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図書館

※修正版

役所での戸籍登録は滞りなく終わった。


手続きを済ませると、ティオが借りている宿屋へと向かった。見上げれば、すっかり日が落ちている。空は深い藍色に染まり、星が一つ、また一つと瞬き始めていた。


しばらく石畳の道を歩くと、温かな明かりが灯る建物が見えてきた。宿屋だ。

併設されている食堂に足を踏み入れる。木のテーブルと椅子が並び、暖炉の火が部屋全体をほんのりと照らしている。


「リュート君、何が食べたい?」


セレナが優しく聞いてくれる。


メニューを見ても文字が読めないので、適当に指差した。


「星麦のポタージュね。いい選択よ」


しばらくすると、湯気の立つ器が運ばれてきた。

一口すくって口に運ぶ。


「――っ!」


思わず目を見開いた。

粒のない滑らかな舌触りなのに、麦の柔らかい甘味がしっかりと広がる。喉の奥で小さな星が弾けるように、温かさがじんわりと染み渡っていく。

癒しの味だ。


「おいしい・・・」


思わず呟くと、セレナとティオが微笑んだ。


グロウルベアとの死闘、森での彷徨、初めて会う人々・・・緊張の連続だった一日が、この温かいスープで少しずつ溶けていく気がした。


食事を終えると、坑道の奥から湧き出る温泉に案内された。体の芯まで温まり、疲れが抜けていく。

そして、ティオが俺の分の部屋まで借りてくれていた。

『サンキュー、ティオさん!』っと心の中で感謝する。


「それじゃあ、先に寝かせてもらうね。お休み~」


セレナが軽く手を振って自分の部屋へ向かう。


「お・・・おやすみなさい」


「リュート。一人で寝れるか? 寝れないなら一緒に寝るが・・・」


ティオが気遣ってくれる。


「大丈夫!」


「そうか。何かあったら隣の部屋にいる俺のところまで来るんだぞ。おやすみ」


「うん! おやすみなさい!」






二人のドアが閉まる音が聞こえた。


俺も自分の部屋に入る。

扉を開けた瞬間、木の香りと乾いた藁の柔らかい匂いがふわりと漂ってきた。

壁、床、家具・・・すべてが木製だ。ところどころ節の模様や小さな傷があるが、それが逆に落ち着きを生んでいる。


窓はカーテンで閉められている。朝早く起きて開けてみよう。


ベッドは太い木製の枠に、藁と羽毛を混ぜたマットレスが敷かれている。シーツは麻布で少し粗いが、丁寧に洗われていて清潔だ。厚めの毛布が一枚。寝心地はとても良さそうだ。

