異世界
黒歴史を暇つぶしに投稿してみます。
(ミスって今日投稿してしまったわ)
※(自称)文章力のある友人に色々教えてもらって、この話をほぼ全て修正しました。
少しづつ、他の話も修正していこうと思います。
目を開けた瞬間、違和感が全身を駆け巡った。
見慣れた天井はなく、代わりに青々とした木々の葉が視界いっぱいに広がっている。風が吹くたび、葉が揺れて木漏れ日が踊る。耳に届くのは鳥のさえずりと、小川のせせらぎ。
「・・・ここは?」
体を起こそうとして、違和感の正体に気づいた。体が、軽い。いや、小さい。自分の手を見れば、幼児のそれだ。四歳くらいだろうか。
周囲を見渡す。木々は確かに存在している。しかし、どれ一つとして見覚えがない。日本の森林にこんな赤紫色の樹皮をした木はなかったはずだ。足元の草花も、見たことのない形をしている。
「・・・嘘だろ」
五メートルほど先に、半透明のゼリー状の生物がぷるぷると震えていた。
スライム。
ゲームや小説では定番の魔物だ。だが、現実の日本にそんな生き物がいるはずがない。
「異世界・・・転生、か?」
状況証拠は揃っている。見知らぬ森、幼児の体、そしてスライム。どれも日本では説明がつかない。
手足を動かしてみる。ちゃんと動く。服は質素な布製で、まるで中世ヨーロッパの平民が着るような代物だ。髪を触れば、サラサラとした黒髪。性別は・・・確認するまでもなく男だ。
「声は・・・」
試しに声を出してみた。
「ワタシハニホンジンデス」
自分の声とは思えないほど可愛らしい声が響いた。思わず頬が赤くなる。
「・・・なんだこれ。恥ずかしすぎる」
もし本当に異世界なら、ゲームや小説でよくあるステータス画面が出るはずだ。試してみる価値はある。
「ステータスオープン!」
その瞬間、視界の中央に淡い光が広がり、半透明の文字列が浮かび上がった。
リュート・アルス
Lv1
HP100
MP100
職業 転生者 剣士
魔法 なし
加護 なし
状態 記憶封印
スキル 鑑定 アイテムボックス
職業スキル 斬り払い(Lv1)
「出た・・・な」
予想通りステータスが表示された。職業は転生者と剣士。転生者はわかるが、剣士? 剣道なんてやったことないんだけど。
気になったのは、状態欄の『記憶封印』だ。
「記憶封印?」
試しにその部分に意識を向けると、新たな説明文が現れた。
〈記憶封印〉
【自身の前世の記憶を一部封印する。レベルが上がるごとに記憶の封印が少しずつ解かれる。】
「・・・面倒くさいな」
確かに自分が日本人だったことは覚えている。異世界転生についての知識もある。でも、日本で何をしていたのか、どこに住んでいたのか、どうやって死んだのか。そのすべてが霧の中だ。
「とりあえず、俺はリュート・アルスってことか」
ステータスに表示された名前を口にしてみる。いいね、悪くない響きだ。
しかし、今は名前よりも優先すべきことがある。
「ここはどこだ? それに剣士なら武器があるはず・・・」
周囲を見渡すと、すぐに木剣が目に入った。自分が倒れていた場所から一メートルほど離れた草むらに転がっている。
「鑑定」
〈木剣〉
【木で作られたごく一般的な剣。】
「木剣か・・・武器としてはちょっと心もとないな。てか、ゲームのチュートリアルみたいだな・・・」
そう呟いた瞬間、
ザザザッ!
背後から何かが飛び出してきた。
「うわっ!」
咄嗟に横に転がる。何かが頬を掠めた。熱い。切られたか。
体勢を立て直し、襲撃者を確認する。
ウサギ・・・いや、違う。額に鋭い角が生えている。体長は五十センチほど。
「鑑定!」
〈ホーンラビット〉
【Fランクの魔物。木の上に住んでいる。目はいいが、頭が悪い。メスは比較的おとなしいが、オスは縄張り意識が高く自分より強そうなものでも襲い掛かる。そこまで素早くはないが、角には返しがついているため一度でも刺さるとなかなか抜けない。】
「返しがついてる角って・・・怖すぎるだろ!」
ホーンラビットが再び突進してくる。しかし、説明通り素早くはない。目で追える。
木剣を握りしめ、構える。
「斬り払い!」
ガッ!
木剣がホーンラビットの体に直撃した。手応えはあった・・・が、
「まだ動くのか!」
ホーンラビットはダメージを受けながらも、すぐに体勢を立て直して再度突進してきた。
体を捻って回避し、
「もう一度! 斬り払い!」
骨が折れるような鈍い音がした。ホーンラビットの動きが鈍くなる。足がふらついている。
でも、油断はできない。あの角に刺されたら終わりだ。
ホーンラビットが最後の力を振り絞って突進してくる。そのタイミングに合わせてカウンター気味に振り下ろす。
「これで最後だ! 斬り払い!」
木剣が頭部に直撃する。ホーンラビットはしばらくふらついた後、地面に倒れて動かなくなった。
「・・・やった」
初めての戦闘。初めての勝利。
ほんとにゲームのチュートリアルみたいな展開だな・・・
まるでRPGの序盤で、プレイヤーにシステムを教え込むかのような単調な流れだ。この先、もっと劇的な展開が待っているのだろうか。それとも、このまま地道な積み重ねが続いていくのか。
心臓が激しく鼓動している。
喜んでいる暇はない。周囲に他の魔物がいるかもしれない。
「アイテムボックス」
ホーンラビットの死体が光の粒子となって消え、見えない空間に収納された。
「レベル上がったかな・・・ステータスオープン」
リュート・アルス
Lv2
HP102
MP102
職業 転生者 剣士
魔法 なし
加護 なし
状態 記憶封印
スキル 鑑定 アイテムボックス
職業スキル 斬り払い(Lv2)
パリィ(Lv1)
「レベル上がるの早いな。新しいスキルも増えてる」
パリィ・・・おそらく敵の攻撃を弾くスキルだろう。詳しく調べたいが、今は安全な場所を探すのが先だ。
「アルス家・・・親がいるなら合流したいんだけどな」
森の奥へと歩き出す。
「ヤバい!ヤバい!ヤバい!死ぬ死ぬ死ぬ! 」
全力疾走しながら叫ぶ。背後から迫る殺気が肌を刺す。
追いかけてくるのは、体長三メートルはある巨大な熊だ。いや、熊じゃない。鑑定で名前だけは見えた。
———グロウルベア
ホーンラビット狩りで簡易的な罠を大量に作り、レベルを7まで上げた。体の動きも少しはマシになった。
でも・・・
「あんなの相手にできるか!
