最終話:癒しは戦いの果てに咲く。私が選んだ“世界のかたち”
神殿、王宮、魔王領。
三勢力の代表が一堂に会する、前代未聞の調停会議が開かれた。
場所は、古代遺跡『ユグ・アルセリア』。
かつて神と魔が初めて手を取り合い、「癒しの契約」が交わされたという伝説の地。
今ここで、リセリア=アルセリアが“世界の癒し手”として最後の決断を下す。
「これより、世界癒合儀式を開始する」
巫女サーシャが静かに言い、魔王レギオスが目を閉じてうなずいた。
「──だが、選ぶのはお前だ。“癒し”とは、力ではなく意思の結晶。
だからこそ、“世界をどう治すか”を、お前自身が定めねばならん」
王族、神官、魔族、そして聖女候補たちも皆、リセリアを見つめている。
リセリアは、ゆっくりと前に出て、台座の中心に立った。
「……癒しっていうのは、誰かの痛みに寄り添うこと。
でもそれは、“ただ優しくする”ことじゃない」
光の柱が天へと昇り、七属性が交錯する。
リセリアの手のひらに、白く透明な魔力が集まっていく。
「神のルールは、清らかで正しい。でも、正しさは時に冷たい」
「魔の力は、自由で解き放たれる。でも、自由は時に誰かを踏みつける」
「だから私は、“そのどちらでもない、もう一つの道”をつくる」
台座が輝き、空が割れ、上空に巨大な癒しの紋章が浮かび上がった。
リセリアが、祈るように言葉を紡ぐ。
「誰かが泣いているなら、その理由を知る」
「誰かが怒っているなら、その痛みに手を添える」
「誰かが傷つけてしまったなら、謝る勇気を教える」
「──これが、私の“癒し”。」
魔王の目に、僅かな驚きが浮かぶ。
神官長が目を伏せ、誰にも見せないように涙をぬぐった。
サーシャがそっと微笑んだ。
「おめでとう、リセリア。“世界が新しく生まれ変わった”」
癒しの魔力が、世界を包む。
魔力が荒れた土地を蘇らせ、争いの火種を静め、
誰かが誰かを信じられる“ほんの少しの勇気”を与える。
──世界が、癒された。
それから数日後。
リセリアは、森の奥にある小さな薬草園に戻っていた。
空は青く、風は柔らかい。
「……やっと、全部終わったのよね」
ルークが鍬を担いで隣に座る。
「世界を救ったあとに畑仕事なんて、普通はしませんよ」
「うるさい。世界救うより、こっちのが大変なの。雑草抜きとか、根気がいるのよ」
リセリアはそう言って、しゃがみ込んでハーブを摘み取る。
「でもまあ、ちょっとだけはいい気分かな。“自分の選んだ癒し”が、ちゃんと届いたなら」
魔王からも神官たちからも、“癒しの管理者”として正式な役割が与えられた。
けれど彼女は、それを全部断って、こう言ったのだ。
──「私は薬草で世界を癒すの。そっちのが向いてるから」
「……ねえルーク」
「なんです?」
「次は、自分の心を癒していく番かなって。……ちょっとだけ思った」
ルークは驚いたように目を丸くしてから、ゆっくりと頷いた。
「なら、しばらくは傍にいますよ。
癒す力が、あなたの中からこぼれないように──」
リセリアは、そっと微笑んだ。
風がハーブの香りを運ぶ。
世界が変わっても、草の香りは変わらない。
きっと、それが“癒し”の本質なのだと私は思う。
ーfin
ここまで読んでくださった皆さま、本当にありがとうございました!
本作では、なろう系でも人気の高いテーマ──
「追放された主人公が実は最強」
「聖女ポジションの奪還と覚醒」
「神と魔に翻弄されながらも“自分自身の道”を選ぶ」
を取り入れつつ、
“癒し”をテーマにしたローファンタジー寄りの静かな物語として仕上げました。
また今回、読者が10話まで読んでから振り返ると気づくような小ネタや伏線の挿入にも初めて本格的に挑戦しました。
例:サーシャとの初対面時の微かな魔力流出描写、魔王の第一声、リセリアの最初の薬草園の位置など…
ご感想やブックマークを励みに、また次の物語を書けたら嬉しいです。




