っていられる者は居ないだろうよ。
しかし1つだけ小さな誤算があった。
俺とドラゴンの相対的なサイズが変化していない。
つまり、なぜか俺まで大きくなっているのだ…
なんでだ?
考えてみればずっと俺とルビィの身長差は変わってなかった。
自分でも知らない内に巨大化してたのだ。
今の俺の身長は1kmくらいかな…このまま地球に帰ったらギネスに載れるね。
帰った瞬間、地球の物理法則で全身発火しつつ骨が砕けて即死するけど。
そう余計な事を考えている間にも、ルビィがタイタンをブレスで追い回したせいで
大きさが膨らみ続けている。
タイタンの大きさから想定して、ルビィの身長は60kmにはなっているだろう。
あまり差がつきすぎるのも、大きすぎるのも不味い。
何せ景色がもう地上じゃない。
空が青くない。
青いのはここから見る地表のほうだ…
大きさに伴って飛んでいる事も換算すれば、
ここは地表から80kmか90kmか…
地球ならもう大気圏を突破するほどの高度だ。
本来なら生身で生存できる環境じゃない。
だが熱くも寒くも無く、呼吸もできるし気圧もそれほど変っていない。
やはり現在のソーサリスは奴の、ロンガロンガの世界観に侵食されているのだ。
精霊世界の法則を自分の都合良いように作り変え、奴の世界へと変化しているに違いない。
おっとルビィを止めねば
「ルビィ! そこまでだ! これ以上大きくなるのは逆に危険だ!」
「わかったわ! あんた達、海がこう言ってるから止めてあげる。
これ以上の抵抗は無意味よ! もう降参なさいな!」
今、ソーサリスの地表がどうなってるか、想像するのが怖いよ。
ルビードラゴンの羽ばたきから出る風で
地表は人が軽く吹き飛ぶほどの強風に違いない。
そしてさっきまで吐いていたブレスの熱が…
この点では、ロンガロンガの作り出した擬似世界状態で有る事に感謝しなければ。
全長200kmの生物なんて、いるだけで大災害なのだからなあ…
ともあれ、予想を遥かに超えたルビィを労おう。
これなら勝負あっただろう。
「やったな、ルビィ。 ここまで上手くやってくれるとは思わなかったよ。」
「任せなさいな! ふっ、二人の愛のパワーだからね!」
そっぽを向いて照れながら言い放つ。
ご丁寧にルビードラゴンの頭も同じくそっぽを向いてる。
恥ずかしがるなら言わなきゃいいのに。
カチナが騎竜具から出てきてルビィを応援している。
超巨大化とか竜言語とか、もっと見るべき場所があると思うんだけど
やはり女の子にとっては何よりも恋愛事が一番なんですかね。
カチナが俺の肩を揺さぶってる。
何なん、どうしたん。
「さあ海さん、ルビィさんと勝利のキスとハグですよ!
大勝利を収めて大空の上で感動的なキス! あこがれますねー!」
「いやー…今、これ、多分ソーサリスの全土に映像送られてるからね。」
「だからいいんじゃないですか!
それにさっきのキスだってもう世界中に見られてましたよ?」
「本当に!?」
「ええ、私横目で街の上にお二人の姿が出てるの見ましたから。」
「マジか…世界中にキスシーンを見られてたなんて…死にたい。」
カチナが頭の上からプシュンプシュンと湯気を出して怒ってる。
その手の事は自分でやってくださいよ。
それに…
「それに、どうやらロンガロンガは、まだ諦めて無いようだぞ。」
降参するでも逃げるでも無い。
もう距離が遠すぎるため、肩の上にいるロンガロンガが
何をしてるのかが良く見えない。
ルビィに近づいてもらって、再度降伏勧告をしよう。
と、思った瞬間にロンガロンガの高笑いが響いた。
「クケェーッ! まだです! まだですよぉ~!
