4
第1の月・光月宮 12日
親愛なるお姉さまへ
聞いて、お姉さま!
冒頭からこんなテンションでごめんなさい。でも、どうしても聞いてほしいの!
本当はね、お姉さまには黙っておこうと思ったのよ。
心配かけちゃいけないって思って。
でも、エリオトおじさんとエルストが、知らせておいた方がいいっていうから、一応。
あたし、どうやらここ数週間、ストーカー被害というものに合ってるみたいなの。
相手は、貴族の男。
仕事先にも、他の場所にも突然現れるその男は、とってもしつこく絡んでくるわ。
昨日も、廊下を歩いている間中、延々話しかけてきて、事ある毎にベタベタと触ってこようとする始末。気持ち悪くて、嫌になっちゃう。
でもね、その男、別にあたしのことが好きで執着してるってわけじゃないのよ。
実は、お城の中でも女好きで有名な人なの。
自分の容姿を見て、目をハートにしなかったあたしに興味を持ったみたい。こんな傍迷惑な話ってあるかしら。
休憩時間に先輩や他の同僚に相談しても、「我慢してれば、そのうち飽きてくれるわよ~」と、クッキーを齧りながら生返事を返されただけ。
あの時の絶望と憎しみは、ちゃんと心のノートに削り書きしたので、みんな覚悟しておくといいわ。
ただ、レア・ミュライエ王女だけは、
「堪え難く不快であれば、したたかに凶器で打ち据えて、テラスから放り出してもよくってよ?」
と、親身な言葉を返してくれたのだけど。
…… その許しがあれば、十分だったわ。
王族である彼女のことは好きじゃないけど、あの言葉は、あたしに何より力と勇気をくれたの。
だって、ストーカー男は、王女の同母兄君なんだもの。
相手が貴族、しかも王族だなんて最悪! 手を出しにくいじゃないと思いつつ、歯ぎしりしてたんだけど、これで問題解決だわ。
妹君から、直々にお許しを頂いたのだから、何をしたって許されるわよね?
免罪符って、素敵。
というわけで、今日の午後に早速、抱き付いて来ようとした相手の脇腹をしたたかに殴りつけて、テラスから中庭の茂みに放り投げてみました。
一階だし、死にはしないでしょ?
か弱い女子の細腕で撃退されるなんて、貴族の男――― しかも、王子としては、他に知れたくないほどの恥よね。
これで懲りて、二度と顔を見せないでくれるといいのだけど。
悩める乙女の願いを女神様が叶えてくださるよう、お姉さまもお祈りしておいてね。
なんだか男性が嫌いになりそうな貴女の妹
クレア=ハイルより
追伸
今朝、この手紙を出そうとしていたら、またあの変態に抱き付かれそうになりました。ゴキブリ並にしつこい男だわ。
ねえ、お姉さま。
畑で使う害虫退治用の薬、まだ余ってるかどうか確かめておいてくれる?




