表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/3

結集ー集まりし騎士 1 ー

 最初のざわめきを感じた時から二ヶ月が経った。

 レイリーはKZ(ケーズ)の仲間達と一緒に海の近くの小高い丘の上にある大きな宿にいた。

この二ヶ月依頼の仕事をこなしながら、町や村で異変がないか不思議な事はないか調査をしていた。それも一段落したので皆んなで休暇を楽しんでいる所だ。

 部屋の窓からは海が見え、宿からビーチへと続く細い道を海へと駆けて行く仲間の姿があった。

海へと視線を移すと波打ち際で遊ぶ人々…浜辺でサマーベットに横になっている人達…海に入って波と戯れている人々…皆んなが思い思いの場所で思い思いの遊びをしていた。皆んな安心してやすらいでいるようだった。

レイリーもまた潮風に吹かれホッとするひとときを過ごしていた。

 (こんな時を過ごせるのも後どの位だろう…あれから二ヶ月あの時の様なざわめきはないが、何かが始まっているのは確実だわ。とてつもなく大きな力が動き出している。それはあたしの知っている力…それだけはわかる…でもそれが何なのか…霧がかかっているようで思い出せない…それにこの場所 見憶えがある)

 レイリーはそう思った。

 「どうした レイリー海へ行かないのか?」

 ケインが声をかけてきた。

 「今 行こうと思っていたのよ。ただね何となくこの場所 見憶えがあるような気がするの…どうしてかしら…」

 レイリーは言った。

 「似たような所に行った事があるだけじゃないのか…?」

 ケインはそう言いながらも自分の中で心の弦が震えている様な気がした。

 「そうね…そうよね…ケインも海へ行くのでしょ。一緒に行きましょう。」

 海岸に着くと仲間達と楽しい時を過ごした。そのうち仲間達は思い思いに浜辺を散策し始めた。

 レイリーもひとりで波打ち際を岩場の方へと歩いて行った。

 (確かこの岩場の陰にも小さなビーチがあった…)

 レイリーはふとそう思いその場所が在るべき所へと向かった。

 その小さなビーチは確かにあった。

 (何故 あたしはこの場所を知っていたの…そう あたしはこのビーチで夕陽を見た…側に誰かいた…一体誰…)

 それ以上深く考えようとすると、頭が重くなり痛みを感じた。レイリーは思わずうずくまる。微かに浮かんだ記憶?がまた靄に包まれていく。少しすると痛みも治った。レイリーは皆んなのいる方へ歩き出した。

 (さっきの痛みは何だったの…)

 レイリーは思った。

 レイリーの方へ仲間のひとりが駆け寄って来た。

 「レイリー 岩場の方に何かあった?あれ…顔色が悪いぜ…大丈夫か?」

 「ちょっと頭が重いの…家の中ばかりにいたのが急に太陽の下ではしゃいだせいね…きっと…少し中に入って休むわ。皆んなにそう言っておいて…」

 「わかった。伝えておくよ。」

 レイリーは宿の中に戻ると、フロントの側のホールの一角で休んだ。その一角だけは他から遮られた一つの部屋のようでもあった。

 クラッシックな大きな窓からは海辺が見えた。レイリーは変わった造りの一角だなと思って周りを見まわした。ふと天井を見上げた。レイリーの目に鮮やかな色彩の風景画が飛び込んできた。

 (あたし…この風景画の場所を知っている…)

