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王都から副長と会議の結果が送られてきて頭を抱えた。
「・・・いや、有り難いと言うか嬉しくは有るのだが・・・・・」
私が領主?辺境伯として北方四村を纏める?この何もない地に領都を作って?
「・・・はぁ・・・せめて先に彼等や客人を歓待出来る施設を用意してからにして欲しかった・・・・・」
副長からは進展なしで王都からは無茶振りをされて如何した者かと思案していると壁の向こうから緑虎殿が現れた。
「クライブ殿、何かお困りの事は御座いませんか?」
と緑虎殿に聞かれてつい愚痴を溢しそうになった。
「あ~・・・いや、特には御座いませんが、私がこの辺りの領主・・・緑虎殿と同じように担当になる事が決まりましたのでその旨をロビー殿にお伝え頂けると有り難い」
「おお、それはおめでとう御座います。ロビー殿には確かに伝えておきましょう」
「宜しくお願いします。それでですね、私共の主が私共ばかりが助けて頂くのも心苦しいので何かお困りの事が有ればと申しておりまして、先日頂いた獣の素材、皮や爪等を売った代金は其方のために使いたいのですが、何か入用な物が御座いましたら遠慮なく言って下さるようにロビー殿に合わせてお伝え下さい」
「ふむ・・・代金と言うのは解りませんが、差し当たってロビー殿が気にしている事と言えば東西の者達に助力出来ない事位でしょうか」
む、そうか彼等には貨幣と言う概念が無かったか・・・こちらで貯めておいた方がよさそうだ。
「・・・ああ、うちの時の様に支援したいが連絡が取れないと言う事でしょうか?」
「いえ、見かけた者に声を掛けてはいるのですが・・・その、我等の姿を見て悲鳴を上げて逃げてしまうのです・・・・・」
「ああ・・・それは心中お察しします。私の方から主に進言しておきます。場合によってはうちを通して東西に支援をする事になるかもしれませんがそれでも宜しいでしょうか?」
「ふむ、確かに我等が姿を見せて怖がられるよりその方が良いかもしれませんな。いやぁクライブ殿に相談して良かった、ロビー殿にそのように伝えておきます」
・・・・・なんて慈悲深い方達だ・・・自分達の印象なんて本当に如何でもいいと、多くの人が助かるなら自分達が怖がられている事など戴した事ではないと思っているのだ・・・・・
「クッ・・・ほ、他にも何か有れば気軽に相談して下さい・・・私に出来る事なら何でも致しますので・・・・・」
「はい、何か有ればそうさせて頂きます。では失礼します」
私は緑虎殿が壁の向こうに消えてからも暫く頭を下げ続けた。
両の眼から零れ落ちた涙が足元の土を黒く変えていく。
もしこの世に神が存在するならば、彼等は我々人間の代わりにこの世界を統べるために生み出されたのだろうと心の底からそう思った。
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ロビー達がグリム山南側を中心に活動している頃、ノーフェスト王国は着々と侵攻準備を整えていた。
「騎士団からの報告では陣地の構築が今日明日中に終わり、順次物資の輸送を開始するそうです」
「そうか、周辺国からの支援は如何なっておる?」
「其方も滞り無く届いているそうです」
「うむ。では近日中に出発出来ると聖王殿に伝えてくれ」
「はい、畏まりました」
「うむ・・・ああ、他の国への連絡は如何なっておる、モランド」
「其方はシュターフェンとオスタートの両国から声を掛けて貰っています。うちとは殆ど交流が有りませんので」
シュターフェンはノーフェスト王国の南東でオスタートは南西に位置する王国だ。
「そうか、色好い返事が来るとよいが・・・・・」
「そうですなぁ・・・・・」
結果としてロビー達が頻繁に声掛けを行った事が裏目に出る事になり、グランバート帝国は周辺国から孤立して行く事になる。
周辺国は友好国だったと言うのにだ。
幸いと言っていいかは解らないが、周辺国は震災の対応に追われてグランバート帝国に戦を仕掛けて来る余裕は無かった。
唯一敵対する事が無かった南のエストラング王国は沿岸部の町村全てが水没してした上に、国王を含めた主要貴族や騎士、兵士の半数近くが亡くなってしまい、一年近くも国内が荒れたまま支援を呼びかける事すら出来ず、グランバート王国からの親書に返事を出す事も無かった。
「・・・陛下・・・その、物資の事ですが・・・・・」
「言うな!解っておる・・・解っておるのだ・・・・・事が済み次第両国には我が直接謝罪に行き、場合によっては退位するつもりだ」
魔王討伐の呼びかけに応えてくれた両国から持ち込まれた物資の内1/3を横領した責任の全てをデュランダル国王は自分一人で負うつもりなのだ。
「へ、陛下!へリング殿下はまだ十二に御座います!継ぐには早過ぎます!」
「其方には苦労を掛ける事になるがその時は頼む」
「陛下・・・・・」
「なに、まだそうなると決まった訳ではない、が・・・・・」
「先に知られる訳には・・・・・」
「ああ、そうなれば義勇兵達の矛先は魔王では無く我等に向かうであろうよ・・・・・」
この事を知っているのは国王と宰相の二人だけだが、突然支援物資が増えれば不審に思う者もいるだろう。
それが義勇兵の到着と同時期であれば尚だ。
魔王討伐と言うウォルタードの言に乗ってしまったために破滅への道を進み続ける事しか出来なくなったデュランダル王。
そしてデュランダル王は謝罪し自ら命を絶つ事となるのだがノーフェスト王国が許される事は無く、周辺国から国交を絶たれ衰退して行く事になる。
ここまで読んで頂き有難う御座います。