ベッド脇には、旅人が剣や杖を立て掛けられる細い木のスタンドもついている。

そのふかふかそうなベッドに、思わずダイブした。


「・・・・・・ふあああぁぁぁ! 疲れた~」


子供の演技を続けるのは想像以上に疲れる。

でも、衣食住のすべてが揃った。これだけでも大きな前進だ。


文字はあの二人に教えてもらえばいい。魔法もセレナに教わればいい。ある程度強くなったら冒険者になって、お金を稼げばいい。


「さてと、明日からはこの世界の文字や動植物について勉強するか」


静かで落ち着いた空気の中、外の風が窓を揺らすたびに小さな音がする。

部屋にある丸型の木製テーブルに座り、明日の計画を立てた。

計画を立て終えると、ベッドに入ってすぐに眠りに落ちた。







朝早く目が覚めた。

カーテンを開けて窓の留め金を外し、押し開ける。ひんやりとした朝の空気がふわりと流れ込んできた。

夜露の香りを含んだ風が、眠気を一気に吹き飛ばす。


外には薄い霧が村の屋根の間をゆっくりと漂っていて、ところどころから差し込む朝日がそれを金色に染めている。


屋根の上の小鳥たちが一斉にさえずりを始めた。その声は澄んでいる。まるで「今日も頑張れ」と背中を押してくれるようだ。


遠くでは森の木々が朝の風に揺れ、葉が光を反射してきらきらと輝く。村の通りでは、パン屋の煙突から細い白煙が上がり、焼きたてのパンの匂いが風に乗ってほんのり届く。

どこかで牛の鳴き声がして、そのすぐ後に、子供たちが笑いながら駆けていく足音が聞こえる。




異世界の朝は、静かで、温かくて、昨日の疲れをまるで吸い取ってしまうようだった。







しばらくこの光景を眺めていると、ドアからノック音が聞こえた。


「おーい、起きてる?」


ティオの声だ。

さてと、今日も一日、子供の演技を頑張りますか。


「うん! 起きてるよ!」


ドアを開けると、そこにはティオとセレナがいた。


「そういえば、リュート君って読み書きできる? もしできないのなら私が教えてあげる」


「いいの? ありがとう」


それからは、セレナと文字の勉強をしたり、ティオとは剣の練習をしてもらった。

二人とも教えるのがとても上手で、一週間程度でこの世界の文字の読み書きができるようになった。

剣も同様だ。ひたすら練習を重ねると、いつの間にかレベルが20を超えていた。


「リュート、お前の成長スピード、ちょっと異常だぞ・・・」


ティオが驚いた表情で呟く。


「私も初めて見たわ、こんな成長速度・・・」


セレナも目を丸くしている。

俺も驚いている。転生者という職業のおかげだろうか。






そして今日。

この世界の魔物について調べようと思う。ついでに、アルス家のことも。

そのため、二人に魔物の図鑑が置いてある場所を聞いた。


「魔物の図鑑が置いてある場所? 俺は知らんな・・・」


「この村の一番大きい図書館にはあるかも。今から行く?」


「行きたいです!」


俺とセレナは図書館に向かう準備を始めたが・・・


「悪いがセレナ、リュート。今日、俺はギルドの依頼でグラウルウルフの討伐をしなくちゃならない」


「わかったわ、ティオ。・・・まあ大丈夫だと思うけど、気をつけてね」


「ティオお兄ちゃん、行ってらっしゃい~」


準備が終わって、俺とセレナは図書館へ、ティオはグラウルウルフの討伐へと向かった。






村を歩いてしばらく。


「着いたわ。ここが図書館よ」


村の外れにぽつんと立つその建物は、大きな屋敷ほどではないが、普通の家よりも少しだけ背が高い木造の建物だった。

屋根は深い緑色の瓦で、朝露を受けてきらりと光っている。


外壁は古い木材に白い漆喰を部分的に塗り込んだ温かい造りで、壁のあちこちにツタ植物が絡まり、小さな紫の花が点々と咲いている。


入口には丸いアーチ状の木の扉があり、取っ手には本の形を模した鉄の装飾が施されている。

窓は少し小さめで、ステンドグラスのように淡い色が差し込む魔法ガラスがはめ込まれている。日光を受けると、図書館の周りに優しい色の光が広がり、まるで本を読む者を歓迎しているようだ。


入口脇には小さな木製の掲示板が立っていて、「本の返却日」や「物語会のお知らせ」が、薄茶色の紙に手書きで貼られている。

図書館の内装も想像していた以上にすごかった。


天井は低めだが、太い梁が走り、年季の入った木の温もりが感じられる。

足元には来館者が土を落とすための小さな麻のマット。その横には「静かにお願いします」と可愛らしい字で書かれた札が置かれている。


部屋のほとんどを占めるのが、壁一面の木製本棚だ。

本棚は天井すれすれまであり、色褪せた革表紙の魔法書、民族の伝承、古地図、そして旅人が置いていった旅日記まで並んでいる。


俺たちはたくさんの本棚の中から、魔物の図鑑を探し始めた。

探し始めてから一時間が経過した。


魔物の図鑑は見つかったが、アルス家については何も出なかった。

まあ、存在してなかったらしいし出るわけないか。


アルス家のことは諦めて、魔物の勉強を始めた。この世界の歴史も少し気になったから、合わせて読んでみることにした。






しばらく読んでみて、分かったことがある。


まず、魔物のランクだ。

魔物は通常S~Fランクまであるらしい。

元の世界の兵器で例えると


Fランク:金属バットで平均的な成人男性が難なく倒せるレベル。


Eランク:拳銃を使えばなんとか倒せる。


D~Cランク:アサルトライフル一丁でなんとか倒せるレベル。


B~Aランク:戦車を使えばなんとか倒せる。


Sランク:クラスター爆弾の絨毯爆撃で倒せるレベル。


ただし、例外となる、災害級(ディザスター)破滅級(カタストロフィ)は強さが通常の魔物と全く違う。


災害級(ディザスター)

不謹慎な喩え方だが、水爆を数十発送り込んでようやく倒せるレベル。

有名なのは


『終焉巨獣ラグノ=ベヒム』


『黒滅竜カリュドラグ』


など。


破滅級(カタストロフィ)

全ての現代兵器を使っても倒せるわけないだろ・・・ってレベルの強さをした化け物たちだ。

しかも、そのクラスに位置するものは10体もいるという。

主なものは・・・


アンデッドと化して今でも強者を求めている『初代勇者アラド=セレスティオン』


初代勇者と同じ理由で世界を彷徨っている『初代魔王アザゼル=ヴァルカロン』


そして七天大罪悪魔セブンズ・カーディナルデーモン


『傲慢のヴァルド』


『憤怒のフュリオ』


『嫉妬のインヴィア』


『怠惰のルーエ』


『強欲のアウルム』


『暴食のグラトン』


『色欲のシェルム』


七つの大罪すべてが破滅級に分類されている。

あともう一体いるらしいが、そいつだけ調べても出てこなかった。


「だけど、こいつらがすぐに世界を破壊しようとしないのはなぜなんだろう?」


小声で呟いた瞬間・・・


「答えは簡単。天使が常に監視しているからよ」


いきなり後ろから声がした。

振り返ると、セレナが微笑みながら立っていた。

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