俺様にとって、大きくなるなんて簡単なんですからネェ~ッ!」
宣言どおりにロンガロンガとタイタンのサイズがまた大きくなり、
再びルビードラゴンと肩を並べるほどになった。
地上の人がこの戦いを見守っている限り、
奴はそれを通していくらでも世界を恐怖に陥れることが出来るのか。
だが、奴は肩で息をし始めている。
やはり巨大化の術そのものは消耗が激しいのだろう。
「もうやめろ! いくら巨大化してもドラゴンの炎には勝てないぞ!」
「黙れ! 黙れ黙れ黙れッ!
ならば更に巨大化してその炎を小さく感じるだけの事ですヨッ!」
ロンガロンガが再び巨大化のためのスピリットダンスを踊り始めた。
タイタンの身長がまたもニョキニョキと伸びていく…!
ルビードラゴンの何倍になったか、もはや計測するのもバカらしいが
高度を変えてない俺達の前にタイタンの膝があるという事はおよそ4倍か5倍
身長500kmに達した頃か…
「海! また大きくなったわよ!」
「ああ、そうだな。」
俺は奴に憐れみを感じていた。
なぜそんなに大きさだけが正義だと、こだわって決め付けているんだ…
「おい! ロンガロンガ! 大丈夫か!?」
「ノミ虫のくせに俺様の心配するとは、何たる無礼ですカッ!」
「いやー。 お前、知ってるか? 空気ってのは重さがあるんだぞ。」
「何を当たり前の事をッ! ノミ虫に教わるまでもありませんネェ~!」
「じゃあ上に行くほど空気は薄くなるってのも知ってるよな。
俺達は人間とは違う竜種だから平気だが、
その大きさだと、そろそろ呼吸ができなくなるぞ。」
「――ッ!」
タイタンが喉元を押え、苦しさに喘ぐ。
ハッタリ成功だ。
ここはソーサリス、地球と同じ理屈が通用するはずがない。
俺は奴らに思い込みという形で、俺の常識を無理矢理植え付けてやったのだ。
今ソーサリスの世界は、ロンガロンガが作り出した精神的世界に侵食されている。
ではその状態で地表の遥か上、未知の世界に足を踏み入れた時に
そこはどうなっているのか?
まずはロンガロンガの思い込みが優先され、そこは地上と同じ様な環境になる。
だが俺が上空に行くほど空気が薄いという常識を提示してそれを支配した。
その常識の延長線上で、空気はいずれ無くなるというルールで奴の世界を縛ったのだ。
だから突然タイタンが苦しみだしたのだ。
実際のソーサリスの世界法則、物理法則はやはり二の次になっていた。
ここは既に精神力が全てを決めるという
過度にスピリチュアルな世界観に「汚染」されている状態だ。
ならば、ハッタリと決め付けで奴の心を縛ってしまえばいい。
これで巨大化に制限がかけられた。
しかも、しれっと俺を含んで竜種は大丈夫という思い込みも植えつけてある。
「よし、ルビィ。 奴らはこれ以上巨大化できない。
奴の常識を縛ってやったからな!
