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【第一章改稿中】転生したヒロインと、人と魔の物語 ~召喚された勇者は前世の夫と息子でした~  作者: 田尾風香
第一章 魔王の誕生と、旅立ちまでのそれぞれ

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27.暁斗④

剣技名一覧は、さらっと読み流してもらって大丈夫です(^0^)

色々、作者の主観的考えも入っていますが、実際にはどうなんでしょう?

「暁斗! 大丈夫なのか? 具合は?」


父さんが、部屋に帰ってきた。


「……もしかして、アレクに聞いた?」

「ああ」


うなずく父さんに、しまったなと思う。きっとこれは治療も放り出してきてる。


「……今は少し落ち着いてきたから」


だから大丈夫だと言っても、父さんの表情は心配そうなままだった。

コンコン、とノックがあって、アレクが入ってきた。

その後ろには、ユーリと神官長さんもいた。


「アキト様。具合が悪くなられたとか。少し見させて頂いてよろしいでしょうか」

「……はい」


返事をすると、神官長さんが近づいてきて、オレの頭や首筋に手を置いていく。


「魔法を使って診察するんじゃないんですか?」


不思議に思ってそう質問する。


「……アレクシス殿下から伺ったところですと、詠唱している途中で具合が悪くなった、と言うことでしたが、間違いはございませんか?」


黙ってうなずく。


「その症状について、過去の文献で見かけたことがありましてな。もしそうであれば、魔法を使うのは逆効果なのですよ」


「症状って何ですか?」


「魔力に対しての拒否反応です。魔法を使うために詠唱する時、体内にある魔力が動くのですが、その魔力が動くことに対して拒否反応を起こす人が、ごく稀にいるそうです」


「拒否反応……?」


「はい。体内の魔力の流れが乱れるのです。そして、魔法をかけると言うことは、その人の体内の魔力に干渉することと同義です。ですので、例えそれが《診断ディアグノーゼ》程度の軽いものであっても、拒否反応が起こる可能性があります」


「……じゃあ、オレ、魔法を使えないってことですか?」


それじゃ、できるのはただ聖剣を振り回すことだけだ。エンチャントも剣技も使えない。


「父様、その症状に対処法はないんですか?」


黙ってしまった神官長さんにユーリが問いかける。


「……その文献にあったのは、一度何でもいいので魔法が使えてしまえば、その後は問題なく使えるようになる、ということです。しかし、使えるようになったという例は、ほとんどないようでして……」


「使えてしまえばって……」


つまりそれはあの気持ち悪いのを我慢して、何としても詠唱しろって事?


「……そうですか、分かりました。――父さんの治療って、途中なんですよね? 続き、やってきて下さい」


「いえ、今日の所は終わりですので。――タイキ様、まだ治療は始まったばかりですから、無理はしないで下さい。ではお大事に」


そう言って、神官長さんに続いて、アレクとユーリもこっちを気にしながら部屋を出て行った。


「――父さん、なんか無理したの?」

「アレクから話を聞いて、ここまで全力疾走したことくらいだな」


何してるの、と笑うと、父さんは真面目な顔をして、


「それで、明日からどうするんだ? 練習、続けるのか?」

「うん。魔法が使えなきゃ、何もできないから」

「……そうか。ほんっとに、この負けず嫌いが……」


その言葉に笑った。



「それで、剣の方はどうだったんだ?」


「コテンパンだよ」


「お前だって全国大会常連なんだから、弱いはずないんだけどなぁ」


「日本の剣道と一緒にしないでよ。相手の気迫に押された事はあるけど、あそこまで動けなくなったのは初めてだよ。――あ、そうだ。これ」


取り出したのは、剣技名一覧。日本語で書かれたものを借りてきたのだ。

簡単に剣技について説明すると、父さんも面白そうな顔をした。


――父さんだって、こういうの好きだもんね。



横の切り払い 火 【火鳥炎斬かうえんざん

       水 【青鮫剣破せいこうけんぱ

       風 【隼一閃しゅんいっせん

       土 【走鹿駿撃そうろくしゅんげき


上からの切り落とし 火 【鳳凰鼓翼斬ほうおうこよくざん

          水 【鯨波鬨声破ときこうせいは

          風 【百舌衝鳴閃もずしょうめいせん

          土 【犬狼遠震撃けんろうえんしんげき


直接攻撃 火 【金鶏陽王斬きんけいようおうざん

     水 【天竜動斬破てんりゅうどうざんは

     風 【天馬翼轟閃てんまよくごうせん

     土 【獅子斬釘撃ししざんていげき


突き技 火 【荒鷲尖嘴斬こうじゅせんしざん

    水 【旗魚剣尖破きぎょけんせんは

    風 【冠鷹飛鉤閃かんようひくうせん

    土 【猪勇突角撃ちょゆうとっかくげき



「なるほど、中二病ね。確かにそれっぽいな」


父さんが苦笑いした。


「ね、どう思う? かなり昔ってどのくらいか知らないけど、そんな昔の日本人ってこんな技の名前、考えないよね?」


「そうだな。そもそも召喚なんだから、どこの時代から来たっておかしくないんじゃないか?」


「つまり、そのかなり昔の人が、もしかしたら俺たちよりも未来の日本人かもって事?」


「一つの可能性として、なくはないと思うぞ?」


確かに、時間の流れなんて、考えて分かることじゃないけどさ。


「……でも、こいつ、ただの生き物好きかもな」


「なんで?」


「お前が、何か技名に動物の名前を入れるなら、何を思い浮かぶ?」


「えー? 龍とかトラとか? あ、ハヤブサも格好いいかも。早くてシュッて飛ぶイメージ」


「まあ、そんな所を思い浮かべるよな。――確かに、色々格好良さそうな名前も入っているけど、クジラとか百舌とか、技の名前にいれるか、って言ったら、あまりイメージないよな。旗魚、『きぎょ』ってフリガナあるけど、これは本来カジキと読むはずだが、これもあまりイメージがない」