その瞬間 頭の重さはなくなり靄がスッーと晴れていく…彼女はその記憶の一つ一つを確認する様に頭を押さえ下を向いていた。

 「レイリー大丈夫か?まだ頭が重いのか?」

  仲間から伝言を聞いたケインがレイリーを探し此処へ来たのだった。レイリーは静かに頭を上げケインを見た。

 その瞳は今までとどこか違っていた。

 「ケイン この一角だけ何処かで見たと思わない?この独特の変わった造り…このアーチ型の窓…そしてあの天井の絵…あたしは知っているわ。」 

 そう言われて周りを見まわしたケインはハッとした。ケインにも思いあたる所があった。ケインはレイリーを見た。

 レイリーは言った。

 「此処は前の戦いの時、本部にしていた場所と同じ造り…そして天井の絵はあの頃 皆んなが憩いの場にしていた所…あの人に…リューイに会いたい…ケイン リューイの消息は調べているのでしょ。今 わかっている事を教えて…」

 その言葉でレイリーの封印してあった記憶が解けた事を悟った。

 「わかった…すぐに調査表を持ってこよう。」

 ケインは自分の部屋へと向かった。

 (リューイ あなたに確かめたい事がある。)

レイリーは心の中で呟いた。

 「レイリー…」

後ろから声がかかった。振り向くとそこに思い詰めた様な顔をした、ケインの恋人のセイラがいた。

 「セイラ どうしたの?」

 「聞きたい事があるの…」

 「何…?」

 「本当の事を答えて欲しいの!今は違う事はわかっているけど、前は恋人だったの?」

 「違うわセイラ…あたしとケインはただの幼馴染よ。お互い異性として見た事はないわ。」

 「ホントに?」

 「ええ…そのうち分かると思うけど、強いて言えば一つの同じ目的を持った同志と言う方が正確かもしれないわ…」

 「同志…でもケインは何時もあなたを気にかけている。」

 「それはねセイラ…あたしはかつて同志達から 護られるだけの存在だった…戦う力を持たないただ護ってもらうだけの存在…だからケインはその頃の癖が抜けきれていないのかもしれないわね。あの頃の同志達に会ったら、皆んなケインと同じ反応を示すと思うわ…」

 「レイリー あの頃の同志達って?」

 「その事については近いうちに話すわ……セイラ あたしとケインの事は安心して…本当に同志以上の何者でもないから…それにケインはあなたを愛しているわ…」

 「ごめんなさい!変な事聞いて…」

 「いいのよ…それより海辺へ戻るのでしょう」

 「ええ レイリーは?」

 「あたしはもう少し中にいるわ。」

 「わかった‥じゃあ…」

セイラは海辺へ戻って行った。

レイリーはその後ろ姿を笑顔で見送るとテラスの方へ歩き出した。

 テラスには先客がいた。黒の上下に身を包んだ三人がそこにいた。

 サマーベットに寝そべったサングラスをかけた男性の両側に女性がいた。テラスの下に男性が一人、少し離れた所にもう一人…まるでサングラスの男性を守るかの様に…

 もう一度サングラスの男性に目を向けた。

 レイリーははじける様に言った。

 「ユーゴ。ユーゴでしょ…」

 その声に半身を起こしたサングラスの男性は一瞬驚いたような表情をしたが、すぐに戻した。そして立ち上がるとレイリーの側まで来て言った。

 「誰だったかな…俺に抱かれたくて声を掛けてくる女性は多いもんでね…君もその一人かな…抱けば思い出すかもしれないね…」

 そう言いながら…ユーゴはレイリーの後ろに回り出した。

「あたしを抱く…それは別に構わないわ…あたしを抱ければね…]

 レイリーは後ろから自分を抱き締めようとしたユーゴの手を躱し、その手を後ろ手に捻じ上げた。

 ユーゴは身動きができなかった。それを見たユーゴの仲間らしき者達が駆けつけようとした。

 「そこを動かないで‼︎」

 レイリーが言うと仲間達はその場から動く事ができなかった。

 「ユーゴ 悪ふざけはやめましょう。もう惚ける必要は無いのよ。あたしは全てを思い出したの…リューイのかけた封印は消えたの。」

 「レイリー…」

 「やっと 名前を呼んでくれたわね。」

レイリーはユーゴの手を離した。それと同時にユーゴの仲間達も動けるようになった。








評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