後は同じ大きさになってしまえば、こちらの勝ちだ。」
「一体どんな魔法を使ったのよ!?」
「魔法じゃないのが魔法。 故に反魔力。 それが俺の力だ。」
説明するのも手間が掛かりすぎるからな。
「良く分からないけど分かったわ!」
ルビィはタイタンの顔を目指して上昇する。
タイタンは苦しそうに喘ぎながらもルビィを叩き落とそうとしているが
ルビィが螺旋状にタイタンの身体を伝うように上昇し回避している。
何かもう数百キロ遠くに居る敵と会話するとか、
上空に向かって羽で加速するとか、
常識が裸足で逃げ出しているけど構うもんか。
ここは奴が作り出した仮想世界化したソーサリスだからな。
元に戻った時に影響が残るかどうか、それだけは心配だが…
ルビィがタイタンの胸の辺りに達した頃から炎のブレスを吐いた。
タイタンの逞しくも暑苦しい胸毛が炎上する。
「火が点いたくらいでうろたえるんじゃないわよ! 情けない男ね!」
あっ、やめて
それ以上いけない
ルビィは、ルビードラゴンは再びタイタンより何倍も巨大化した。
そうだな…身長2000km、体長5000kmって所ですかね…
ここが地球ならドラゴンは日本の本土並みの大きさだよ。
そう言えば日本列島って、右向きのドラゴンみたいな形してるよね。
そして俺が佐渡島くらいかな…
「ルビィ、やり過ぎだぞ。 これはいくらなんでも…大きすぎる。」
「見せ付けてやらなきゃ諦めないでしょ! それに調節の仕方なんて分からないわよ。」
ごもっとも。
しかしこれは流石に…
ソーサリス、丸くないや。
普通に世界の果てがある平面世界ですな。
まあ多くの人がそう信じているのだから、今の精霊世界に侵食された状態では正しいのか。
大地の下行って見てみたいなあ。
象とかリヴァイアサンとか居るのかな?
居たらちょっと手伝って欲しいものだ。
この分からず屋の精霊魔王をこらしめるのをね。
ロンガロンガが風の精霊を起こしてタイタンに空気を送っている。
なるほど。
彼らの世界観からすればそれでOKなんだろう。
ロンガロンガに消耗を強いる事ができるから、こちらとしても問題ない。
だが、ロンガロンガは恐るべき事に風の精霊を維持しながら、
更に巨大化の術を使っているようだ。
タイタンが再び巨大化し始めている!
「懲りない奴らねッ!」
ルビィが関西、もとい尻尾を振り回してタイタンを打ち据える。
タイタンがよろめいて方膝をついた。
「な…! ルビィダメだ!」
「何でよ!?」
「今ので、多分ヴァルベルデの街は壊滅したぞ…」
多分街だけじゃなくて、もっと広範囲を破壊しただろうな…
「ここまで来たら仕方ないわ! 奴を倒さなきゃ同じ事だもの。」
そうなんだけどね。
できれば精神的ノックアウトを狙って欲しかったよ。
「あの街に恩も義理も無いとは言え、助けるって決めたんだけどなあ…」
「そーですねー。 皆さん死んじゃってシクシク泣いてますけど、
こればかりはどうにもなりませんものねえ。」
「だろうなあ… んん? シクシク泣いてるの? 死んだのに?」
「ええ、誰でも死んだら悲しいでしょう?」
「死んだ後にどうやって泣いてるの?」
「どうやって、と言われましても…」
「というか、眼下1万Kmの先の人の事が何で分かるんだ?」
常識を超えたにしても程があるだろう。
「まあ、目では見えませんね。 皆さん精霊体となって泣いてます。
こっちに文句言ってますよー 流石にそれは身勝手ですね。」
精霊体て…まあ幽霊か。
カチナだってこんな状態だし、確かに不思議では無いか。
いや凄い不思議だろ。
「今は悲しんでも仕方ありません。 早く彼らを倒して、
街の人を蘇らせてあげましょう。」
「そうだな… って蘇らせる!? そんな事が精霊術に可能なのか!」
「いえ、無理ですけど?」
世界観が違いすぎて会話が通じない。
俺は一体どこで何をやっているんだか。
これだからファンタジーは嫌なんだ。
「じゃあどうやって蘇らせるんだ?」
「精霊魔王を倒せば、世界を元に戻すついでに一緒に戻りますよ。」
「その根拠は?」
「族長がそうおっしゃってますのでー」
「あ…そ… 族長も一緒に死んでたのか。」
もう好きにしてくれ、と思った。
心底思った。
ドムッ!
