和三盆 1
和三盆
市民会館の裏手に広がる草地は、千年以上の昔に国分寺の境内であったところで、今では広い緑地を灰色のアスファルトの道が切り分けている。道に沿って右手に伸びる椿の生垣の上からは、薬師堂の茅葺き屋根が覗き、その上には大きな青空が載っている。
私の頭はまだ混乱していて、心の表面で静電気が乾いた音を立ててるたびに皮膚がこわばる。呼吸が苦しくなり、心を焦がす嫌な臭いと煙に、叫びたくなる。
いっそこの体が粉々になってしまえばいいのに、と思う。
太陽を探して振り返って腕を伸ばし、光に手をかざす。手のひらが暖かな熱を受け、指の間から溢れた光を閉じた瞼に感じる。
そして、また考える。意識が消えるというのは、こういう感覚なのだろうかと。
自分の意識が光の粒子のように分散する感覚。
このまま空に溶け込んでしまえばいいのに、呼吸が止まってしまえばいいのに、そう願いながらゆっくりと目を開く。
しかし、私の体も世界もそこにそのままにある、いつものことだ。しかし、今日は少しだけ世界が違っていた。
アスファルトの道の左側の草地には、千年前にそびえていた七重塔の基礎が遺跡となって残っている。いつもと同じ景色であるはずのその世界、高校入学以来数え切れないほど通った道の左側、遺跡の前に、木造の建物が現れていた。
飾り気のない濃い焦げ茶色の板張りの二階建ての建物は、急造されたセットでも張りぼてでもなかった。昔からそこにあったようでもあり、昭和初期の建物をどこか他の場所から移築してきたかのようでもあった。
道を進んで正面に回ると、中心をずらして左に寄せて設けられた玄関は三段ほどの階段の分だけ高くなって奥に引き込まれていた。木製のドアには縦長の明かり取りの窓があり、木枠の文様とステンドガラスがはめ込まれていた。建物の裏側にも窓があるようで、光を受けてステンドグラスの色ガラスが鮮やかに見えた。
近日開店のお知らせもなく、祝開店の花もなく、ただ小さな木札に「営業中」とだけあった。
なぜだろうか、私は気味が悪いとも怖いとも思わず、招かれた客のように階段を上った。
磨き続けられているかのような重々しい艶を帯びた真鍮のドアノブを前にして、制服のブレザーとスカートを手で撫でて皺を伸ばしてから、扉を開いた。
金属製の風鈴が奏でる風の音が、私の皮膚の上を響いて渡り、指の先から抜けていった。
その感覚に呆然としている私を、「いらっしゃい」と静かな声が迎えた。
小さな喫茶店だった。入り口の右手にL字型のカウンターがあり、正面左手を奥に向かう短い辺には高椅子が一つとその背中側に丸テーブルの席が一つある。右手の長い辺には高椅子が二つとテーブル席が二つあった。壁は本棚になっていて、玄関が少し奥まっている理由もそのためのようだった。様々な大きさ、色、装丁の本、古いものも新しいものもあった。ドアノブの真鍮と同様に、こちらのコレクションも長い時間をかけたもののようだった。
「カウンターにいらっしゃい」




