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竜種少女と静かに暮らしたい  作者: るっぴ
第一章 「竜の魔法使い伝説編」
11/86

11 「無力と騎竜具」

目が覚めると、枕に頭を乗せ寝させられていた。

いや、この暖かく柔らかい感触は…太ももだ。

寝返りを打つように頭を上に向けると、

反対側から覗き込むクリスタと目が合った。



「今日2回目のおはようだね。」


「あー…膝枕してくれたの、ありがとうな。」



俺は両手を回しこの天上の至宝とも言える枕に

抱きつき頬ずりする。

最高だ…桃源郷はここにあった。


あいてててて!耳が、耳が痛い!?

ルビィが俺の耳をつねり上げていた。

ごめんよ、かぁちゃん。

かんにん



「じゃあもう一度…」


「ダメよ。」



ルビィが俺の腕を掴んで止める。

その後ろでは婆様がやれやれといった表情で肩をすくめていた。



「あんた今、魔法の練習してて倒れたんでしょ。

魔力切れよ。

次やったら今度は何日も寝込むわよ?」


「そういうもんなのか…仕方ない。

少し休憩するか…1時間も経ってないのになあ。」



だが成果はあった。

俺は魔力を、いや魔力の無さを操ったのだ。

これでゼロの海を名乗れる。

その幻想をぶち壊せる。

イ○ナズンは無理だったが、

凍てつく波動とマホカン○が使える事が分かったのだ。


ふらつく足取りでリビングへ戻り、

ソファに体を深く沈める。

クリスタがお茶を淹れてくれている。



「どうやら成果はあったようじゃな?」


「ええ、魔法とは言えないものになりましたがね。」



クリスタがそわそわしながら俺に尋ねる。



「海くん、何が起きたのか教えて?」


「あー…俺が説明すると、

また上手く教えてあげられないから、

婆様お願いします。」


婆様は顔をしかめる。お茶が渋かったのか、

年寄りをこき使いおって、とでも言いたかったのか。


「こやつの体の内側には魔法が効かぬ。

 そして先ほど、その魔法が効かない体の内側にある<場>を

魔力を操るのと同じ要領で動かしたのじゃ。

 そしてクリスタ、お前さんの手に有った

回復魔法の沸く場と接触させ、

回復魔法の陣に干渉し破壊したのじゃ。

 反魔力アンチ・マジック

そんなものが実在するだけでも驚きじゃが、

よもや操ってみせるとはの。」


「ほぇー…何だか凄い力なんですね。」 



婆様が俺をじろりと睨むように見つめて言う。


「これでいよいよ、海が碑文の記す

異世界の魔法使いである可能性が

高くなってきたわけじゃが…」


「その点はアクエリアス説を支持しますよ。

魔法使いが来るのではなく、

魔法使いになるという説をね。」


婆様は頷き、待っているように俺達に言いつけ、

自室に戻っていた。

戻ってきた婆様は2つの分厚い革ベルトの付いた

大きな竜の意匠が彫られている箱を背負っていた。


えー…それどう見ても金属の箱じゃん。

そんなもの背負えるなら俺が今日までやらされてた

雑用の数々は何だったの。

腰が痛いだの、年よりは骨が弱いだの

言ってたアレは嘘だったんだな。


…という、俺の視線に気付いた途端、

婆様はわざとらしく腰と肩を叩き始めて

アイテテテとか言い始めた。

酷い、酷すぎる。


婆様が箱を開けて取り出したものは

高さ40cmほどの革のようなもので作られた竜の模型だった。


「これは騎竜具ライディング・ギアという。

碑文の下に埋められておった石櫃から出土した。

魔法使いが竜を操るための道具らしい。」


婆様が竜の模型を分解し始めた。

手綱やあぶみ、鞍や頭絡らしき一式…

俺には馬具と見分けが付かない。

というより馬具そのものが俺の知識無い。



「どうじゃ手にとってみい。

何か特別な力を感じたりはせぬか。」


「特に何も…普通の乗馬用具と何か違うんですか?」


「作りそのものは乗馬用とほぼ同じじゃろう。

問題はそこに込められている魔術じゃ。

 何か力が沸いてくるとか、未知の知識が

頭に浮かんでくるような感覚はないか?」


「倒れたばかりでまだ体に力が入らないな。

力が目覚めるとかは微塵も無いですね。

 特に技や知識が頭に浮かんでくるような事も…

あ、クリスタの太ももが前より柔らかくなった。

 ひょっとしてちょっと太っ…」


引っ叩かれた。

顔を真っ赤にしてなにやら

言い訳のような言葉を羅列している。

冗談だと何度も言い聞かせて何とか収めたが、

クリスタはお外を走って来るそうだ。

何かお詫びをしないと許してくれないだろうな…

しかも今回は甘い物は禁じ手だ。



「これがクリスタ達が竜に成るか、

あるいはお前が伝説の魔法使いとして

目覚めるきっかけになるかと期待したんじゃがの。」


「ご期待に沿えませんでしたか。

何かまだ足りないのか、見込み違いだったとか…」


「諦める事は無い。まだ時間はある。」


「ええ。まずはこの反魔力を十分に

使いこなせるようにしようと思います。」


「うむ。だが休息は十分に取ることじゃな。

気を失うのと寝るのは全く別のものじゃからの。」




クリスタの膝枕が味わえるなら

何度でも倒れて構わないんだけどな。

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