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竜種少女と静かに暮らしたい  作者: るっぴ
第二章「伝説のタイタンバトル編 巨人族との大乱闘!」
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17 「最大級バトル」

ルビードラゴン顕現す

一瞬、唖然としてしまったが、これはチャンスだ。

今のうちに変身するしかない。


前回のてつを踏まないように雰囲気を出していかねばな!


「ルビィ、この戦いが終わったら…」


「苦しいから早くして。」



あれぇー。

後ろでカチナもぷりぷり怒ってる。

何なのこのテンション差。


口を尖らせながら反魔力を練り上げる。

ルビィを助け起こすように抱き上げ、腕の中に収める。

小柄なルビィはこうすると、本当に手の中に納まるかと思うくらい小さい。


「元のルビィはこんなに小さいんだ。

 図体の大きさに一々ビビってなんかいられないな。」


「ち、小さくないし…んんっ」


俺はその言葉を遮る様にルビィの小さな唇を奪った。

反魔力を唇からルビィの体に流し込む。

全部くれてやる!

反魔力も、俺の体力も全て持っていけ!


マナが瞬間的に集められ、暴風と化す。

急速に周囲のマナが集められ、その勢いの影響で風が起こるのだ。

俺は竜巻のようにルビィを中心として巻き起こる風とマナの奔流ほんりゅう

体を巻き上げられ、宙に投げ出された。


うそだろ!?

苦しい、呼吸ができない!

体が引きちぎられるように捻られて行く。

意識が遠のきつつあるその刹那

赤い光の柱が立ち上り俺の視界と景色を染め上げた。



「海! 大丈夫!?」


む…一瞬意識を失ったか!?

かぶりをしきりに振りながら、体を起こす。


「ああ…サンキュ、受け止めてくれてたか。

 ルビィの方こそ傷は大丈夫なのか?」



「もちろんよ! だから早くしてって言ったのに!」



ようやく意識がはっきりした。

そうだ、ここはルビィの、竜の背中だ。


ややピンクに近いような透明感と暖かさを兼ね備えた色合い。

傾き始めた日の光に反射して真紅にも見える角度がある。

ダイヤモンドに次ぐ硬度があるという、鋼玉コランダムの一種。

これがルビードラゴン…体内の中央にルビィのシルエットが見える。

しかし…


「ルビィ、こりゃまた一際大きいな。」


「ホント? やった!」


「ああ、クリスタの時が確か大きさが身長で40m、全長100mぐらいだったはず。

 目測だから大雑把だが… しかしこれは水晶の竜より遥かに大きい。」


どう見ても倍はある。

やはりルビィも1度巨大化してるんだ。


「これでクリスタには負けないわね!」


勝負するのそっちかよ。

まずクラウドジャイアントを倒してください。

まだ俺達が劣勢なんだぞ。


「わぁー! これがルビィさんの真の姿なんですねー!」


カチナがルビードラゴンの頭のほうを見上げながら感心した。

俺達から見て、首元からもたげた竜の頭まですらもう50mはあるだろうな。

登るのもしんどそうだ。 ってか無理。


「これならいけますね、海さん!」


「ああ! だが奴らがどれだけ大きくなってるか…

 ルビィ、雲の下に降りよう。」


ヴァルベルデの街の周囲は、クラウドジャイアントが呼び寄せた厚い雲で覆われている。

見渡す限り遠くまで曇天だ。

もっともその雲海の上にいるのだが。

一体、あの一瞬で何m上空に飛び上がったものやら。



角度をつけて雲の下へと飛び出す。

クラウドジャイアントはどこだ…いた。

警戒して離れた所から雲の下に出たせいか、かなり距離がある。


あれ?


あんまり大きくなってないな。

それどころか、ルビィが変身して更に大きくなったせいか

相対的には小さく見える。


理由はともかく、これは有難い!



「ギャッ! ム、ム、ムッキャー! ななな、なんですかそのドラゴンはッ!

 赤い宝石のドラゴンとかズルいですよ! ズルいッ!

 更に大きくて強そうなのを用意してたなんて、反則じゃないですかーッ!

 ダッシャ・カウカフ・タン!」


「知った事かッ! 貴様に合わせてやる義理はねえんだ!」



あ、あれ?

何か変だぞ…?


「海ッ! 巨人が小さくなったわ! チャンスよ!」


「よし、ブレス攻撃だ! ロンガロンガを狙おう!」


確かに巨人が小さくなった気がする。

何だかもう訳が分からない。

いや、分かりかけているんだ、これは。


ルビィが竜の首を引き、ブレスを溜める。

ロンガロンガが慌てて風の盾を張り巡らせて防御する。


「ギヘーッ! ウスノロ! 早く竜を叩き落とせいッ!

