第11話「御影資源開発、初の搬出と利益」
第三区画。
朝。
トラックのエンジン音が、静かに山へ響いていた。
だが、その動きは目立たない。
台数は少ない。
時間も分散。
搬出ルートも複数。
すべてが計算されている。
「積み込み、確認」
鷹宮の声が飛ぶ。
「重量誤差なし!」
「よし、出せ」
最初の積荷が、ゆっくりと動き出す。
御影資源開発としての――
初の正式搬出だった。
⸻
少し離れた位置で、神崎理央がタブレットを見ている。
「数量、予定通り」
「価格は」
業高が聞く。
「表向きは低めに抑えてる」
「利益は出るのか」
「出る」
神崎は即答した。
「ただし“出す利益”は絞る」
「隠すのか」
「分散する」
神崎は淡々と言う。
「一気に出すと注目される。まずは“地味に成功してる会社”に見せる」
「なるほどな」
業高は頷いた。
この男の怖さは、儲けることではなく“見せ方”にある。
⸻
一条朔也は別の場所で電話をしていた。
「ええ、予定通りです。はい、あくまで試験採掘の延長ですので……ええ、正式稼働はまだ」
言葉を選びながら、外との接続を整える。
御影資源開発は、すでに“存在している会社”として扱われ始めていた。
それが重要だった。
⸻
山吹悠斗は現場の端で地面を見ていた。
「変化なし」
小さく呟く。
第三区画は安定している。
つまり――
「次もいけるな」
誰にも聞こえない声だった。
⸻
その様子を、業継は少し離れた場所から見ていた。
「動いてるね」
『はい』
「これで金になるのか」
『既に発生しています』
業継は少しだけ目を丸くする。
「もう?」
『初期収益は確定しています』
それは、初めての感覚だった。
(自分のやったことが、実際に金になっている。)
人が動き、物が動き、価値になる。
「……すごいな」
『客観的にはそうです』
業継は少し考える。
そして、ぽつりと言った。
「これで、次に行けるよね」
『はい。ただし条件付きです』
「わかってる」
今回はちゃんと理解している。
第6話のルール。
第7話の箱。
第8話の段階。
第9話の分割。
第10話の技術制御。
全部がつながっている。
「順番にでしょ」
『その通りです』
業継は笑った。
「じゃあまずは――」
トラックが山を下りていく。
その先で、御影資源開発は“普通の会社”として動き始める。
だがその裏で、
次の準備も進んでいる。
資源。
技術。
そして医療。
すべてが並走し始めた。
九条業継は、もう止まらない。
ただし――
ちゃんと、順番に進む。
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