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松本という漢Ⅴ  作者: 時田総司(いぶさん)


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第十七節 キングオブハヤシ

第十七節 キングオブハヤシ




前話に続き、ここは、グループホーム――。




河本、MIYAZAKIの他に、もう一人、問題児が――。


キングオブハヤシである。


身長、170cmあるかも知れないが、腰が曲がっていて低め。短髪で白髪交じり。顔面、目は外斜視により、カメレオン状態。おむつ着用の為、おむつ臭い。


キングオブハヤシは河本と近しく、大体の朝スタッフに怒られていた。


「またですか!? キングオブハヤシさん!」


「うーん」


怒られる内容は、大体決まっている。




前日、夜更かしをして、朝起きれない。


掃除当番なのに時間までに掃除を始めず、デイナイトケアに遅刻する。


漏らす。




中でも最後のは『トイレに行くのが面倒なのでおむつの中にしよ』的なノリで漏らすことがある始末。


「へぇでも出来ないんですよぉ、ごめんなさいぃ」


キングオブハヤシは謝れば済むと思っている。ほぼ、反省していない。


「次は気を付けてくださいよ」


「はいぃい」


よって、同じ過ちを繰り返す。そして、同時によく調子を崩すので、入退院を繰り返していた。




ある春の日のコト――、


「うーん、トイレ……」


利用者Kは夜中、トイレに起きた。


「ガラガラ」


自室の戸を開いて間もなく、利用者Kは異常な光景を目の当たりにする。


「うーん……」




「!?」




利用者Kの自室を出てすぐ左手に、キングオブハヤシが下半身裸で座り込んでいたのだった!


「ハッ(キモっ!!)」


利用者Kはすぐにグループホームの事務室にいるスタッフに連絡をした。


1、2分後……。


「何やってるんですか!?」


「……えぇ?」


キングオブハヤシは目覚めた様だった。




後日――、


「うーん、トイレ……」


利用者Kは夜中再び、トイレに起きた。


「ガラガラ」


自室の戸を開いて間もなく、利用者Kはまたしても異常な光景を目の当たりにする。




「ダッダッダッダッダ」




「どこじゃー!!」


「ガチャガチャ」


「どこじゃー!!」


「ガチャガチャ」


今度はキングオブハヤシが下半身裸で広間を走り回り、隣接する利用者各自の部屋の扉を、自分のカギを使ってこじ開けようとしていたのだ。


「……」


利用者Kは言葉を失った。しかし律儀な利用者K、スタッフに連絡を入れた。


「何か……暴れ回っています……」




翌朝――、


「昨日はどうもすいませんでしたぁ」


「はぁ……」


キングオブハヤシが利用者Kに詫びを入れていた。


「何も覚えてないんですよぉ」


「そうですか……」


利用者Kはそれ以上は何も言わなかった。


(関わってはいけない)




数日後――、キングオブハヤシがの調子は狂い始める(もう十分狂っているが……)。


デイナイトケアにて――、


「それでさぁ! 〇×病院で……」


利用者Kは笑い話をしようと、明るい口調で声を出していた。


「主治医のヤツ、薬飲んでるのに俺が薬飲んでないかも知れないとかいう理由で隔離室に入れ……」


「誰が薬飲んでないじゃー!?」




「!?」




キングオブハヤシが特攻してきた。利用者Kの話なのに、自分が陰口を言われている(?)と感じたキングオブハヤシ、何という被害妄想。自意識過剰ライジング。




「こら!!」


「やめなさい!!」




「アッーーーーー!!」


キングオブハヤシは看護師さん達に取り押さえられた。利用者Kは、事なきを得たのだった。


(……た、助かった)


夜――、その日はとても静かな夜だった。キングオブハヤシが口を開くまでは――。


「わぁ! お化けぇ! お化けが出たぁ! 怖いぃぃいい!!」


キングオブハヤシの身に何かが起きた。何が起きたかは、キングオブハヤシしか知らない……。キングオブハヤシはスタッフに連絡、間もなくしてスタッフが現れた。


「怖かったねー(お前の顔も夜中に見たらこえーけどな)」


この夜はスタッフがキングオブハヤシをなだめて、騒ぎは収束した。




その翌日、キングオブハヤシは更に調子を崩した。


「こんなところ! 住んどられるかぁー!!」


グループホームの朝、彼はホワイトボードのマグネットで掲示されていた掲示物をほぼ全てなぎ払い、落としていった。


「キングオブハヤシさん、落ち着いて」


「何だとぉー!? コノヤロー!!」




「ビターン!!」




キングオブハヤシは、朝食の牛乳を牛乳パックごと壁に叩きつけた。


このため、午前中に臨時の診察が行われ、キングオブハヤシは入院するコトとなった。


(もう二度と戻ってくんな)


利用者Kは静かに思うのだった。

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