【第16夜② ~運命の婚約~】
【前回より】
「皇子、これからお話しすることは私の正直な気持ちです。不快に思われることもあると思いますが、私たちの未来のために聞いてください。」
改まった口調で話す私の真剣な眼差しに、皇子もまた落ち着きを取り戻して、
「わかりました。ぜひ聞かせてください。」そう言って、膝の上の手を合わせ、私の目を見る。
「私は自分の中にある感情に、つい最近気づきました。それは今までの私には、全く無縁な感情で、全く意識したことのなかった想いです…。しかしあることがきっかけで、その思いに気づいてからすぐに、皇子との結婚が進められていることを知り、私は正直、自分の気持ちのやり場に悩んでおりました。
この国の王女として生まれ、もちろん国のため、この星のための結婚が、私の役目であることは当たり前のように幼い頃から教えられ、私自身もそれが当然のことと思っておりました。しかし自分でもどうにもできないこの感情を持ったまま、皇子と結婚することは…、こんなにも思いを寄せてくださる皇子に対して失礼であると…。頭では理解したこの結婚を、感情が許さず、皇子に対する非礼を考える度、胸が締め付けられるような思いをしておりました。」私はここまで話して皇子の目を見る。
皇子は私の話が始まると、うつむいしまっていたが私の話が一区切りつくと、私の目を見て、
「私は大丈夫ですよ。続けてください。」そう言うと私の手を取り、にこっと笑う。
「はい。」私は続ける。
「ここ最近の拉致事件をご存じですよね?私はその件で…、先日夢を見たのです。その中で、この星の神バーレイが、この国の王女である「私」に『啓示』を与えられました。」
皇子は、想像をはるかに超えた話に眉をひそめて、
「啓示…、ですか?数千年に1度と言われる歴史上の話かと思っておりましたが…。」そう言って、顎に手を当てる。
「そうなんです。私もまさか自分に下されるとは思ってもいませんでした…。そして、その啓示によると、何者かによってそれぞれの星の大切なものが奪われ、世界は危機に陥ると…。」私はそう言うと、紙にその啓示の内容を書き出していく。
「このように、世界にはこの星以外に3つの星があり、それぞれの星で拉致事件はもちろん、その星で最も大切とされているものが紛失しています。盗難という方が正しいのかもしれません。
具体的に言うと、1つ目の星では特殊な力を持つ『石』、2つ目の星では『魔導書』です。もう1つの星に関して神は、何も明言されていませんでしたが、このファータにおいては…異能の力を持つ『人』が他の星以上に拉致されています。予想通り、神はファータにおいては『人』を守りなさいと仰りました。」
私がここまで話すと、皇子は疑うこともなく頷いて、
「なるほど…。そのような啓示があったのですね…。姫には、特別なお力がある事は存じております。ですから、神の啓示があるのは納得ですね。それで…、姫のお力というのはこの星を守るための力であり、まだその力の解放を見ていないので、それが具体的にどんなものかわからないということでしたよね…?力の解放の日が…、楽しみですね。」皇子は微笑みながら言う。
「はい。」私も笑顔で応える。
「私にも特別な力があります。おそらく姫と同レベルの力…。我々の力がこの星を平和に導く力であることは間違いない。それを、私が生まれた時にジーク国王であるわが父が、そして姫がお生まれになった時にファータ王が気付かれたそうです。そして2人は、自分たちの子供に秘められた力でこの星を守り、平和に導くために、私たちの結婚の約束を交わしたと聞いております。姫はそれはご存じでしたか?」
「そうだったのですか?」驚く私に皇子はにっこり笑いながら、
「両国で正式に結婚の約束が交わされたのは姫がお生まれになった1年後、それ以降は適齢期を迎えるまで具体的にその話は出ていなかったとのことですが、そんな中、初めてこちらの庭園で姫にお会いした後、姫の虜になった私は、ファータ王に是非姫と結婚させてほしいと申し出ました。つい先日ですが、王とお話している時に聞いたのですが、それはそれはびっくりされたとのことでした。まさか、結婚の約束をしてはいたけれど、それを伝えていない状況で、本人から婚約を申し出てくるとは!と…(笑)。これは運命他ならないと、その時確信したそうですし、私自身もそう思いました。」笑いながら話す皇子。
「そんな事があったなんて…、私もびっくりです。」私は皇子の愛であふれた言葉と思いに照れながら、彼の手に自分の手を重ね、
「もしその力を持ち合わせているなら、私はこの星のために、民のために、皇子と…。皇子の私を思ってくださるそのお気持ちに甘えて、世界を救うために…、あなた様と共に歩いていきたいと思っています。とはいえ、まだ皇子への気持ちは正直…。でも私は…。」
結婚の気持ちを決めながら、まだためらいを抱える私の心情を察し、皇子は私の唇に人差し指を置き言葉を制して、