 そんなんじゃ貴様に<名前>はやらんぞッ!」


クラウドジャイアントは炎のブレスに顔を背けるように

体をひねっていたが、ロンガロンガの命令でルビィを叩き落とすべく

半ば苦し紛れに左手を出す。


「な、名前ー!」


クラウドジャイアントは無茶苦茶に手を振り回している。

ルビィがそれを見極め、急速にその場を離脱して拳をやり過ごした。

一度距離を取って大きく旋回する。


見た。

本当に巨人が小さくなっていた。

いや…


「ルビィの言うとおりだ。 だが奴が小さくなったんじゃない。

 お前が大きくなったんだ! 炎を吐くために近づいた時に分かっただろう。」


「どっちでもいいけどね! これならいけるわ!」


ロンガロンガがクラウドジャイアントことタイタンの首元をしたたかに蹴って命令する。


「おい、ウスノロッ! 俺様が術を使う時間を稼ぐんだッ! 雷を使えいィ!」


タイタンは渋々と言った動作ながらも雲を更に厚くし、雷の槍を準備する。

雲が一層厚くなり周囲は夜のように薄暗くなってきた。

頻繁に雷鳴が轟くようになり、雲があちこち明るく光る。


「来るぞ! ルビィ、距離を開けて雷を避けよう!」


「逃げてばかりじゃ勝てないってのにッ!」


文句を言いながらもルビィは加速し、狙われにくいように上下にも蛇行する。

俺も反魔力を準備して少しでも直撃を減らすようにしよう。

カチナは…どこだ? 見当たらなくなってる。

まさか落ちたんじゃないだろうな。


「カチナ…?」


「あ、はい?」


ビックリした。

すぐ脇に突然出現したからだ。

一応、ルビィ達が竜に変身する時みたいに、白い粒子のような物が集まるのは見えたが。


「あ、ああ…居るならいいんだ。

 姿が見えなかったら、振り落としたのかと思って。」


「あたしがそんなヘマするわけないでしょっ!」


ルビィからクレームが来た。

なんでだ。


「この騎竜具というのが突然機能し始めたので、色々勉強してたんです。

 自動で変形してルビィさんに正しく装着されましたが、

 どうやら私が色々操作できるようでー」


なるほど。

でもそれは後にして欲しいな。


「とりあえずそっちはいいから、雷の槍に対する防御を援護してくれ!

 あれをもう1回食らったらピンチだぞ!」


「分かりました! でも気をつけてください!

 風の盾は雷に対して効果は薄いです!」


「俺の反魔力も余り有効じゃなかった。

 雷を掴んだり、飛ばしたりは魔力かもしれないが、

 雷自体は自然のものだからな。」


タイタンは雷の槍を次々と投げては新しい槍を作り出している。

もう20本やそこらは投げているはずだ。


「作戦をミスったか…? そんなに連射できないと思ってたんだが。」


「なんで連射できない、って分かるのよ?」


「ルビィのブレスだって連発すると疲れるだろ?

 だから奴だって雷を呼ぶか、槍を作る時に消耗してるはずだと考えるのが自然だ。

 …と、思ったんだけどね。」


雷の槍がすぐ脇をかすめた。

竜の羽の手前、首との間だ。

こりゃ悠長に相談してる場合じゃないぞ。


「ルビィ! 狙いが正確になってきてる。 一度雲の上へ隠れよう。」


「逃げるのは性に合わないのにッ!」


文句を言いつつも雲に突入してくれる。

かなりの高度を稼ぎ、雲の上に出る。

中秋の傾きかけた陽光が、ルビードラゴンの体を一層赤く照らし出した。


「真上から突入して最短距離でブレスをお見舞いしよう。」


ルビィを巨人の真上あたりに誘導しようとすると、

ロンガロンガの癇に障る声が響く。


「その必要はあーりませーんヌッ!

 こそこそ逃げるなら、こちらから追いかけまっしょーッ!」


ばふんっ


雲を突き抜けるようにタイタンの頭とロンガロンガが飛び出してきた!

バカな!

在り得ない!


更に巨大化しただなんて…


「く、雲の上だぞ! もう高度が3000mを超えてるはずだ!」


実際にロンガロンガの身長ですら、もはやルビードラゴンの身長どころか

全長より遥かに巨大だ。

タイタンの身長は4000mくらいになる計算だ!

そんな生物がこの世に存在できるわけが無い!


「ウシャーッシャッシャッ! 見たか! 見ましたかッ!

 貴様らチビ共に合わせていただけで、俺様は偉大で巨大ッ!

