表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【改稿中】転生したヒロインと、人と魔の物語 ~召喚された勇者は前世の夫と息子でした~  作者: 田尾風香
第一章 魔王の誕生と、旅立ちまでのそれぞれ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

46/725

朝食時

「はぁ? 光魔法ですか?」


 翌朝、泰基は朝一でユーリの部屋へ押しかけてそれを伝えると、案の定怪訝な顔をされた。



 昨晩、泰基は発動した光魔法に驚いた。そして、色々と試してみた。その結果、水魔法でも光魔法でも《回復ヒール》が使えた。……使えてしまった。


 魔法は、火・水・風・土の四属性のいずれかか、光魔法かの二択。四属性も光魔法も両方使える人はいない。そういう説明を受けているから、泰基もそういうものだと思っていたのだ。だというのに、泰基は水と光の魔法を発動させてしまった。これは明らかに異常なことだ。



 ユーリは泰基の顔を見て、嘘はないと思ったのだろう。戸惑う様子を見せつつも、ユーリは部屋の中へ泰基を招き入れた。


「とりあえず、使ってみてもらっていいですか?」

「ああ」


 フゥと息を吐く。色々試しているうちに、無詠唱での発動も成功させてしまった。……少々夜更かししてしまったが、すでに癌も治っていることだし、決して無茶はしていない、と泰基は自分に言い訳した。


「《回復ヒール》」


 唱えると、その手に光ったのは、水魔法の淡く青い光ではなく、光魔法の薄い金色に輝く光だ。それを見たユーリは呆然とした。


「……本当に、光魔法ですね」


 額に手を置いて「ええと」とつぶやいて、混乱と戦っているようだ。


「……そうですね。まぁ異世界から来た勇者様ですから、常識から外れていることがあっても、おかしくないとは思いますが」


 泰基に言っているというよりは、自分自身の考えをまとめるような言い様だ。それでもややしばらく、考え込むように下を向いていたが、やがて考えがまとまったのか顔をあげた。


「実際に使えるものを否定しても仕方ありません。父に報告はしますが、おそらくは『勇者様だから』で話は終わると思います。見せてほしいとは言うと思うので、そのときにはご協力頂いてよろしいですか?」

「ああ、分かった」


 思っていたよりは軽い反応だ。「勇者だから仕方ない」で済むのはいいんだろうかと考えてしまうが、下手に騒ぎになるよりはずっとマシだと、泰基は思うことにした。



 そして、すぐに慌てた様子でやってきた神官長に、ユーリの言った通りに「見せてほしい」と言われて、《回復ヒール》を使う。絶句していたが、やがて気を取り直した神官長は、やはり「勇者だから」で自らを納得させたようだ。


 泰基がふと気付いて、質問する。


「最初に魔法の適性を調べたときに、なぜ分からなかったんですか?」

「あれは、四属性の適性について調べるものですから、光魔法の適性の有無については調べられないのです」


 そうなのか、と思う。光魔法は教会で祝福を受けて得るものだから、確かに光の適性を調べる必要はないのかもしれない。



※ ※ ※



「泰基、回復魔法を使えるようになっちゃったんだ……」

「……なっちゃったってどういうことだ?」


 朝食時、それを言ったら、リィカが変なところに反応した。回復魔法が使えるようになったことに対しての不満のようなものが見て取れる。


「……だって、わたしはいくら練習してもまったく発動しないのに」

「むしろ、その方が不思議なんだよな」


 詠唱すれば発動するというのが、この世界での魔法の常識であり、こうして使えるようになった今、泰基もそれは正しいと思っている。だというのに、まったく使える気配のないリィカが、泰基には不思議だった。


「それよりもリィカ、光魔法を使えることに驚いてくださいよ」


 ユーリのツッコミに、リィカの目が分かりやすく左右に動いて動揺を示した。


「そ、その、わたしが使えるようにならないから、泰基も簡単には使えないだろうなって思っていたので……すみません……」


 別に謝罪することではないと泰基は思うし、ユーリもそれを望んでいたわけではないだろう。うつむいてしまったリィカをユーリが困ったように見るが、何も言わない。

 代わりに口を開いたのは、アレクだ。


「リィカ、いいから食べよう」

「――は、はいっ」


 弾かれたように顔を上げて返事をするリィカに、アレクが見せるのはやはり不満そうな顔だ。なまじ、泰基や暁斗に対して気軽な態度を見せているからこそ、余計に不満を感じてしまうのだろう。


 その様子を見て、泰基は思う。


(やはりリィカも渚沙と同じか? 無意識に男をホイホイ引っかけるの、やめて欲しいんだけどな)


 泰基はコッソリとため息をついたのだった。



※ ※ ※



 一方のアレクは、言われて慌てて食べ始めたリィカを見ていた。


 小さな口を開けて食べている。その顔が、時々「おいしい」とでも言うようにほころびる。

 王宮に泊まり始めた頃はそんな表情を見せることはなく、終始強張った顔をしていたが、最近になってようやく少し緊張が解けてきたのだろうか。


 多少のぎこちなさはあるが、フォークやナイフも使って食べている。平民は手づかみで食べることもあると聞いたことがあったが、リィカにその様子はない。


(むしろ、手づかみで食事をしている姿を見た方が、良かったんだろうか)


