第十九話
「やはり……東金かぁ……」
俺は犬飼から手を離し、
その場を後にした。
「東金の兄貴……
いや東金てめぇだけは許さねぇ……」
俺の携帯が鳴る
「俺だ……エマ……」
「住所は送ったよ〜」
「助かる……」
俺はエマから送って貰った住所に向かった。
俺はある店の前で足を止めた。
一見すれば、
どこにでもありそうな中華料理店。
だが……
店の奥から、
妙に張り詰めた空気を感じる。
俺は扉を開けた。
「いらっしゃいませ」
店員がこちらを見る。
俺は低い声で聞いた。
「……東金いるか?」
「その様な方はおりま……」
俺はすかさず店員の頭をカウンターに叩きつけた。
「勝手に探すからもういい」
すると店の奥から
怒号とともに男たちが飛び出してきた。
手には包丁や鉄パイプ、
中にはフライパンまで握っている。
「こいつを出すな!」
一斉に襲いかかってくる。
俺は正面から振り下ろされた包丁を、
半歩ずれてかわし、
その男の腹へ蹴りを叩き込んだ。
「ぐっ……!」
男の身体が大きくのけ反る。
間髪入れず、
背後から鉄パイプが振り下ろされる。
俺は身を沈めてかわし、
振り向きざまに拳を叩き込んだ。
鈍い音が響く。
その横から、
別の男がフライパンを振りかぶって突っ込んでくる。
俺は一気に踏み込み、
そいつより先に顔面へ蹴りを叩き込んだ。
「がっ!」
男がテーブルを巻き込みながら倒れる。
皿が割れ、 料理が床へ散らばった。
それでも、 次から次へと男たちが向かってくる。
俺は拳を握り直した。
「……邪魔すんな」
店内に、 再び鈍い音が響いた。
「……ぐはっ……」
奥の部屋の扉が開く
そこには
「いや〜仁君♡」
「東金……」
「僕今食事中なんだけど……君……死にたいの♡?」
「……あの店燃やしたのはてめぇだな」
東金は箸を止めた。
「だったら?」
「そこまでやる必要ねぇだろ」
東金は薄く笑う。
「ゴミを燃やしただけだよ僕は〜」
俺は拳を握った。
「……相変わらず腐ってんな」
東金はゆっくり椅子から立ち上がった。
「仁君…… 昔から口悪いよねぇ?」
「てめぇだけはこの手で潰す……」
椅子から立ち上がる東金
巨体が起き上がっただけで、
さっきまでより部屋が狭くなったように感じた。
「仁君……♡」
東金は口元を歪め、
そのまま前へ出てくる。
俺は構えた。
次の瞬間、
東金の右拳が飛んできた。
速い。
俺は顔をずらしてかわす。
拳が頬の横をかすめ、
空気が鳴った。
すぐさま、
反対の拳が腹を狙ってくる。
俺は肘を落として受けた。
「ぐっ……!」
重い。
腕越しでも、
身体の芯まで響く。
東金はそのまま体当たりするように距離を詰めてくる。
俺は押されながらも、
奴の脇腹へ拳を叩き込んだ。
鈍い音が響く。
それでも
東金は止まらない。
「その程度かい?」
今度は肩からぶつかってくる。
俺はたまらず数歩後ろへ下がった。
すぐに東金が追ってくる。
大きく振りかぶった拳。
俺は身を沈めてかわし、
そのまま懐へ潜り込む。
腹へ一発。
続けて、 みぞおちへもう一発。
「ぐっ……!」
東金の身体がわずかに揺れる。
俺はすかさず顔面へ拳を振る。
だが、 東金は腕で受け止めた。
「捕まえた♡」
俺の腕を掴み強引に引き寄せてくる。
次の瞬間、
東金の額が俺の顔面へ叩き込まれた。
「っ……!」
視界が揺れる。
俺は腕を振りほどき、 後ろへ下がった。
口の中に、 鉄の味が広がる。
東金は笑っている。
「仁君今のは痛かったよね?」
「……うるせぇ」
俺は口元の血を拭った。
再び、 東金が突っ込んでくる。
今度は真正面。
俺は拳をかわし、 腹へ蹴りを叩き込んだ。
「ぐぉ……!」
巨体がわずかに折れる。
そこへ拳を振り抜く。
頬。
腹。
脇腹。
と連打で打ち込むが東金は倒れない。
むしろ
俺の拳を受けながら、 笑っていた。
「いいねぇ……♡」
東金がいきなり両腕を広げ、
俺を捕まえようとしてくる。
俺は一歩下がる。
その瞬間、 足元の割れた皿を踏みそうになった。
一瞬だけ、 体勢が崩れる。
東金はそれを見逃さなかった。
「もらった〜」
東金は笑顔で、
巨大な拳を俺の顔面へ振り下ろされる。
俺はギリギリで身体を沈めた。
拳が頭上を通り過ぎる。
俺はそのまま、
東金の懐へ深く踏み込む。
完全な至近距離。
東金の腹が、 目の前を塞ぐ。
俺は腹へ拳をめり込ませた。
「ぐっ……!」
東金の身体がくの字に折れる。
俺はさらに一歩入った。
腰を落とす。
右拳を握る。
足。 腰。 肩。
全部の力を、 一つにまとめる。
東金が顔を上げた。
俺は地面を蹴った。
「うぉぉぉぉぉ」
俺は雄叫びを上げながら
身体ごと下から跳ね上がる。
そして東金の顎へ、
渾身のアッパーを叩き込んだ。
「がっ……!」
東金の頭が大きく跳ね上がる。
巨体が浮くようにのけ反り、
足元の破片が一斉に弾け飛んだ。
水槽の青い光の中で、
東金の身体がゆっくり後ろへ傾いていった。
「ま……だ……ま……だいく……よ」
それでも立ち上がろうとする東金
「しつけぇなぁ……」
俺は拳を握りしめた
だが背後から一人の男の声が聞こえた。
「親分……選手交代だよ……」