 その宝石ドラゴンを捕まえて首飾りにしてやるンッ!」


タイタンが両手を伸ばしてルビードラゴンを挟むように掴もうとする、

辛うじて急上昇してルビィは回避するが、

タイタンが更に手を伸ばしルビィを追う。


「上昇して逃れるしか無い! 上だ! とにかく上へ!」


タイタンの手の長さからは逃れる事に成功するも、

もはや攻撃手段が無い。

推定身長4000mの相手に何が出来ると言うのか。

もはや逃げるのが精一杯の状況だ。


カチナが叫ぶ。


「海さん! やはり正攻法では…力押しではあの精霊魔王に勝てません!

 先程言っていた、巨大化の条件を見つけてください!」


「そ、それしか無いようだな!

 だがしかし正直、きっかけが見つからん。」


俺は下唇を噛みながら思案に入る。

頭脳労働は苦手なんだがなあ。

肉体労働はもっと苦手だが。


第一、これ以上巨大化されたら逃げるのもおぼつかない。

ルビィの体力だって有限だ。


気遣わしげにドラゴンの体内に居るルビィに目を向けてしまった。

その視線を二人に悟られてしまう。


「海、あんた何て顔してるのよ! あたしを信用しなさいよ!」


「そうですよ海さん。 これはお二人の、夫婦の初の共同作業なんですから。」


そんな、ケーキ入刀みたいな事を言われても…


「逃げるのは性に合わないと言ったけど、あんたを信じてるからね!

 勝つために時間が必要だって言うなら、逃げるのも隠れるのもあたしは平気よ。

 だからあんたは心配しないで、気を大きく持ちなさいな!」


やれやれだ。

どこまでルビィ達に気を使わせてるんだろうな俺は。

だが、ここまで信用されて頼られてるんだ!


考えろ、思考を加速するんだ。


ここはソーサリスであってソーサリスではない。

ロンガロンガが世界の法則、ルールを作り替えた精霊の世界でもある状態だ。

奴自身は余り攻撃してこないが何を仕掛けているんだ? 


「ロンガロンガの戦闘力そのものは意外と大した事は無いな…」


そんな言葉を思わず漏らした俺の言葉にカチナが反応する。


「確かに変ですね。 先程も私の水蛇の術にかかってましたし。」


「つまり奴はこの精霊世界を維持するのと、巨大化で精一杯って事だな。

 巨大化は確かに圧倒的な力だが、手数や手札は意外と多くないってだ。

 そもそも本当に奴自身が強大だったら、始めから巨人族は必要ないしな。」


なら、重要なのは巨大化じゃない。

これは結果だ。

原因は精霊世界にある。

これが重要だ。


精霊世界、スピリチュアルな世界であり精神や魂、心の在り方が重要だ。

族長は言った「自分が大きいのではなく、世界が小さいのだ」と。


世界が縮んでいる。

そんな事は常識では絶対在り得ないが、ここは魔法世界ソーサリス。

ルビィの言葉を借りれば「不思議が日常ソーサリス」だ。

しかも精霊世界が混ざっている。


だが何をすれば世界が縮むのか。

なぜ世界が縮むのか。


世界が縮んだのは何時だ。

巨人がハカを踊ったとき、ルビィが変身した時、巨大化の術を使ったとき…


じゃあ世界って何だ?

宇宙? 空間? 違う…


今、世界は精霊世界、世界とはグレートスピリッツだ。

日本語では「大いなる神秘」を意味するグレートスピリッツ、氏族の言葉でワカンタンカ。


全ての人の魂が繋がっているという、無意識の魂の集合体。

そうだ、今は世界とは人そのものだ。

人の心が寄り集まったものが世界そのものだ。


魂や精神が重要な世界なのだから。


考えが堂々巡りをしているように見えて、少しずつ核心に近づいている。

答えはもう俺の手の中にある。


後は形にするだけだ。


世界が、つまり世界中の人が縮んでいる。

なんでだ?


巨人がハカを踊ったとき世界中の人が縮んだ。

じゃあルビィが変身した時も世界中の人が縮んだのだ。


ハカは相手を威嚇するための歌と踊り。

竜は畏怖の象徴…


ルビィは言った。

「気を大きく持て」と。


そうだ

分かった。


ここは精神の世界



心の大きさが身体の大きさを決めていたんだ!


ならば…



「謎は解けた。」




俺達の反撃が始まる。


精霊世界の謎を解いた海。いよいよ最終決戦が始まる。

真に偉大なのは精霊か、魔王か、巨人かドラゴンか。

次回、伝説のタイタンバトル編 第18話「大竜言語」

意志の強さが、心の強さが勝利の鍵だ。

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