 アレクは、そんなことを思ってしまう。手でぐしゃっと掴んで、ボロボロこぼしながら食べている姿を見れば、今のこのリィカを見て思う自分の不可解な気持ちは、消えるように思うのだ。



 ――あのとき。

 魔王が誕生した直後、魔物の群れを突破した先で、初めて魔法を使うリィカを見たあのとき。そして、魔物に貫かれる寸前のリィカの助けたあの瞬間。あのときから、アレクは自分の気持ちが分からなかった。


 リィカを見ると、心がかき乱される。

 リィカに魔法を習っているユーリが羨ましい。リィカと対等に話をしている暁斗や泰基も羨ましい。そのくせ、アレクと話をするときには、いちいち動揺して遠慮する様子を見せるのが、妙に腹立たしく思う。


 それでも、リィカが近くにいると嬉しい。こうして王宮へ宿泊するようになって、顔を合わせる機会が増えたことが嬉しいのだ。


(だが、謎もあるんだよな)


 昨日の、勇者の実戦練習でのことだ。

 アレクも経験あることだが、訓練で戦えるようになることと、実際に魔物と向かい合って戦うのはまったく違う。初めてゴブリンと対峙したときに恐怖で動けなくなってしまったことは、今でもはっきり覚えている。


 だから、暁斗も泰基も動けなくなるかもしれないと思ったのだ。だが、想像していたよりずっと戦うことができていた。だから、これなら大丈夫だと安心していた。――暁斗が嘔吐するまでは。


 一体どうしたのかと、体調が悪かったのだろうかと、そのときは思った。けれどリィカは、暁斗の背を撫でながらこう言ったのだ。


『がんばったね、暁斗』


 体調が悪いのかと心配するのではなく、優しく声をかけたリィカを、そのときはまったく理解できなかった。


 その後に暁斗が「血の匂いで気持ち悪くなった」と言ったときも、よく理解できなかった。けれど思ったのだ。もしかしてリィカはそれを分かっていたから、心配するのではなく労って慰めたのだろうかと。


 だがなぜそんなことが分かったのかと、それがアレクには不思議であり……、リィカのことが分からないことを、悔しく思うのだ。



「食事中にすまぬが、失礼する」


 ノックと共に扉が開かれ、六人で食事をしていた部屋に入ってきたのは、国王とアークバルト。そしてその後ろから王妃とレーナニアも姿を見せた。


 アレクは驚いて立ち上がる。バルとユーリも立ってその場で一礼したところで、国王が笑った。


「礼はいらんから、席に座っておれ。――さて、アキト殿、タイキ殿。誠に申し訳ないのだが、頼みたいことがありましてな」


 国王のその前置きに、アレクは嫌な予感がした。


「貴族どもの要求を突っぱねることができず……、勇者様ご一行様の旅の無事、そして魔王討伐を祈ってのパーティーを開くことになりました。つきましては、勇者様方にはそのパーティーへご出席をお願いしたい」

「えーっ!?」


 暁斗が思いきり不満げな声をあげた。アレクも同じ気分だった。貴族の要求によって開かれるパーティーなど、碌なものじゃない。これまで勇者たちと接点を持てなかった貴族たちが、これ見よがしに勇者にすり寄って媚を売るのだろう。


 そして、そんな勇者たちとずっと行動を共にしていたアレクたちへは、嫌味が投げつけられるのだ。


「本当に申し訳ない。ですがどうか、頼めないでしょうか」


 国王が暁斗へ対して頭を下げた。それを見た暁斗が怯んだのが分かる。泰基をチラリと見たら、渋い顔をしていた。


 この要求に「否」と言えるのは、この二人のどちらかだ。だがアレクはため息をついた。国王が頭を下げてまで頼んだことを、拒否できるような二人ではないのだ。


「……分かりました」


 泰基が、仕方なくといった様子を隠す事なく答える。それに国王が口を開きかけたが、それより早く言ったのは……王妃だった。


「良かったわ。勇者様、ご協力感謝申し上げます。――さて、ではリィカさん、行きますよ」

「え?」


 唐突に名前を出されたリィカが、驚きと疑問の声をあげる。アレクも驚いて、一体どこへ行くのか聞こうとしたが、王妃の笑顔に言葉を失う。


「朝食の続きは、衣装を合わせながらできるから安心なさいね。レーナニアも行くわよ」

「はい」


 アークバルトの婚約者であるレーナニアも、なぜかとても楽しそうな顔をしている。


 そして、まったく事情を分かっていないリィカの両脇を、ガシッと侍女たちが掴む。身を翻して部屋から出て行く王妃達の後を追って、そのまま連れ去られたのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