物凄い衝撃で叩き付けられる。
更にルビィより倍大きくなったタイタンの拳だ。
しかしルビィはこらえた。
半ば宇宙空間で飛んでるのも不思議だが、
そこで殴られてこらえるのはもう物理法則も何もあったもんじゃない。
でもドラゴンの背中は慣性制御されてるし、それでもいいのか。
「この…ッ! 分からず屋!」
ルビィこと、ルビードラゴンが尻尾で往復ビンタをお見舞いする。
またルビィがタイタンと同じくらいのサイズになる。
そろそろ全長1万Kmかなあ。
「俺達には名前が必要なんだッ! ロンガロンガ様にお仕えして
タイタンの、ジャイアント族の誇りを勝ち取るんだァ!」
タイタンが初めて自己主張しながらルビィを殴り返す。
この直径1000kmの拳、万が一にも俺に当たったら即、宇宙の塵なんですけど。
「名前ならあたし達が付けてあげるわよッ!
そんな卑怯者にもらった名前を誇るなんて、それでも巨人族なのッ!?」
ルビィがドラゴンアッパーでタイタンの顎を打ち抜く。
よろめくタイタンのがら空きなボディに尻尾で強く鞭打つ。
再びルビィが巨大化する!
推定全長が2万Kmを超える!
まずいな…敵ながら声をかけておこう。
「タイタン、飛べッ! ソーサリスの大気とお前の体の摩擦で
お前の体が燃え始めるぞ! そこで戦うのはよすんだ!」
タイタンは素直に従って飛び上がった。
妙に聞き分けのある奴だな。
むしろタイタンがロンガロンガに渋々従ってるあたり、
善良で正直な種族なのが見て取れる。
あるはそれこそが問題なのかもしれない。
タイタンが大地を踏み込んだ衝撃でソーサリスの大地に巨大な亀裂が入る。
ここから見てれば亀裂だけど、あれは地表の人からしたら
幅が数十キロはあるんだろうなあ…
というか、あの衝撃の地震で何万人も死んだろうな。
あっ…亀裂が赤く染まってる場所がある。
ありゃあマグマ、いやソーサリスのコアだ…
こりゃ地上消滅まで秒読み段階だな。
さながらその様相は天地崩壊の終末みたいな状態に違いない。
ロンガロンガを倒さなければ、彼らはそのまま死ぬ。
もうルビィの勝ちは決まったようなものだが、
どう落とすか、どう決着を着けるかが問題だ。
下手にしこりを残す形だったり、ましてや逃げられたりでもしたら
目も当てられない事になるだろう。
ロンガロンガ自身も度重なる巨大化の術で疲労困憊のようだ。
俺が奴の意識を縛ったせいで、風の術を維持しながら
巨大化を上乗せで使わねばならないからな。
「ムッキャッキャーッ! ソーサリスの大地が心配でしたが
こうなったらもう終わりでスッ! もうソーサリスなんてどうにでもなれいィ!
俺様を見下ろす事なんて許されるはずが無いのでスッ!」
タイタンの巨大化が止まらない!
ロンガロンガのスピリットダンスがいよいよ狂気を孕む。
妄執。
奴は何か己が大きくあらねばならない事に固執している。
どうやらその思いが巨大化の力の源泉、あるいは
こんな歪な精霊世界を作り出した原因なのだろう。
「差が付き過ぎるのは面倒ね! これでも食らいなさいな!」
ルビィがドラゴンキックを放つ。
その、なんだ。
言っちゃ悪いから心の中に留めておくが、
ドラゴンの足って割りと短いよな…尻尾のほうがマシだよなあ。
ルビィの放ったルビードラゴンキックはタイタンの右肩を狙っていた。
ロンガロンガが乗っている所だ。
だがタイタンが奴を庇って体をひねり、左肩でドラゴンの蹴りを受け止める。
ルビードラゴンの爪がタイタンの肩を切り裂く。
ほとばしる血が宇宙空間に漂った。
そう、ここはもう宇宙そのものだ。
仕方ない。
可哀相かもしれないが、もう一度だけやつらを縛ろう。
「ロンガロンガ、もう巨大化は無意味だ!
