第十八節 新たなる刺客
第十八節 新たなる刺客
夏――、
燦々と照りつける太陽の下、他の季節よりも、より開放的になった若人達が、海に山に、牧場に公園に足を運び、観光を楽しんでいる。街の店も、例によって賑わっているようだ。昼はデパートやショッピングモール、夜はカラオケ店や居酒屋などの店舗も人々であふれ返る。
真っ昼間の駅――。
ここに遊びの約束をしている中年男性達が。その集団は、シゲミの入院している精神病院に通う者達であった。
精神疾患と言えど、彼らもまた人である。遊びに出かけたりもする。
「シロウ君、遅いなー」
どうやら昼の料金が安い時間帯に、カラオケ店に遊びに行く様だった。現在、待ち合わせ場所でシロウという人物を待っている様で――。
数分後、シロウが現れた。
「今日お母さん殺して来た」
「!」
「!!」
「!?」
遅刻してきたシロウ、開口一番に出たセリフがそれである。
(どういうコト……?)
(やべぇよ……やべぇヤツだよ)
(遅刻した言い訳なのか?)
シロウを待っていた者達はシロウに聞こえない様、ひそひそと口々に言う。するとシロウは口を開いた。
「じゃ行こうか」
「! ……ああ、うん(なんで遅れて来といてお前が仕切ってんだよ……)」
シロウに対して、不満を持ちつつ、一行はカラオケ店に向かった。
カラオケ店にて――、
「カーモンベイベー〇△!(病院の名前)」
(あんまり病院に行くのは良くないだろ……)
ノリノリなシロウに対して、周りの空気は冷えきっていた。
「次君だよー」
「あ、うん」
シロウの曲が終わり、マイクを次の順番の人に回す。シロウはやけにフレンドリーである。
「そんなはずはないさ♪」
「パチパチパチパチ!」「みんな、うまいねぇ」
脳の病気でリミッター解除されたシロウは、神速のスピードで拍手していた。
(はっや)
(どうなってんだ?)
その光景は周囲の人々の度肝を抜いていた。
一同が歌を歌ううちに、時は過ぎていき――、
「楽しかったねぇ」
「良かったよ」
「ありがとね」
気付けば夕方になっていた。
「今度、グループホームの利用者K君も誘うよ」
「!」
「!?」
「!!」
あまりに急な提案に一同は戸惑ったが――、
「じゃあね、お疲れ」
シロウは帰って行った。
「……」
「……」
「……」
一同は目を見合わせるも、言葉は発せられなかった。シロウの中で、『私の友達の友達は、私の友達』というシロウイズムが形成されている。下手すると、全人類はシロウの友達になりうる。
数日後――、k氏が利用者Kに話し掛けた。(kだらけだなこの小説)
「シロウがカラオケ行こうだってよ。俺はお前が行くなら行くけど……」
その頃、仲が良かったk氏と利用者K、特に気を遣わず利用者Kはk氏に答えた。
「配信ができないから、行かない」
今後k氏と利用者Kは不仲になり、連絡先も変え、絶縁するコトとなる。そのお話は、この先するやらしないやら。
更に数日後、利用者Kにシロウからメールが届いた。
『やあ。今度のカラオケ、誰が車出してくれるのかな?』
「! ……」
「ピッピッピッピ」
メールを返す。
『それ、前にも言ったけど、行かないから』
暫くして、返信が返ってきた。
『分かった!?』
「!? 『!?』って何だよ!! こっちが!? だよ!!」
シロウは、日本語が不自由の様だった。