まあ、俺の主観だけど、と父さんは言うけど、何となく分かる。

敵として出てくるかどうかはさておき、技の名前として考えたときに入れるとなると、違う気はする。


――そんなことをしゃべっているうちに、だんだん気持ち悪いのも落ち着いてきた。



※ ※ ※



その日の夜。

オレは夢を見ていた。


――よく見る夢だ。


夢の中のオレは赤ん坊で、ギャンギャン泣いている。

見えるのは、刃物を振り上げた、知らない男。


そして、オレに背中を向けて、その刃物の男の前に立っている女の人。

男の持つ刃物が、女の人を刺した。


でも、その女の人は、刺された状態で、刃物の男にしがみつく。――オレを守るために。

女の人の背中から、刃物の先端が見える。血が滴り落ちる……。



「――――――――!!」


ガバッと飛び起きた。

呼吸が荒くなるのを、必死で押さえ込む。


覚えているはずのない、生後何ヶ月かでの出来事なのに、よく夢に見る。

自分が、精神的に不安定になっていると、特によく見る気がする。


分かってる。女の人は、オレの母は、オレを命がけで守ってくれた。でも……。


「……母さんなんか、キライだ」


いつものように、そうつぶやく。

それで、夢の中の母親の姿を消してしまいたいのに……いつまでも残ってる。



※ ※ ※



召喚されて三日目。

朝起きれば、昨日と同じく、バルもユーリもいた。


体調は、と聞かれたので、大丈夫だと答える。ついでに、魔法の練習もすると言ったら、何とも心配そうな顔を向けられた。


「絶対に無理は駄目ですからね? 魔法の練習の時間には、僕も戻ってきますので」


「あれ、ユーリ、どこか行くの?」


「タイキさんの治療は、他の神官がやってくれることになりましたから。僕は、リィカの所に行って、無詠唱魔法を教わりに行こうかと」


旅に出る前に、多少でもできるようになっておきたいと神官長さんに言っていたそうだ。


「……ユーリ、本当に行くつもりなのか?」


いささか低い声でアレクが言って、それでオレも思い出した。


「そういえば、今日じゃなかったっけ? その人から旅の同行の返事をもらうのって」


「そうなんだ。それは夕方に行くと決めたんだけどな。ユーリが、その前に魔法教わりに行くって言っているんだ」


「……それって、すごく迷惑だと思うけど」


「まあ、本当に邪魔になりそうでしたら、すぐ戻ってきますから」


ユーリはそう言って、食事をした後に出かけていった。



いいのかなあ、と思ったら、まさか、その本人を連れて城に戻ってきた時には、驚いた。

簡単に挨拶だけして終わっちゃったけど、……メチャメチャ可愛くて驚いた。



午後、魔法の練習。

やっぱり気持ち悪さが先に来て、詠唱すらまともにできない。


レイズクルス達は、完全に知らんふりだ。

魔法を使えるようにならない限り、自分たちが教える事は何もない、と言い切った。


どうでもいいと思っていた相手のはずなのに、蔑んだ目で見られたことが、思いの外キツかった。



「一つ、提案なのですが、アキトの魔法、リィカに頼ってみませんか?」


結局魔法は使えないまま、アレク達にストップを掛けられて部屋に戻って、ベッドに強制的に休ませられた状態で、ユーリが切り出した。


「彼女は、無詠唱で魔法を使うでしょう? どうやっているのか想像も付きませんが……、だからこそ、詠唱以外の方法でアキトが魔法を使えるようにできるかもしれません」


「アキトの場合、詠唱が問題じゃなくて、魔力が動くのが駄目なんだろう? 無詠唱だからって、どうにかなるものでもないんじゃないか?」


「ですけど、このままだとまた今日の繰り返しですよ。違う方法があるんですから、試してみるのはいいと思います」


けど、アレクは腕を組んで考え込んだ。


「なんか問題あんのか?」

「……リィカ、すごく緊張していたよな。来てもらうのが悪い」

「……ああ、確かにガチガチでしたね」

「オレがリィカの所に行くのは?」


別にこっちから行けばいいんじゃないか、と思ったんだけど、アレクは難しい顔をしたままだ。


「本当に悪いが、アキトの外出許可は難しい。外で具合が悪くなったら、連れて帰ってくるのも大変になるし、仮にその状態で襲われでもしたら、対処が困難になる」


「……やっぱりリィカに事情を話して、こちらに来てもらいましょう。緊張については、まあこう言っては何ですが、たいした問題ではありませんよ。フォローが必要ならすればいい」


「それもそうか」


アレクがコホンと咳払いをして、


「――明日、俺が行って話を……」


「いや、いいですよ、アレク。明日、魔法を習う約束をしていますから、その時に話します。了解してもらえれば、午後の練習時間に連れていきますよ」


「――…………そうか………」


あれ、なんかアレクが落ち込んでる?



(リィカか)


ほんの少し挨拶しただけだけど。

オレのことを「暁斗」と呼んだ時、目が、声が揺れていた。


――それが、すごく気になっている。



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