これだけ地表を離れれば重力の影響は小さくなる。
タイタンはもう足の踏み場すら無い、浮遊状態だぞ!
羽と魔力で飛べるドラゴン相手に勝ち目は無くなっている!
降参しろ!」
奴らを重力と作用反作用の法則で縛る。
自分で積極的に利用しておきながら、
俺は一体何で戦っているんだろうと疑問に思ってしまう。
要は奴の知らない事象はこっちが好きに適用できる、って訳だな。
本当は空気が無ければこちらだって呼吸も飛ぶ事もできないし
声が届くはずもないが、都合悪い事をわざわざ宣言する必要も無い。
「足場が無ければ作るまでですヨッ!」
ロンガロンガがスピリットダンスを更に激しくする。
何か術を追加したのか!?
「ルビィ! 何かやってくるぞ!」
言うが早いがタイタンの足元に巨大な隕石が生まれ巨大化していく。
タイタンがそれを踏みしめ両手を突き出し、ルビードラゴンに
ショルダータックルを決めた。
スポーン!
勢い良くビール瓶の蓋を抜くような音が宇宙に鳴り響く。
どう衝撃が伝わったのか!?
ルビードラゴンはその衝撃を受け止めた。
しかしルビードラゴンの核が飛び出してしまった。
ルビードラゴンのコア、すなわちルビィである。
そもそも分離可能だったのか!?
これでルビードラゴンは消滅してしまうのか!?
「ルビィ!」
俺は思わず叫んだ。
二重に不味い!
ルビィが飛ばされた先には…ソーサリスの大地があるのだ!
しかも今のルビィと俺の身長自体が数十万Kmに達している。
つまり…俺が地球のサイズを遥かに超えてるのだ。
ソーサリスは平面世界であることも相まって、恐らく地球よりはでかいが…
重力とか変な事を中途半端に言ったのが間違いだった。
ルビィがソーサリスの大気との摩擦で赤熱しながら「落ちて」ゆく。
◆◆◆
ソーサリス北部の地、ウィンガレッタ大森林――
一人の年老いた男が空を見上げていた。
遠く南の地は大きく裂け、火の精霊が怒り狂っているのが伝わってくる。
大地が割れ、地獄の釜の蓋が開いたのだ。
その老人は名前をフォバット、精霊名を青山猫と言った。
非常に戦闘的な氏族、モウホークの長である。
彼は老いと恐怖と地震で三重に震えていた。
その震える腕を伸ばし、天空を指差す。
フォバットを囲んで不安げに空を見上げていた、氏族の者達が悲鳴をあげる。
「――来る!」
すっかり暮れなずんだ空に巨人と竜の大きな像がぼんやり浮かんでいる。
巨人がもんどり打つと赤い竜は跳ね飛ばされた。
そして何かが煌き、赤い空気を纏って大地に向かってくる。
それは大きな、とてつもなく大きな人の姿をしていた。
大の字の形で空を覆いつくしていたが、空気の抵抗でくの字に手足を曲げた。
大気が震え、それが低い音から段々と高い音に変わる。
人の叫び声だった。
「予言の時は来たれり!」
ついにソーサリスの空はそれで覆われた。
赤い大気を纏った、白とピンクの縞々に。
ルビィのお尻である。
正確にはルビィの履いている白とピンクの縞パンツが天を塞ぎ…
遂に地表へと激突した――
大気の抵抗のせいか、破滅の刹那のせいか
その光景は非常にゆっくりに見えた、と後の人々は語る。
その衝撃で世界中の人々は宙を舞い…大地は光に包まれ
ソーサリスは爆発した。
ソーサリスはここに一度、滅びを迎えたのである。
ルビィのお尻で。
ついにソーサリスの大地は崩壊した。
語るも馬鹿馬鹿しい方法で。この精神的神話級闘争に決着はあるのか。
次回、伝説のタイタンバトル編 第20話「神話級大戦 土星堕つ」
星よ、太陽よ。竜の咆哮を聞け




