表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【第一章改稿中】転生したヒロインと、人と魔の物語 ~召喚された勇者は前世の夫と息子でした~  作者: 田尾風香
第二章 旅の始まりと、初めての戦闘

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

48/679

急転

バトルシーンは難しいという気持ちがよく分かった、バトルシーンでした。

ここから、シリアスが加速していきます。

「おお! 驚いた! オレっちたちが魔族って分かるんだ?」

「みぃんな、お前達は一体なんだ、だったのに、おっどろきぃ~」

キャラキャラ笑いながら、目の前の魔族は、わざとらしく驚いてみせる。


「――……なぜ、魔族がこんな所にいる。まだ、国は落ちていないはずだ」

二人を睨み付け、アレクが絞り出すような声を出した。

剣を持つ手が震えている。


「さぁて、なんでだろうねぇ?」

女の魔族は、そんなアレクの反応を面白がるように、小馬鹿にしたような態度しか見せない。


「でも、んー、キミも悪くないけど、アタシはあっちの男の子の方が好みだなぁ。――って、アレ?」

女の魔族が目を向けたのは、暁斗だった。

目を向けられた暁斗は、身体がビクッとする。


(何なんだよ。これが、魔族? ――人と、変わんないじゃん)

歯がガチガチと音を立てる。聖剣を持つ手が震える。

こんなのと戦わなければいけないのか。


(……ムリ。そんなこと、できるはずない)