てか、こう言うの少しずつ魔物が強化されていく流れだろ!!!
何でいきなりこんなデケェ熊と鬼ごっこしないといけないんだあああぁぁぁ!!!!」
俺は思わず、声を張り上げてそう叫んだ。
ズガァン!
グロウルベアの爪が木を切り裂く。倒れかけた木がこちらに向かってくる。
「斬り払い!」
スキルで木を両断し、なんとか回避する。
しかし恐怖で手が震える。スキルの発動にも失敗することがある。
妨害として、今もっている木剣で切り倒しやすそうな木を見つけて、スキルを使って倒してはいるが、意味をなさない。
「ふざけんなよ! なんで爪で木を切断できるんだよ!」
罠エリアに誘導する。ホーンラビット用の罠だが、ないよりマシだ。
そして・・・
「「「ガルォオオオン!」」」
耳をつんざく咆哮が森を震わせた。
体が硬直する。動けない。
「やっべ・・・!」
この咆哮のせいで何度も死にかけた。
それでもなんとか罠に誘い込むことに成功した。
「「「グワァッ!」」」
グロウルベアが罠に引っかかった・・・が、
ブツッ!
「そりゃあウサギ用だもんな・・・」
紐が簡単に切れた。
グロウルベアの爪がこちらに迫る。
ドグッ!
グロウルベアの背中に何かが突き刺さった。
「「「ゴッ・・・・・・ガァァッ!」」」
ホーンラビットだ。
「さすがに家を壊されたら、オスメス関係なく怒るわな」
目がよくて頭が悪い兎たちは、住居を壊したグロウルベアを犯人だと思い込み、次々と突撃してくる。
「あの兎の角は返しがついてるから抜くの難しいぞ!」
案の定、角がなかなか抜けずグロウルベアが苦しんでいる。
チャンスだ。
木剣はもう限界だ。アイテムボックスに仕舞い、代わりにホーンラビットの死体を取り出す。何でこんなものを武器にしたか。ほかの武器がないからだ。
角をグロウルベアに突き刺す。
一度刺さったら抜けない。だから次の死体を出す。また刺す。
それを繰り返した。
五分ほど経った。
「「「グォ・・・ッ、グルル・・・グゥ・・・」」」
グロウルベアの動きが鈍くなってきた。
「ここで決める! 斬り払い!」
「「「グルオオオォォ!」」」
最後の咆哮が森中に響き渡る。
「ここで咆哮か!」
スキルがキャンセルされた。体が硬直する。
中から地面に激しく叩きつけられ、肺の中の空気が一気に押し出される。視界が激しく歪み、痛みで思考が真っ白になる。
目を開けると、そこには鋭い爪が迫ってきていた。
ただ迫りくる死の予感だけが、スローモーションのように俺の意識を支配していた。
・・・でも、最後の悪あがきくらいさせてもらうぞ!
「パリィィィ!」
キィン!
グロウルベアの爪が弾かれた。
「ラッキー! 木剣がまだ折れてない! 今度こそだ! 斬り払い!」
ザシュッ!
木剣がグロウルベアの胴体を切り裂いた。
巨体が地面に倒れる。
「「「ヴォ・・・ッ・・・グゥ・・・」」」
完全に動かなくなった。
「はぁっ・・・はぁ・・・っ・・・」
勝った。
「あっぶねぇぇぇ・・・死ぬかと思った」
四歳の体で剣を振り回したせいで、肩が痛い。腕も震えている。
グロウルベアをアイテムボックスに入れ、ホーンラビットの死体も回収する。
「レベルは・・・」
ステータスを開く。
リュート=アルス
Lv10
HP140
MP140
職業 転生者 剣士
魔法 なし
加護 なし
状態 記憶封印
スキル 鑑定 アイテムボックス
職業スキル 斬り払い(Lv6)
パリィ(Lv5)
刃走(Lv1)
二連斬(Lv1)
「レベル10・・・スキルも増えてる」
一気に成長した。でもまだ安心はできない。
「さてと、レベル上げの続き・・・の前に」
自分の服を見下ろす。グロウルベアの返り血で真っ赤に染まっていた。
「先に川を探すか」
森の奥へと歩き出す。
森を彷徨っていると、遠くから水の流れる音が聞こえてきた。川だ。
川辺にたどり着くと、俺はすぐに膝をつき、冷たい水を手ですくった。顔や腕についた返り血を丁寧に洗い流していく。冷たい水が肌に触れる感覚が心地いい。
そして、さらに森を彷徨っていると、人の声が聞こえた。




