あんバターサンド 1
あんバターサンド
「今日は、テーブルにどうぞ」
薫子さんが指し示した先には、木製の丸いテーブルと小ぶりだがしっかりとした作りの椅子があった。左手に進んで近づくと、椅子の座面は深い緑色のベルベットで、座る前に表面を手で撫でると柔らかい起毛に指の跡が残った。
椅子に座ると視線の先には窓があり、窓の外には七重塔の軒先に草地がはるか彼方まで広がってるのが見えた。
左の壁に設えられた棚を見た。初めてこの店に来た時にも思ったが、並んでいる本は全て単行本だった。名を知っている作家のものもあったけれども、昔の作家の本は神田の古本屋でガラス棚に入っているような古い版のものだった。その他にも外国のものらしい重厚な革張りの本も並んでいた。
平積みになっているのは糸綴じの和本で、その隣の棚には巻物が積まれていた。
カウンターの中で薫子さんは手元に集中していて、トーストの香ばしい匂いが漂っている。
私は中腰になって、積まれた糸綴じの本の表紙を覗いた。青い表紙に縦長の紙が貼られて題名が書かれているが、字が崩されていて読めなかった。
「わ、って書いてあるのかな」と最初の文字を読んでつぶやいた私に、「わかむらさき、って書いてあるのよ」と、薫子さんが声をかけた。
銀色のお盆を丸テーブルに置いて、薫子さんが椅子に腰を下ろした。
お盆の上にはコーヒーカップがふたつと、コーヒーポットが置かれていた。今日の器は白い薄手のもので、並べて置かれた白い平皿の上には、小ぶりで細いバゲッドに粒あんと厚切りのバターを挟んだものが、一口サイズに切られて綺麗に並べられていた。
「今日は少し遅かったから、お腹も空いているんじゃないかと思って」




