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婚約者とその浮気相手の女性は思っていたより悪質な人たちでした。~幸せになる方法は無限にあったのですね~  作者: 四季


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2/2

後編


 ◆



「女神さまァ、これェ、持ってきましたァ」

「あ、朝食ですね。ありがとうございます」

「タンパク質たっぷりのメニューにしていますゥ」

「この前話していらっしゃった、こだわりの、ですね」

「そうですゥ! 覚えていてもらえてェ! とっても嬉しいですゥ! 忘れないでくださァいねェ!」


 毎朝、かなり早い時間に、筋肉質な妖精が食事を運んできてくれる。


「あとォ! 食べる順番もォ! 前にお伝えした通りにィ! お願いしマッスル!」


 語尾マッスルはちょっと寒いが放っておこう。


「ではではァ、また後でェ!」


 妖精たちは基本的には親切だ。

 彼らとの暮らしは平和だしとても楽しい。


 ランディリーたちとのことなんてもうどうでもいい、と思えてくるほどに。



「女神さま、こちら、本日の貢物です」

「もう大丈夫ですよ……いつも貰っていますから、たまにでいいです、本当に」

「いえいえ! 貢物は重要なものですから! 毎日お持ちします!」


 婚約者に裏切られ、惨めな思いをして生きていくくらいなら、ここへ来て良かったのかもしれない。今はそんな風に思う。


「我々は尊い筋肉を護るため日々トレーニングをしていますが、それも平和な世があってこそ! ですので朝は女神さまに感謝するところから始めるのです。それは五百年以上続いてきた文化ですのでご理解ください」

「そうなんですね。五百年とは……すごい歴史ですね!」

「ありがとうございます!」

「ではいただいておきますね」

「はい! ぜひ! お願いしマッスル!」


 やはり語尾マッスルは寒いが……それも五百年以上続いてきた文化なのかもしれないのでそっとしておこう。



「先日話しておられた力士絵巻なのですが、こちらでも問題ないでしょうか」

「ありました?」

「はい! もちろんです! すぐに用意しました!」

「無理を言ってすみませんでした」

「いやいやいいんですよ! むしろ希望を言っていただけるなんて嬉しいです! それに、具体的に希望を言っていただいた方が、我々としてもやりがいが生まれマッスル!」


 これから先どんなことが待っているかなんて分からない。

 この道を歩んでいったその果てに何があるのか、答えなんて見つけられはしないし誰も教えてはくれない。


 だが、それでもいいのだ。


 今を大切にして生きていくと決めたから。


 未来への不安ばかりに支配されて生きていきたくはない。


「しかし、女神さまは力士がお好きなのですね?」

「昔少しだけ目にしたことがありまして」

「おお! 力士を! 妖精ではなく、ですよね? その言い方ですと」

「はい。人間の、です」

「おおお! それは凄い! さすがは女神さまです!」



 ちなみに、だが。


 ランディリーとフィリアにはあの後天罰が下った。


 ……いや、実際には、妖精たちが下したのだ。


 ある時、妖精が過去について尋ねてきた。そこで私はランディリーたちとのことについて話した。深く考えず軽い気持ちで話しただけだったのだけれど、それを聞いた妖精たちは怒り出す。女神さまに酷いことをした人間を放ってはおけない、と、攻撃的なことを言い出して。その流れで、妖精たちは、呪文を使ってランディリーらに罰を与えると決意した。


 まず力士風の妖精がランディリーとフィリアのもとへ向かった。

 いちゃつく二人の部屋に入り込むと、四股を踏んで大地を揺らしバランスを崩させ、二人を引き離す。

 そしてそのタイミングで十匹以上の妖精を呼び寄せる。

 五匹ほどの筋肉質な妖精は桃色の水着でランディリーを戸惑わせ、その隙に羽根を飛ばして攻撃、彼を沈めた。

 それ以外、八匹ほどの妖精は、ランディリーではなくフィリアの方へ向かう。

 物を投げつけて応戦するフィリア。しかし妖精たちは見事に回避。そして筋肉を大きくする呪文を唱えると、一斉に襲いかかり、パンチでフィリアを弱らせる。それでも諦めず魔法で対抗しようとするフィリアだったが、光の球を放つ直前一匹の妖精に顎を殴られ、それによって意識を失った。


 ……こうしてランディリーとフィリアは落命したのだった。


 その時の様子は水晶玉を通じて見せてもらったが、妖精たちはもうとにかくひたすらに強かった。驚いてひっくり返りそうになったくらいの強さ。明らかに、ただの人間がどうにかできる戦闘能力ではなかった。


 日頃は優しいが怒らせると怖い妖精なのだと学んだ。



 ◆



 私が女神となってから三十年が経った。


 今日は三十周年を祝う催しが開かれる。

 めでたい日だ。

 会う妖精会う妖精が笑顔でおめでとうを告げてくれる。


 ランディリーと婚約していた頃は、こんな未来が待っているなんて欠片ほども思わなかった。

 けれども不幸だったとは思わない。

 むしろ、私にこういう役割を与えてくれた運命の女神に、今は純粋に感謝している。



◆終わり◆

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