だって、相手は人だ。

そして、暁斗のすぐ近くにいた泰基もまた、魔族の姿を見て、血の気が引くのを感じていた。



「ねぇねぇ、ポール? 黒髪に黒目、それにあの剣って、例の聖剣とかいう奴じゃなぁい?」

「……おお、確かにそれっぽいな。へぇ、じゃあ、あんたら冒険者とかじゃなくて、もしかして勇者様ご一行とか? 面白ぇじゃん」

二人の視線を浴びて、さらに暁斗の震えがひどくなる。


「アハハ。震えちゃって、かーわいいの。安心して? このパールちゃんが、優しくしてあげるからね。――《炎の槍(フレイムランス)》!」

何の脈絡もなく放たれた魔法に、誰も動けなかった。


「《防御シールド》!」

しかし、ただ一人、リィカだけが動いて、暁斗を魔法から守った。

防御シールド》と《炎の槍(フレイムランス)》は、ぶつかって双方ともその威力が消滅する。

リィカは、そのまま魔族から守るように暁斗の前に立った。


「なぁに? あんたはポールの相手してりゃいいんだけど。邪魔しないで」

「パールさん、と言いましたっけ?」

リィカは、不敵に笑ってみせた。


「わたしが誰の相手をするかは、わたしが決める。女同士、とことんやり合いましょうよ」

「イイコト教えてあげる。――アタシね、あんたみたいな生意気な女、大っ嫌いなの」

正面から突っ込んできたパールを、リィカは迎え撃った。



※ ※ ※



「あちゃあ。可愛い子ちゃん、パールに取られちゃったか。残念」

そんな残念そうな様子もなく、あっけらかんと言うポールを、アレクたちは睨み付ける。


「でも、勇者が意外だなあ。魔国にある勇者の話って、大体おっかない話ばっかだけどなぁ」

暁斗は身体の震えが止まっていなく、泰基も顔面蒼白だ。

そんな二人を目の端で捕らえて、アレクは小さく指示を出す。


「(ユーリ。お前は、二人を頼む)」

「(分かりました)」


「(バル。お前は俺と一緒に、こいつを片付けるぞ)」

「(……リィカは、いいのか)」

「(持ちこたえられると信じるさ。さっさとこっちを片付けて、助けに行くぞ)」

バルがうなずくのを見て、改めて魔族を睨み付ける。


「お、相談終わり? オレっちって優しいだろ? ちゃんと待っててやったんだぜ?」

「――優しいついでに、何でこんなところにいるのか、教えてくれると有り難いんだが?」

「アッハッハ。懲りないねぇ。――ニンゲンは、オレっちたちが真っ正面からしか攻めてこない、と信じてるんだからさ」


その言葉に、アレクも、バルも、ユーリも、その表情を険しくさせる。

少なくとも、今までは真っ正面からしか攻めてこなかったはずだ。


だが、もし、そうでないのなら。

――世界中に、すでに魔族が潜り込んでいるのか。



※ ※ ※



「【隼一閃しゅんいっせん】!」


戦いの火蓋を切ったのは、アレクの剣技だった。

だが、高速で迫る三日月型の斬撃を、ポールは、右手だけで受け止めた。


「…………なっ!」

「へぇ。いいねぇ、あんた。これ、ニンゲンが使う剣技だかってヤツだろ? 他のヤツが使ったのは、ただのそよ風だったけど、ちゃんとあんたのは痛かった……ぜ?」


最後の言葉と一緒に、地面を蹴り、一気にアレクとの距離を詰める。

繰り出されるパンチを慌ててかわす。と、今度は左足で強力な蹴り技が飛んできて、後ろに飛んで、距離を置く。


「……格闘技?」

そういうものがある、ということは知っていても、実際に見たのは初めてだった。

周りにいたのは、剣を使う人たちばかりだった。


「躱してばっかじゃ、勝負になんねぇぜ!」

もう一度突っ込んでくるポールの前に、バルが立ちはだかる。


「――ハン! 今度はあんたが相手ってか?」

繰り出された拳を、バルは剣で上から切り下ろそうとして……、


ガキ!


まるで固い石に切りつけたかのような感触に、眉をひそめる。

見れば、剣が当たったはずの腕には、傷一つ付いていない。


「……どういうことだ」

「さあ? どういうことでしょう?」

思わずつぶやいたバルに、ポールが返すのは小馬鹿にした物言いだ。


――その時。


「『風よ。剣に纏い、宿りて、その力を示せ』――《風の付与ウインド・エンチャント》!」

アレクが、エンチャントを唱えた。横から斬りかかる。

慌ててポールが躱そうとしたが、アレクの方が早かった。脇腹を少し切り裂く。


「……くそ!」

「『水よ。剣に纏い、宿りて、その力を示せ』――」

バルも同じく、エンチャントを唱える。

詠唱中、バルに攻撃をしかけようとしたポールを、アレクが遮り、袈裟切りにする。


「《水の付与(アクア・エンチャント)》!」

ギリギリで躱されたが、バルの詠唱が終了した。

水のエンチャントは、水で質量が増し、さらに鋭さをアップさせる。


「俺たちを舐めているから、魔法詠唱される余裕なんて与えるんだよ!」

アレクが斬りかかる。

受け止めようと出された右腕を、肘から切り落とす。


「ぅぎゃああああああああああああああああ!」

悲鳴を上げながら距離を取ろうとするポールに、バルが追撃し、袈裟懸けに切り付ける。


「……………ぁ……?」

自分の身体から流れる出血を信じられないように見つめながら、ポールは絶命した。



「「ふうぅぅ」」

アレクとバルは、そろって息を吐き出した。

剣で切れない相手には、剣技よりも、エンチャントで鋭さをアップさせて、攻撃した方がダメージが通る。


冒険者時代、魔物相手に何回かやったことがあるからこそ、すぐにその手段を選ぶことができた。


「よし。後はリィカを……」

「待て、アレク。リィカもだが、アキト達もいねぇぞ」


慌てて周りを見れば、暁斗も泰基も、二人についているはずのユーリも、そこにいない。

リィカは、戦いながら場所を移動していっただけか?

戦いに集中していて、全く気付かなかった。



(どこに行った)

アレクが気配を探せば、すぐに見つかった。


「森の方だ。行くぞ!」

二人は駆け出した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