最終話「神様チートの、その先」
それは、終わりではなかった。
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始まりですらなかった。
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ただ――
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“通過点”だった。
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本邸。
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静かだった。
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あれほど動いていたすべてが、
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今は落ち着いている。
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だが、
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止まってはいない。
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「状況報告」
一条朔也が言う。
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「ナノマシン、安定稼働」
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「進化挙動、継続」
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一拍。
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「制御範囲内……ギリギリで維持」
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神崎が続ける。
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「外部遮断層、常時展開」
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「干渉可能状態、維持」
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業高が頷く。
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「世界は」
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一条が答える。
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「完全に認識しました」
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一拍。
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「交渉、監視、圧力」
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「すべて同時進行です」
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当然だった。
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未知。
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制御不能の可能性。
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それを放置するほど、
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世界は甘くない。
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「国家は」
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「分裂しています」
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神崎が言う。
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「規制派」
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「利用派」
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一拍。
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「排除派」
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世界は一つじゃない。
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だから――
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答えも一つじゃない。
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業継は窓の外を見ていた。
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空。
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その先。
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「……面倒だね」
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『はい』
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アークが答える。
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だが、
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その声はいつもより静かだった。
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「どうなると思う?」
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一拍。
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『分岐が加速します』
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「分岐?」
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『人類の進路です』
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短い。
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だが、
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重い。
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業継は少しだけ笑う。
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「選ばされてるね」
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『はい』
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「俺たちが?」
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『人類全体が』
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その言葉で、
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すべてがはっきりする。
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ナノマシンはただの技術じゃない。
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選択肢。
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未来そのもの。
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本邸・地下。
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ナノマシン。
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Genesis。
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動いている。
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静かに。
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だが、
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確実に。
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変わりながら。
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進みながら。
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誰にも完全には理解できないまま。
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「……ねえ」
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業継が呟く。
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「お前、どこまで行くの?」
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当然、
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答えはない。
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だが――
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わずかに、
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動きが変わる。
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それが、
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返事のように見えた。
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「……そっか」
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業継はそれ以上聞かない。
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理解しようともしない。
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ただ、
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受け入れる。
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「じゃあ、行こっか」
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一歩、踏み出す。
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その瞬間。
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空気が変わる。
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本邸。
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「新規変動を検知!」
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一条の声。
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「何だ」
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「ナノマシンの挙動が――」
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一拍。
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「外部と同期を始めています」
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沈黙。
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誰もすぐに言葉が出ない。
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「外部?」
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「はい」
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一条が続ける。
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「ネットワークではありません」
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「物理でもありません」
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一拍。
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「……不明です」
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アークが補足する。
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『観測不能領域との接続を確認』
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その言葉。
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誰も理解できない。
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だが、
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一つだけわかる。
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越えた。
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完全に。
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人の外へ。
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「……はは」
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業継が笑う。
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「そこまで行くのね」
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『予測不能です』
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「いいね」
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一拍。
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「最高だよ」
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その言葉に、
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誰も反論しない。
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できない。
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これはもう、
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止めるとか、
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制御とか、
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そういう話じゃない。
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未知そのもの。
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世界。
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「観測不能現象を確認」
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「日本発です」
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「いや……違う」
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一拍。
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「もう“場所”じゃない」
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理解が追いつかない。
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だが、
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確実に起きている。
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変化が。
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本邸・夜。
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業継は空を見ていた。
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星。
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その先。
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「ねえ、アーク」
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『はい』
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「これってさ」
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一拍。
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「神様チート、ってやつかな?」
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沈黙。
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そして――
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『定義不能です』
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その答えに、
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業継は笑う。
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「だよね」
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一歩、前へ。
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「じゃあさ」
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一拍。
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「その先、行こっか」
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『はい』
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止めない。
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止まらない。
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終わらない。
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これは、
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神様チートの物語じゃない。
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その先。
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人が、
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何になるかの物語。
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九条業継は、
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歩き出す。
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誰も知らない未来へ。
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その先へ。
一旦これで終わりですけど
ちょっと、この作品もリメイクを出したいと思います
暫しお待ちください




