第20章 ― 宇宙刃の舞
侍女たちは同時に動いた。
互いに逆方向へと空気を引き裂きながら突進する。
ケルベロスは、時間を止めた。
世界は完全な静寂の中で凍りついた。
彼は巨剣の中央に手を添えた。
刃の中心で、白く、生きているかのような強烈な光が灯る。
次の瞬間――
金属は、神の精度で分断された。
二つの新たな柄が形成される。
光が収まった時、ケルベロスの手には
完全に均衡した二振りの巨剣があった。
それぞれ四メートル。
左手に一本、右手に一本。
時間が再び流れ出す。
侍女たちは、変化を即座に察知した。
生存本能に突き動かされ、左右へと跳び退く。
ケルベロスは、一人ずつ観察するように視線を向けた。
「……おや?」
冷酷な落ち着きを保ったまま、挑発する。
「……どうした?」
「……逃げるのか?」
「……勇敢だと思っていたが」
森が震えた。
一人が背後に現れ、
もう一人が正面に出現する。
ケルベロスは、
二本の剣を地面に叩きつけた。
衝撃波が地震のように爆発し、
二人は後方へ吹き飛ばされる。
木々は引き抜かれ、
地面は裂けた。
――だが、
二人は即座に立ち上がった。
ためらいなく、再び突進する。
八十メートル跳躍し、
自由落下のまま、
刃をケルベロスの体の中心へ向けて振り下ろす。
ケルベロスは、
二本の巨剣を掲げ、
空中で打ち合わせた。
轟音。
耳を裂く衝突音が響いた。
周囲の重力が崩壊し、
侍女たちの身体は意思に反して震え、浮かび始める。
だが、怒りがそれを上回った。
侍女たちは咆哮した。
双剣を合わせ、
一つの武器へと融合させる。
赤と桃色のオーラに包まれた、
暴力的で脈打つ刃。
その力は、
ケルベロスの歪曲を拒絶し、
現実に無理やり自分たちを受け入れさせる。
ケルベロスは笑った。
「……ようやく、だな」
「……ここからが、本当の戦いだ」
最初の侍女がテレポートし、背後に出現する。
ケルベロスは左手の巨剣を回転させ、
刃と刃を衝突させた。
衝撃が空気を切り裂く。
二人目が上空に現れ、
異常な速度で剣を振り下ろす。
ケルベロスは右手の巨剣を掲げた。
武器同士が激突する。
地面が爆ぜ、
彗星が落ちたかのような巨大なクレーターが形成された。
侍女たちは後方へ跳び、
両側からエネルギー弾を連射する。
ケルベロスは二本の剣を地面に突き立て、交差させた。
刃の盾が形成される。
光線は金属に弾かれ、
引き裂かれた雲へと逸れ、
雷光となって空に放電した。
彼は剣を引き抜き、
地獄の輪のように回転させ始める。
宇宙エネルギーの渦が形成された。
完全な激怒の中、
侍女たちは同時に突進する。
拳を握り締め、
融合した武器を、
ケルベロスの頭部へ一直線に向けて。
衝突は避けられなかった。
爆光が、すべてを照らした。
森全体が、
光と衝撃に飲み込まれる。
やがて、閃光が消え、
重い沈黙が落ちた。
侍女たちは地面に倒れていた。
――気絶している。
装甲はゆっくりと崩れ、
エネルギーは霧散していく。
初めて、
女王の支配の痕跡は消えていた。
ケルベロスは歩み寄る。
その視線は、
軽蔑ではない。
――敬意だった。
「……よく戦った」
低く、彼は言った。
「……彼女の支配下にありながら、
……ここまで来た」
一瞬、間を置く。
「……お前たちは、
……アシナに近い」
だが――
「……アシナは……」
彼の瞳が陰る。
「……もっと危険だ」
「……比べ物にならないほどにな」
ケルベロスは背を向けた。
歩き出すと同時に、
二振りの巨剣は光となって溶けていく。
彼は揺るぎない足取りで、
クララ・コズミアの王国へと向かった。
戦いで傷ついた森は、
彼の背中を見送るように静まり返っていた。
だが――
彼は知っていた。
真の戦争は……
まだ、始まっていない。
―――
次の章へ続く。




